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第2章
◇真逆の素直*拓哉
しおりを挟む食事を食べ終えてすぐだったので、温泉の前に寄り道して旅館の庭を散歩した。控えめにライトアップされた庭は、とてもキレイで、織田は嬉しそうに歩いて行く。
「すっごい綺麗な写真が撮れそう」
そんな事を言って、さっきからスマホで連写してる。
「良い写真撮れた?」
「うん、すっごい綺麗」
ほんと、笑った顔、可愛い。
「織田も入れて撮る?」
「ううん。 一緒に撮ろ? 高瀬、撮って?」
「ん」
さっきと同じように、スマホを受け取って、背景入れつつ、2人で撮ってみる。その写真を確認して、嬉しそうに笑う。
「高瀬上手―」
「これで2回目」
「じゃ才能あるんだね」
「自撮りの?」
「うん」
クスクスと笑いながら、織田が先を歩いてく。
「……あ。俊兄からだ――――…… 楽しんで来いよー、だって。 婚約解消するとか入れんなって、美久姉に突っ込み入れてるよ」
可笑しそうに笑って、つっこみのスタンプを、見せてくる。
「あー良かった……」
「ん?」
「俊兄が止めてくれて」
「……あ、まだそれ言ってたのか」
「だって、美久姉って…… なんかほんとすごいから。結構美人なんだけどねー……だから余計すごいんだよなー。多分オレ、一生勝てない」
そんな事をいって、苦笑いの織田。
「……ていうかさ、織田」
「うん?」
「オレの意志が絡むんだからさ。そうなる訳ないじゃんか」
言うと、振り返った織田が、ふわ、と嬉しそうに笑った。
「そうなんだけどね…… でもなー、美久姉なー……」
「姉さん、怖いの?」
「怖くはないんだよ、優しいんだけど。ただね――――…… いつか、会えば分かるよ。昔からイケメン大好きっていうか」
織田がそんな事言いながら、クスクス笑う。
「高瀬の事とか、きっともう、ほんとに大好きだと思うなあ」
「そうなの?」
「うん。いつか会ったら、納得すると思う。婚約者の人も、結構なイケメンさんだよ」
にっこり笑って、そんな事言ってる。
「あ、高瀬、そろそろ温泉いく? もうお腹落ち着いた?」
「ん、行こうか」
「うん」
温泉に向かって、2人でゆっくり歩き出す。
「ここ、ほんとに良いね。 廊下歩いてるだけでもなんか落ち着く。内装とか、絵とか、キレイだし」
「――――……織田が気に入ってくれて、良かったよ」
言うと、めちゃくちゃにっこり、笑いながら。
「連れてきてくれて、ほんとありがと」
「……ん」
……可愛い。
――――……素直なとこ。 すげえ、好きかも。
――――……不思議だな。
オレは、素直なんかとは、真逆で生きてきたのに。
そこがものすごく、愛しいとか。
自分が持ってない部分に、めちゃくちゃ惹かれてるんだろうか。
「あ、そうだ。高瀬、オレ、まだ何もお金出してないんだけど」
「え? ああ。別に――――……」
「別にじゃないよ、ちゃんと半分出すからね」
「――――……ほんとに、いいんだけど」
「やだ、半分出す」
「オレが勝手に、織田を連れてきたんだし」
「でも」
「出してもらうつもりなら、先に聞いたし……」
「――――……でも、全部出してもらうの、やだし」
あー……。そうか。
……お互い、男だとこうなるのか。
彼氏に出してもらおうとか、そういうのじゃねーんだな。
んでも、勝手につれてきて、出してもらうっつーのもなー。
「今回はさ、オレに付き合ってもらってる、ていうんじゃダメ?」
「……」
「オレがお前と来たくて、来てもらったし、しかも場所言わずにつれて来ちゃったしさ。それくらいは出そうかなーと思うんだけど…… 別にそこまでバカ高くないし、ここ」
「――――……でも……なんか全部払ってもらうのも、なんか……」
まだ納得してくれてなさそう。
どうすっかな。
「――――……じゃあさ」
「うん」
「今度、お前が好きなとこに連れてって」
「――――……」
「どっかあるだろ、織田が好きな場所。出かけるだけでも、泊りでもなんでもいいから」
「――――……」
そう言ったら、織田が、色々思い出すようにしばし考えて。
「うん、ある」
「じゃあ、そこに連れてって。今回のは、オレが出したいから」
「んー……分かった」
「ん」
良かった。
やっと、納得してくれた。
ほっとしたところを、腕を引かれて、織田を見下ろすと。
「ありがと、高瀬」
「ん」
素直な礼の言葉に頷くと。
「――――……そしたら、また、今度はオレの好きなとこに、高瀬と行けるんだ。楽しみすぎる……」
ふわふわ嬉しそうに、めちゃくちゃ笑顔で、そう言う。
「――――……」
……可愛すぎるよな。
なんなの、お前。
でもって、こんな無邪気な笑顔を見て、オレが思うのは。
――――……めちゃくちゃに抱いて、乱れさせたい、なんていう。
こんな笑顔の織田にはとても言えないような、事で。
さっきからずっと、近くに居て触れそうなのに、触り切れない感じでいるからか。そろそろ、ちゃんと触りたい。
周りを一瞬見回して。人気のない事、確認。
「織田」
ぐい、と肩を組んで、近づける。
「え?」
「――――……温泉入って、早く部屋もどろ」
「え――――……あ、……うん」
最初良く分かってなかったみたいだったけれど、途中で「早く」の意味が分かったみたいで。かあっと赤くなりながら、こくこく、小刻みに頷いてて。
……可愛い。
一日に何回、可愛いって思うんだろう。オレ。
しかも、男、相手なのに。
でも、今まで見てきた中で、一番、何してても可愛いって。
……やばいな……。
そんな事を考えてるとは知りもしない織田は。
露天が楽しみとか、楽しそうに話してて。
またそれが可愛くて。
ほんと、困るんだけど。
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