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第2章

◇愛しい*拓哉

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「高瀬、一口ちょうだい?」
「ん」

 多分織田は、自分のフォークで刺して、食べようと思ってるっぽいけど。
 オレが刺して、はい、と口の前に出してやったら。

 一瞬引いてから。
 多分、ここで拒否しまくるのも目立つと思ったんだと思う。
 頑張って、口に入れてた。

「美味しい……けど……」
「ん?」

 織田がちょっと近づいて、ひそひそと話してくる事は。

「……高瀬、この店で特に目立つからさぁ……オレにそんな事してたら」

 そんな話。
 目の前の困り顔に、クスクス笑ってしまう。

「してたら、彼氏かなって、喜ばせるかもな」
「……その反応を、面白がってるの??」

 むー、と眉をひそめてる。

 違うな。
 さっきからこっちを見てキャーキャー言ってる子達じゃなくて。

 ……なんか恥ずかしそうに困ってる、織田の方を楽しんでるんだけど。
 分かってないな。


「高瀬、チョコケーキ、食べる? 美味しいよ」
「食べさせて?」
「…………どうぞ」

 2秒くらい葛藤してたけど、織田は、ケーキのお皿を両手でずりずりとオレの方に押してきた。

 ぷ、と笑ってしまうと、「絶対面白がってるでしょ……」とジトー、と見上げてくる。


「織田の反応がね。面白くて」

 クスクス笑いながら、オレは、織田のケーキに小さくフォークを入れて、口に運ぶ。


「ん、美味しいな」

 ほんと、反応面白くて。……それがすごく可愛いと思う訳で。


「あのさ、高瀬」
「ん?」

「……何度か、俊兄がさ」
「うん」

「早く結婚とか子供とか言ってたの……」
「ん」

「……昔のオレは、そう言ってたけど。今、そう思ってないからね?」

 なんか、一生懸命な顔でそう言ってくる。

 まあ、気にしてるんだろうなとは、思っていたけど。
 思ってたよりももっと気にしてたみたいだな、と分かって。微笑んでしまう。


「オレ、それ、織田に直接聞いた事あるよな」
「……うん」

「好きだって言った時も、その話、したよな」
「……うん」

「――――……平気だよ、気にしなくて」
「……ほんとに?」

「織田がそう思って生きてきたのは知ってるけど」
「――――……」


 一生懸命な顔でじっと、見つめてくる。
 ……なんか可愛いなと思いながら。


「それよりも、オレと居るの選んでくれたって、思ってるから」
「――――……」


「だから、大丈夫」


 織田は、ぽけ、として。オレをしばらく見つめると。
 それから、何だかすごく嬉しそうに、にっこりして。


「うん、そう」

 そう言って。
 なんか、めちゃくちゃ笑顔。


「そうなんだよ、うん」
「――――……」

「高瀬、分かってくれてて嬉しい」


 心底嬉しそうな顔をして。
 

 何だかな。ほんとに。
 クスクス笑いながら。




  ――――……本当は、少しは気になる。

 全く、気にならないなんて嘘だと思う。

 織田は早く結婚して子供3人は欲しいって言ってたし、それがすごく似合いそうだし。――――……だけど、告白した時に、それよりもオレと居たいって言ってくれた事は、ちゃんと覚えてる。
 日々、オレの事、まっすぐ見続けてるのも、知ってるし。

 だから、疑ったり気にせずにそう思っていたい、という事を、織田に伝えたんだけど。

 

 なんか、こんな風に、嬉しそうにされると。


 ――――……ほんと、愛しくなってしまう。





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