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第2章
◇愛しいと*拓哉
しおりを挟む「ていうか、オレのことはいいよ~……そういえば、何のゼミなの?? 何勉強してたの? オレ、聞いて分かる?」
「聞きたい?」
「うん、聞きたい」
織田に言われて、皆が昔のことを、話し始める。
織田が居ることで、なんだか昔話に花が咲いて、なんだかいつも以上にものすごく、盛り上がっていた気がする。
二時間後。
皆は次に行くと言ってたが、オレと織田は帰ることにした。
「じゃな、拓哉」
「織田くんもまた来てねー!」
「うん!」
すっかり意気投合した織田にも手を振りながら、皆が歩いていくのをなんとなく見送る。
「……楽しかったー」
クスクス笑って、織田がオレを見上げてくる。
「ありがと、連れてきてくれて。ごめん、高瀬の話、いっぱい聞いちゃった」
にっこり笑われて。
思わず手が伸びた。よしよし、と頭に触れると、ふ、と織田が笑う。
「何で撫でるの?」
「んー。なんか……やっぱり、すごいよな、織田。……駅いこっか」
「あ、うん。……すごいって?」
並んで駅まで歩き始めながら、見上げてくる織田を見つめ返す。
「まあいつもなんだけど。ほんと、尊敬する」
「……何が?」
「んー……全部」
笑ってしまいながらしみじみ言うと、織田は首を傾げてる。
「あんな風に仲良くなれるのも。皆がすごく楽しそうになるのも……なんかそういうの、全部」
「んー、でも、高瀬っていう話題があるから喋れるんだよ。皆が高瀬のこと、好きだからじゃない? いいよねぇ」
楽しそうに言って、オレを見上げてくる。
そういうのがあったとしたって、あんな風には話せないんじゃないのかなと思うけど。これ以上言わなくてもいっか、と織田を見つめると。
「すごく、楽しかった」
またそう言って笑う織田に、ほんと和むし、可愛いと思う。
「皆もいつもより楽しそうに見えたし……オレの学生時代の仲間と、織田が仲良く話してるっていう、不思議な空間だったな」
「確かにそうだね、なんだか不思議な空間だったよ、オレにとっても」
クスクス笑って、織田は、オレを見上げる。
「なんか……オレの知らない学生時代の高瀬をさ、あの皆は知ってるから。ついつい色々聞いちゃった。多分さ、高瀬に聞いても教えてもらえるところはあるとは思うんだけど……友達から見た高瀬って、やっぱり聞いてると楽しかったよ~みんなそれぞれのさ、高瀬に対する思いが入るから」
「入ってた?」
「入ってたー。皆、高瀬のこと好きだよね、て思った。あ、特に、女の子たち」
ふふ、と笑って、「ほんとモテるなあって思ったよ」と織田が言う。
「あ、ねえ、高瀬」
ふ、と顔を上げて、オレを見つめてから、織田は。
「あの中に、付き合ってた子、いる?」
「いないよ」
「やっぱり? なんとなくそんな気がした、高瀬のことはすごく褒めるけど、付き合ってどうこうとかは無さそうだなーって」
「ゼミの仲間、近いから。そん中で色々あると、気まずいし」
「そっかぁ……うん、どっちにしても……モテるなあって思ったけど」
ふふ、と微笑む。
「……妬かないの?」
そう聞いてみると、織田はオレをぱっと見上げて、それから、少し考えてから。
「えー……んー……なんか今日の子たちは……分かる分かる―って。高瀬のこと好き同士、みたいなイメージだったし、それに……」
「それに?」
「高瀬がモテるの、いちいち妬いてたらオレ、毎日ヤキモチの嵐かも。……ていうか、平気だよ」
「――――……」
「……高瀬の気持ち、ちゃんと、信じてるから。……とか言っちゃうと恥ずかしいけど……」
少し照れたみたいに笑う織田。
……ほんと、どこまでも。愛しいなーと、思う。
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