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第2章
◇大好き*圭
しおりを挟むにしても、今日は高瀬の家に行くことにしてなくて良かった。
なんて思いながら、一番近くのお弁当屋さんに入って、何にしようかなと考えて居た時。
ポケットでスマホが震え出した。
高瀬だったので、いったん店を出て、電話に出た。
「あ、もしもし? 高瀬?」
『……もしもし、じゃないだろ?』
少し間を置いて、響いてきたのは、ちょっと呆れた声。
「あれ? 高瀬? 家着いたとこ?」
『――――……今、会社』
「え?」
どういうこと?
と思ったら、高瀬が説明を始めた。
『飲みに行ってて今さっき別れたんだけど、明日の午前中にデータ送ることになっててさ。どれくらいかかるか分かんないから、少しやってから帰ろうと思って、先輩とも別れて、今会社に来たところ』
「……あー……メール、見ちゃった?」
『見ちゃったよ』
高瀬の苦笑いが聞こえる。
今日のオレのポカが、グループメールに、事態報告として入ってて、当然高瀬も、そのメンバー。
『……しょうがないな、ほんとに……今どこ?』
呆れたようなため息。
「ごめん……今、ごはん買いに出たところ」
謝りつつも。
……なんか、高瀬の声聞いて、ほっとした。
こんな時でも、声が聞けて嬉しいと思ってしまう。
「自分でもしょうがないなあ、と思う……」
『って……そうじゃないよ』
「ん??」
『オレ、ミスった事を言ってんじゃないからな?』
「え?」
『何でオレに、言ってこないの?――――……オレに、電話してこないってことに、今文句言ってんの、オレは』
「え……だって」
『だってじゃないだろ。織田が、自分の責任って言って、他の先輩の手伝いは断って頑張るっつったのは良いんだよ? じゃなくて、何でオレに、言わないの?』
「――――……」
『他の先輩らとオレと、お前の中では同じな訳?』
「――――……高瀬……」
何と答えて良いか分からず、名前を呟く。
すると、ふ、と息を付いた高瀬が、ふわ、と声を優しくした。
『早く、会社帰って来いよ。向こうの人たちと一緒であんま食った気しなかったからさ、何か適当におにぎりとか、一緒に買ってきて?』
「――――……」
『織田が手伝ってほしくないなら、手伝わないけどさ。オレも自分の仕事しながら側に居るし。なんか分かんないことあれば聞くし。早く終わらせて一緒に家帰ろ?』
「――――……」
ああ、なんかもう。
優しすぎて、無理。
――――……高瀬、好きすぎて。
「……おにぎりがいい? 具は?」
聞くと、高瀬が少し笑う気配。
『鮭』
「いっこでいいの?」
『少しは食べてきたから』
「飲み物は?」
『コーヒー持ってる』
「分かった。すぐ行くね」
『ん、待ってる』
電話を切って、その切れた画面を見つめて。
――――……微笑んでしまう。
高瀬、大好きすぎ。
やらなければいけないことは何も変わってない。
手伝ってもらわないで、一人で頑張ろうと思ってることに変わりはないし。
でも、高瀬が隣に居てくれて。
一緒に帰ろって言ってくれたことが嬉しくて。
さっきまでとは打って変わってご機嫌で、お弁当屋さんに足を踏み入れた。
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