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第2章

◇びっくりすぎ*圭

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 なんかあれだなー。

 皆って、高瀬がオレを構ってるって、すごい言うんだよな。
 ……そういえば、太一先輩にもなんか言われたしな。

 でもほんとは、むしろ大好きすぎて近寄ったのは、オレなんだけど。 
 高瀬が目立つから、高瀬の方ばっか言われるのかなあ。

 そんな事を思いながら、ふと気づくと、隣でメニューをまた見てる須長。思わず苦笑とともに、「まだ飲むの?」と聞く。

「なんか一緒に飲む?」
「もういいよー。つか、強いなぁ、酒」
「織田だって、眠いのは疲れてるだけで、強いんじゃないの? 結構オレと同じくらい飲んでる気がするんだけど」
「昔から、なんかよく飲まされたから。強くなったかも……」

「はは、分かる。飲ませたくなるよね、織田」
「……分かんなくていいし」

 苦笑いしながら言うと、須長が可笑しそうに笑う。
 
「……さっきから聞いてるとさ。高瀬とそんな仲いいの?」
「んー……まあ同期で唯一、同じチームってのもあるけど」

 んでもって、一目惚れの相手で。
 ……今は、付き合ってるから。とっても、仲良しだけど。

「ふうん。ていうか、そういうのさ、モデルの頃のあいつと、なんかイメージ違うんだよね」
「ん? なにが?」

「そんな。男の世話やくようなタイプじゃなかった。とにかくすげー女にモテてたけど」
「……そうなんだ」

 ……まあそうだと思うけど。
 ――――……会ってみたかったなあ、高校生の高瀬。

 絶対カッコいいに決まってる。

 でもなんか、このままだとまた、高瀬がモテてた話になってしまいそうで、ちょっと聞きたくないので、逃げる事にして、立ち上がった。

「……ごめん、オレ、ちょっとトイレ、行ってくる」

 立ち上がった途端。 軽く、くら、と揺れる。机でちょっと支えると、須長が見上げてきた。

「大丈夫? 織田」
「うん、へーき……」

 須長に答えて、トイレに向かう。
 用を済ませて、鏡の前に立つ。

 はー……顔、ちょっと赤いな。
 ――――……結構飲んだかもなあ。まあ。久しぶりで楽しいけど。

 もうすぐ22時か。お開きんなるな……。

 22時になったらタクシーで帰って、お風呂入って、早く寝よ。
 で、明日は高瀬に会える。


 ――――……席に戻ろうと思った瞬間。くら、と視界が揺れた。
 うわー、ちょっと……いや、かなりクラクラする。

 だめだなこれ。戻ったら、水、がぶ飲みしとこ。


 鏡の前に手をついて、は、と息をついてると。
 トイレのドアが開いた。


「織田、大丈夫?」
「……? ……あ、須長……」

「さっきふらふらしてたし、戻ってこねーからさ」
「ありがと、大丈夫」

 ――――……あ。そうだ。
 2人になんないで、て言われてたんだった……。


「平気だから。席、戻ろ」

 と、急いだせいで、また、ふらついた。

「……わ……」
「っと……」

 真正面から、支えられてしまって。

「……っと――――……マジで、ごめん……」

 腕に手をかけて、まっすぐ、立ち上がろうとした、その時。
 
「なあ、織田ってさ」
「……?」

「……高瀬と付き合ってたりしてんの?」
「――――……は?」

「違う?」
「何それ、どこから、そんな……」

 びっくりしすぎて、間近の須長を、ただ見つめてしまう。

「その反応って、どっち? ただびっくりしてんのか、当てられてびっくりしてんのか」
「……そんな事を聞かれる事に、びっくりしてる」

 言ったら、須長は、ぷ、と笑って。
 固まってたオレの腕を取って、よいしょ、とちゃんと立たせてくれた。

「悪い……」
「いーけど。 そんな風になるから、高瀬が心配するのか?」

「……はは。 そうかも。最近酔うと、足に来る…… 年??」
「年って。高瀬と同じ年だろ? てことは同じ年じゃねえの? え、留年とかですごい年上だったりする?」

「……んな訳ないじゃん。そう見える?」

 そう言うと、須長は可笑しそうに首を振った。

「見えねー。つか、年下に見える」
「何だよ、それ……」


 ぷ、と笑いあった瞬間。
 トイレのドアが開いた。

 何気なく、そっちを見て、固まる。


「――――……え」


 すごくすごく、会いたかった人が。


 ……高瀬が。

 すごく、急いできた、みたいな態で、立っていた。
 

「……たか、せ……?」
「織田――――……」

 オレを見た瞬間、高瀬は、ほっとしたように、笑った。


「……高瀬……? なんで……」

 一歩、進んだ瞬間、がく、と足から力が抜けて。
 次の瞬間。



 ――――……高瀬の腕に、抱き止められてしまった。







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