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第2章
◇旅行*拓哉1
しおりを挟む「ほんと、綺麗だったー」
遊覧船を降りて、駐車場まで歩く。
車で旅館に向けて出発すると、織田が嬉しそうにそう言った。
「良かった、喜んでくれて」
前を見つめたまま、オレが答えると。
「そりゃ喜ぶし。非日常ってすっごく楽しいね」
「うん。だな」
「水族館も、あざらしすごい可愛かった。ペンギンも」
「ん」
まあ、オレは、そこらへんを可愛がってる織田の方が、可愛かったけどな。
なんて、言わずに思って、ふ、と笑ってしまう。
「あ。――――……なんか急に思い出した」
「ん?」
「……絵奈ちゃん、どうしたかなあ。淳くん」
「あ、さっき、連絡来てたな……まだちゃんと見てなかった」
船で織田の写真を撮ってた時だったので、そのまま放ってしまっていた。
ちょうど信号が赤で止まったので、スマホの指紋認証だけ開けて、織田に渡す。
「絵奈のメッセージ開いていいよ」
「あ、うん――――……」
少しの間操作して、織田が、あった、と呟く。
「読むね? えーと… 昨日は急にごめんね。淳と付き合う事になったよ。一生大事にするって言ってくれたから、とりあえず信じてみようと思ってるよ。織田さんが、カッコイイって言うから、そう思って見たらそうかもって。だから、織田さんにありがとうって、伝えてね。 お兄ちゃんも、織田さんと仲良くね」
読んでいて、最後の言葉に織田がクスクス笑ってる。
「何でこれわざわざ書くのかな」
「さあ……? オレがお前のこと大好きだと思ってるみたいだから……」
「そう、なんだ……」
クスクス笑いながら、織田がオレに視線を向ける。
「……にしても、無事付き合う事になって、良かったね」
「まあな。あいつ、モテそうなのに、よくもこんな長いこと、絵奈の愚痴につきあってたなーとは思う」
「絶対淳くんてモテると思うよねー? ……うーん、でも、絵奈ちゃんは高瀬がお兄ちゃんだからしょうがないね」
クスクス笑いながら、織田がスマホを伏せて、オレの隣のドリンクホルダーの所に置いた。
「なんか基準が高瀬って、ちょっと可哀想になっちゃうよ。 うちの兄弟、普通で良かった」
なんて、言って、おかしそうに笑ってる織田。
「織田、5人の真ん中って言ってたよな?」
「うん。俊兄、美久姉、オレで……慎吾と加奈。5人だよ」
「織田に似てる?」
「……似てるかなあ。俊兄はもう結婚しててすっごい頼りになる。美久姉は婚約中。慎吾は高2で……慎吾が一番オレと似てるかも。 加奈は……まだ中1。可愛いよ、まだ幼くて」
「――――……5人ってすごいよな」
「んーまあ、あんまり居ないかな。でも、3家族知ってる。5人兄弟つれて4家族で遊びに行った時は、ものすごい人数でさー」
「そっか」
兄弟や家族の話をする織田が、楽しそうで。
笑顔で返していたのだけれど――――……。
ふと、またよぎってしまった。
――――……3人子供欲しいなーとか、楽しそうに話してたもんな……。
「――――……」
――――……オレ、織田のこと、離せそうにないんだけど。
ほんと、どうしようかな。
……織田が子供欲しかったとか、結婚が、とか。
そこを考えるときだけ、少し、迷う。
「……高瀬??」
「え? ああ、何?」
「なんか急に無言で。変な顔してるから」
「――――……いや、別に……」
変な顔してたか、オレ。やば……。
気を取り直して、会話を戻す。
「今も兄弟ってよく会うのか?」
「んー。ううん。実家帰ると弟たちはいるけど、俊兄は結婚してるから違うとこ住んでるし。っても、実家のすぐ近くなんだけどさ。 で、美久姉は、仕事が忙しい人だから、夜中に帰ってくるから、なかなか会えない。そもそもオレが就職してからそんなに帰ってないし」
「そうなんだな……」
「オレ、絵奈ちゃんに会ったしさ。ほんと、いつか高瀬にも、オレの兄弟たち、会ってほしいなー」
嬉しそうな顔をして、そんな風にしみじみ言ってる。
なんでこんなに可愛いんだろ。
「……いつか、会ってみたいよ」
クスクス笑いながら言うと、「うん。揃うとすっげーうるさいけど、引かないでね?」と笑う織田に、ぷ、と笑ってしまいながら、頷いた。
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