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第2章
◇幸せすぎ*圭 1
しおりを挟むシャツのボタンを外しながらも。
うー。ちょっと、眠い……。
脱衣所でしばらくぼーとして。
あ。シャワー浴びないと。
ふと気付いて服を脱いで、バスルームに入る。
シャワーを出して、ざっと浴びる。
一度シャワーを止めて、目の前の鏡の曇りを手でどけて、自分の顔を確認。
……まだ少し赤い、かな。
疲れてんのに、結構飲んだからな……。
――――……何か……今日高瀬と会えると思ってなかったから。
嬉しすぎる。
迎えに来てくれたのも、なんかすごく、嬉しかったし。
――――……高瀬って、やっぱり、オレに甘いよな……。皆が言うけど、でもきっと、皆が思うよりももっと、高瀬はいっつもオレに優しくて、甘い。
普通、成人の男をあんなに心配しないよな。迎えにきたりしないよな。
オレってそんなに心配されるような感じに頼りないのかな。
……まあ高瀬に比べたら、そうだろうけど。
「織田?」
「あ、なに?」
バスルームの外から声がかかってきた。
「シャワーの音してないけど……平気?」
「あ、うん。……ぼーとしてた」
「――――……オレ、入ってもいい?」
「え。 ……あ、……うん。いい、けど」
「……けど?」
「……ううん、良いよ」
ちょっと恥ずかしかっただけなので、すぐ言い直した。
急にかなりドキドキする。
温泉とかで、一緒に入ったりもしてたし。
いつも裸見られてるし。色んな事されてて、丸見えだし。
でも……なんか、家の、狭い密室に、裸で2人きりって。
やっぱり、ドキドキする。
ドアが開いて、高瀬が入ってくる。
んー……。カッコいい、なあ。
思うのだけれど、まあもちろん、直視はできない。
「織田、もう洗った?」
「ううん。まだお湯かけただけ」
「じゃ座って。シャンプーしてあげるから」
「え、いいの?」
「ん」
すぐ、高瀬の前にある椅子に腰かける。
優しい手が頭を洗ってくれると。
ほんとに、フワフワ気持ちよくて、眠ってしまいそう。
あーなんか……幸せすぎる気がする……。
「ちょっと待って」
高瀬が一瞬手を離して、ぴ、とボタンを押してる音。
アナウンスが流れて、浴槽にお湯をため始める。
「お風呂入んの?」
「うん。一緒はいろ」
「……ん」
頷くと、またシャンプーの続き。
しばらく眠気と闘いながら、フワフワ洗われて、シャワーで流される。リンスを髪につけられる。イイ匂い。
「はい終わり。 体、洗って」
「ありがと……」
めっちゃ気持ちよかった。
渡されたボディスポンジで、ぼーっとしたまま体を洗い終える。
隣で、頭を洗ってた高瀬が、ちょっと待ってね、と言って、泡を流し始めた。うん、と頷いて、目の前の、高瀬の背中を、じ、と見つめる。
ちょうどシャンプーを流してるので、見てても、バレないかなと思って。
「――――……」
背中、カッコいい。
――――……背中から、ウエストからヒップラインまで。
めちゃくちゃ綺麗というか。なんだろう。このまま彫刻にできそう。
……オレの背中ってどうなってるんだろ?
はた、と気付いて。
くる、と自分の背中を見ようとしてみる。けど。 うん、ちゃんとは見えない。分かってたけど。
「織田? 何してんの?」
前髪を掻き上げながら、高瀬が振り返って、くす、と笑う。
高瀬の背中が綺麗だったから自分のを確認しようとしたけど、全然見えなかった、て。バカすぎて言えない。
「ううん。何でもない……」
「そう?」
ふ、と笑って。
もう一度前を向いた、高瀬の背中をまた見ていたら。
ついつい、触りたくなって。
綺麗な肩甲骨に、ぴと、と触った。
ぴく、と高瀬が揺れる。
「……織田?」
「――――……あ、ごめん。くすぐったかった?」
「――――……どしたの」
「……ん、あの、綺麗だなーと思って……」
「――――……はー……」
高瀬が、シャワーを手に取って、オレを流していく。
……はー、て何……??
そんな疑問を持ちながら。目の前の高瀬を見上げてると。
リンスも泡も流し終えてシャワーを戻した高瀬に、ぐい、と引き寄せられた。
「……オレさ、我慢してるんだよ。触ったら、ここでめちゃくちゃしちゃいそうだからさ」
「……っ……」
「……なんでそんな風に、可愛く触ったりするかなあ……」
色っぽい顔で、言った高瀬に、何も返せないでいるうちに。
唇が、深く、重なってきた。
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