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第2章
◇ブレーキなし*圭
しおりを挟む何がカッコいいか?
いや、もう、やっぱり全部だなあ、全部。
顔も、姿形も、指も、動きも、声も、話す言葉も。
完璧、カッコいい。
ていうか、きっと、シルエットだけでも、カッコいいって分かる気がする。
「織田、このあと、どうしたい?」
「……ん」
ぼーと、見つめてたら、目の前で少し手を振られる。
「わ、びっくりした」
「――――……何そんなめちゃくちゃ見てんの?」
「……えーと……うん、あの……ごめん、なんか」
「うん」
「……カッコいいからさ。何がこんなにカッコいいのかなあって、考えてた」
「――――……」
なんだか高瀬がものすごい真顔でオレを見た後、吹き出す。
「織田、ほんと何言ってんだろ」
「…………確かに。オレ、何言ってんだろ」
あははーと笑って、気にしないで、と言うと、高瀬はさらに面白そうに笑う。
「この後どうしたいって聞いたんだけど」
高瀬に言われて、んー、とちょっと考える。
「どうしよう? 高瀬、買い物はもう良い?」
「ん。とりあえず、良いかな。何かあれば、また来週出れば良いし」
「うん。そだね」
「今日夕飯どうする?」
「んー……高瀬が飲みたいなら、家の近くのお店でもいいし……」
「飲まなくてもいいよ」
「じゃあ食べて帰るか、買って帰るか?」
「ん、じゃあ……家でゆっくり食べる?」
「うん。そうしよっか」
外でもいいけど、高瀬、目立つし。
こうしてても……ていうか、この店はかなり特殊だったけど。
女子の視線がー……。
――――……毎回思うけど、本当に、目立つ。
何でオレこの人と……っていう、いつものループに入りそうになるけど、何とか、ストップ。
オレが高瀬を好きで、高瀬も、オレをなぜか好きって言ってくれるから、一緒に居る。ってことだよね。うん。
……ぁ。なぜかって、また言ってるし。オレ。
やれやれなツッコミを自分にしながら、そういえばここは地下に大きな総菜コーナーがあったなあと思い出す。
「高瀬、下の食料品のとこ行って買う?」
「そうだな……」
考えながら、高瀬はクスッと笑う。
「前ここ来た時、食べきれない位買ったよな」
「だってすごい色々種類があったから」
「そうだけど……なんか織田が、あまりに楽しそうだったなあって……」
その時のこと思い出してるのか、高瀬はずっとクスクス笑ってる。
オレ達は、入社してからずっと一緒で。
仕事中も、飲み会とかも、ごはん食べに行ったりも、かなり一緒で。
帰社時間も大体一緒だし、もうほんとに「同期の仲良し」として過ごした時間がかなり、長い。
その間、ずーっとオレは、高瀬を好きだったけど。
忘れるまで好きでいようなんて思ってたけど。
でも、好きになりすぎると困るから、自分の中でブレーキをかけようとする気持ちが、きっと、あったんだろうなって思う。
……ちょっとは、幻滅するとか、やっぱり女の子の方がいいなと思うとか、そういう恋じゃないなとどこかで悟ればいいなーと、思う部分もあったと思うし。
それでも、大好きで、ほんと困ったけど。
高瀬を好きで居て良いんだってなってからは、無意識のブレーキもなくなってしまった気がする。
……何だろうこれ。
オレ、マジで、無限に好きになれちゃうのかもしれないな。
高瀬見てると、心臓なのか、とにかく胸の奥がきゅーっていうのが、これが世に言う、キュンってやつだろうなと思うんだけど。
もう毎日、ドキドキも激しいし。
オレの心臓、いつもいつも負担かけてごめん、て気になってくる。
そんなことを本気で考えていたら、高瀬がニコ、と笑ってオレを見つめた。
「家でだったら少し飲んでもいいな。つまみ作ってもいいけど。どうする?」
「え、じゃあそうする。高瀬、何作る? 手伝う」
そう言うと、高瀬がまた瞳を緩めて、優しく笑う。
「手伝ってくれんの?」
「うん」
「織田が好きなもの作るよ、何がいい?」
楽しそうな高瀬に。
どうしたって、めちゃくちゃときめく。
もう、ブレーキかける必要がないんだなってことが、すごく嬉しかったりする。
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