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第2章
◇織田みたいな*拓哉
しおりを挟む「……ほっとする」
テーブルで肘をついて、両手で大事そうにカップを持ってる姿が、なんだか可愛い。
「おいしー……」
「良かった」
何だか自然と手が伸びて、その頭をよしよししてしまう。
「あ、そう、それでさ、高瀬」
「ん」
「でね、最初すごく落ち込んでたの、すごい油断してた自分に自己嫌悪というかさ」
「うん」
そういうのを聞くと、一緒に居てあげたかったなとも思ってしまうが。
「……でもね、皆優しくてさ」
「先輩たち?」
「取引先の担当の人も、全然怒らなくてさ。じゃあどこまでなら可能ですかって聞いてくれて。謝ったけど、謝らなくていいですよ、とか。すごい優しくて」
「良かった」
「……うん。でもほんとなら絶対怒られて当然だし、謝る時じゃん」
「まあ、怒る相手も居るかもな」
「でしょー?」
また一口紅茶を飲んでから、織田は、にっこり笑った。
「先輩たちもさ、手伝うってすぐ言ってくれるし。まあそこは、取引先の人と話したのも踏まえて、出来るとこまでは頑張るって、言ったんだけど…… でもそれもさ、そんな意地張ってないで皆に任せろって、注意されてもしょうがないなあとも思ったし」
「ん。まあ、そう、かもな」
「……だからすっごく、今日はさ」
「ん」
「優しいなーって感謝する日だった」
ふふ、と笑って、オレを見つめる。
「高瀬も、最後に現れて、すっごい優しかったし」
「――――……」
「一緒に残業してくれて、ありがとね」
「ああ……ていうか、オレは、今日はもう会えないと思ってたからさ。逆に、嬉しいしかなかったよ」
その頭をよしよし、と撫でると、ふふ、と織田が照れたように笑う。
「だからさ、今日オレは、あほなことしてて、ミスっちゃったけど……皆が優しくて、なんか幸せだったかもって思ってさ」
「ん」
「オレも後輩できたら、優しくしてあげよーって思ったよ」
「――――……そっか」
平和だなあ。織田の世界は。なんて、思ってしまうと。
くす、と笑ってしまう。
「いつも一生懸命やってるからだよ」
そう言うと、ん? と織田が見つめてくる。
「いつも頑張ってるから、そうなってるんだと思うよ」
「――――……」
「いつも適当にやって、ミスったら、怒られると思うし。そういうことだから、今まで頑張っててよかった、て思っておけば?」
クスクス笑いながらそう言うと、織田は、じー、とオレを見つめてから、にっこり嬉しそうに笑った。
「オレいつも頑張ってる?」
「頑張ってるだろ?」
ふ、と笑って聞き返すと、まあ頑張ってるつもりかなあと、織田も笑う。
「でも一旦気を引き締めて、もっと頑張るよ」
そんな風に言う織田のことが、やっぱり好きだなと、思う。
「オレも頑張ろ」
そう言うと、「高瀬がそれ以上頑張るとついていけないから、適度にね」とか言いながら、悪戯っぽい顔して笑うのも
やっぱ、可愛いなと、感じる。
こういう関係に、もしなっていなかったとしても、オレはきっと、織田みたいな奴がすごく好きなんだろうなと思う。
……こういう関係になって、ますます、もっと可愛いとこも知ってるから。
やっぱり今のとこ、嫌いなとこ一パーセントもないかもなぁ……。
オレ、本気で、好きすぎかも。
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