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第2章
◇一緒に*圭 1
しおりを挟むすっごく良い気持ちの中で、何だかすごく優しい声がして、目が覚めた。
「……織田、起きれる?」
「――――あ……。ごめん、寝ちゃった……」
「ん。ちょっとはすっきりした?」
……やばい。運転してもらってたのに、すごい寝ちゃったかも……。
「いいよ。疲れたんだろ。でさ、もうすぐオレんちの近くなんだけど…… お前んち、教えて。 荷物取りに行こうぜ」
「うん。 ……てか、高瀬は疲れてない?」
「全然。 お前んち行って、色々持ってきて、オレんち連れて帰るから」
楽しそうに言ってる高瀬に、オレは、ぷ、と笑った。
「じゃあ…… 東原駅に行ってくれたら、そこからすぐだよ」
「OK」
「……高瀬、ごめんね、運転してもらってたのに寝ちゃってて」
「全然平気。 無理させたのオレだし」
「――――……」
……でも寝たのはオレだし。でも確かに……オレがこんなに眠いのも、疲れてるのも、ちょっぴりは高瀬のせいな気も……しなくもないけど。それに何て返事すればいいんだ。
困ってるオレを気にもせず、高瀬は前を向いたまま。
「……それより、織田、何か夢みてた? 覚えてる?」
「ん?夢?」
「うなされてたり、急に笑ったりしてて、面白かったんだけど」
クスクス笑われて、んー、としばらく考えるけれど。
「……何も思い出せない」
「それは残念。聞きたかったのにな」
何の夢みてたんだろー。
うーん。 うなされてたって…… うーん?
だめだな。全然何も思い出せない。
「この道まっすぐ行けばいい?」
「あ、うん。あの……オレんち、高瀬んちみたいにキレイじゃないよ?」
「ふーん?」
「……大丈夫?」
「だから嫌なら入らないって言ってるだろ。外で待ってるよ」
クスクス笑われて、いや、それはちょっと、と断る。
「そこまで汚くないけど……」
「別に汚くても、いいけど」
うーん、でも高瀬のあのキレイな部屋に住んでる人に、汚い部屋は無理じゃね?…… うーん、オレ最後、ちゃんとキレイにしてから出かけたよな……?
色々考えてる内にマンションに到着。
「そこの白い囲ってあるとこ、お客用の駐車場。空いてればとめて良い事になってるから」
「OK」
マンションのエントランス脇の駐車場に停めてもらって、一緒に部屋に向かう。
「直線距離なら、オレんちから、15分位かな? 結構近いな」
「だね。 これ、高瀬んちから駅まで歩いて、電車乗ってまた歩くと、結構かかるんだけど。 車だと早いね」
3階の自分の部屋のドアを開け、高瀬を招き入れる。
「どーぞ」
「ん。なんか、ちょっと楽しみかも」
「え。そんな風に面白がって見ないでよ」
客用に置いてあるスリッパを高瀬の前に置いて、オレはささっとリビングへ。
ぱっと見回して。
うん。……そこまでやばくないかな。うんうん。
そう思うけれど、でもやっぱり、高瀬の家とはまったく違う。
「お邪魔ー」
楽しそうに言いながら入ってきた高瀬が、くる、と見渡す。
「――――……汚くないじゃん」
「……良かった」
「――――……なんか、織田っぽい」
「オレっぽい? どこが??」
「なんか全部」
クスクス笑われて、何だか恥ずかしくなる。
なんだなんだ? どこがだ?
「織田、手洗いたい。あとトイレ貸して」
「うん。洗面所こっちー」
そこではっと気づいて、また先回り。
なんか一人暮らしだから、敢えて掃除しようとか思ってない所が、見られると思うと途端にすごく気になる。
……とりあえず洗面所、汚くはない。よかった、そういえばこないだ、拭いといた気がする。えらいぞ、オレ。
ささっと自分も手を洗って、あとからのんびり歩いてきた高瀬に、バトンタッチ。
「ここね」
「ん」
なんだかずっと、高瀬がクスクス笑っている気がして、気になるけれど。
とりあえず、それは後回しにして。次はトイレに先回り。
電気をつけて、便座を上げて。
うん、大丈夫。そうだ、こないだ、洗面所と一緒に掃除したっけ。
……あ、そうだ。
高瀬んチっていつもキレイだよなーとか思いながら、なんか1人で、色んなとこ拭きまわってたんだっけ。そうだった、そのおかげだ。
なんだ、高瀬のおかげだった。
「高瀬ーなんか飲むー?」
「んー……なんかつめたいお茶ある?」
「うん、ある」
冷蔵庫からペットボトルを高瀬に渡す。
「えっと…… オレ、高瀬んちに、何をもってけばいいんだっけ?」
「ん?」
「今日泊まるから、とりあえず明日のスーツ?」
「……5日分の用意、持ってくれてもいーけど」
「え」
本気なのか冗談なのか分からなくて、後ろにいる高瀬を振り返ろうとしたら。むぎゅ、と抱き締められてしまった。
「……高瀬……?」
「――――……なあ、織田」
「……?」
肩を掴まれて、くる、と反転させられて、真正面から向かい合う。
「――――……オレんとこ、引っ越してこない?」
「――――……」
「……って、付き合ってすぐ何言ってんだって感じか……」
ぶつぶつ言いながら、高瀬がまたむぎゅ、とオレを胸の中に抱き込む。
「……でも一緒に暮らしたい」
「――――……高瀬、なんか、ずっと前も誘ってくれたよね」
「ん?」
「一緒に住む?て」
「――――……ああ、言った。まだオレの事よく知らないのにいいの?て言われたやつだろ」
「うん。だってまだ会ってそんなに経ってなかった時だよね」
「――――……でもあん時もう、織田と居たかったんだよなー……」
「……そん時も、また今度誘うて、言ってくれてた」
「うん。言った」
抱き締めてる高瀬が、くす、と笑った。
「……どんだけオレ、お前好きなんだろ」
「――――……」
……こっちこそ。
大好きすぎて、胸が痛い。
背中にまわした腕で、ぎゅ、と抱き付いてしまう。
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