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第2章

◇参る*拓哉

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「なあ、織田」
「ん?」

 幾つか色んな店を見ながら、何をお揃いにしようか迷っていたのだけれど。
 ふと、思いついた。

「タイピンはどう?」
「タイピン?」

「毎日つけてるし、お互い良く見えるし。完全に同じにしなくても、一緒に買ったって、思ってられれば良くないか?」

 どうかなーと思いながら、そう聞いたら。
 少し考えた織田は、ぱっと笑顔になった。

「すっごく良いかも! つけてるのがずっと見えるっていうのが、めちゃくちゃ嬉しい」
「――――……ん。じゃあそうしよ」
「うん! 高瀬、さすが、名案」

 なんかあまりに素直に嬉しそうに笑われると。
 一瞬、返答に困る。 ……可愛すぎるよな……。

 ブランド物のスーツを各種置いてある店があって、そこに行ってみたら、タイピンも種類がたくさんあった。
 中から、同じブランドで似たような形の物とか、模様が少しちがう物をとりあえず3種類ずつ。お互いへのプレゼントにした。 

「月曜からつけようね」

 織田は小さな紙袋を持って、めちゃくちゃウキウキした顔で、隣を歩いてる。

「誰にもバレないし、でも自分たちお揃いって分かってるし。なんか嬉しい」
「そうだな」

 笑顔、ほんと。可愛い。
 でっかい瞳が、キラキラしてるし。

「他に行きたいとこある?」
「んー。オレはもう良いかなあ。高瀬は?」
「オレももういいや。じゃあ、夕飯買って帰ろうか」
「うん。今日は帰って飲もう~」
「ん」
「何食べようね?」 
「そーだなあ……織田は何食べたい?」
「んー。なんか美味しいサラダが食べたいなー」

「いいね。あとは、焼き鳥?」
「うん、焼き鳥食べたい」

「焼き鳥はいつもだな」
「うん、大好き」

 うまそうに食べるもんな。
 いつもの織田を浮かべると、クスクス笑ってしまう。

「高瀬はおつまみだと何が良いの? いつもオレの好きなものになってる気がするんだけど」
「んー……織田の焼き鳥みたいに、絶対これってのはないんだよな……ああ、でも今日はなんか、刺身が食べたいかも」
「じゃあお刺身も買っていこ」

 総菜や食料品を売っている所に向かいながら、話していると、織田が「あ」と声を出した。ポケットでスマホが震え出したらしく、画面を見て、オレを見上げた。

「俊兄だ。ちょっと待ってね?」
「ん」

「もしもーし、俊兄? うち着いた? ん。うん。……うん」

 楽しそうに話していたのだけれど、最後の方、ちょっと首を傾げていて。
 通話が終わってから、どうした?と聞くと。

「んー……? なんか、後で家着いたら、電話してだって。静かなとこで話したいからって」
「ふうん?」

「あ、高瀬に、ほんとにありがとうって言ってたよ。2人が、圭ちゃんと拓ちゃんと遊ぶって、ずっと言ってるらしいよ」
「そうなんだ。可愛いな?」
「うん」


 ――――……圭ちゃんと、拓ちゃん、て今は、普通に言ったな。


「織田」
「うん?」
「オレの事、名前で呼ぶ?」
「え」

 びっくりした顔でオレを見上げて――――……思った通り、赤くなる。


「……な、んで急に?」
「今、 拓ちゃんて言うの聞いて、思っただけ」
「――――……後で考えて、良い?」
「……いいよ」

 ……可愛い。真っ赤。
 

「……高瀬は、呼べるの? オレのこと」
「呼べるけど」
「あ! 待ってっ」
「え?」
「……っ今呼ばれたら、死ぬからやめて」
「――――……」

 ……死んじゃうのか。
 クッと笑ってしまうと、むむ、と織田がオレを見上げて、ちょっと膨らんでる。

「早く買って、早く帰ろ?」

 思う存分、触りたいから。
 そんな風に思うのも。ほんとに織田が可愛いから。

 ほんと、参る。




(2022/2/24)
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