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第2章

◇会えてよかったな*圭

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「あ、そういえば絵奈がさ。お前と結婚してもいいってさ」
「……はい??」

 唐突に何を言い出すんだろうと、高瀬を見つめると。
 高瀬はクスクス、可笑しそうに笑った。

「オレが織田の事大事にしてると思ったみたいで、絵奈が織田と結婚すれば、織田とオレが兄弟になれてずっと続くから、そのために結婚してもいいよって、言ってた」

「……オレと絵奈ちゃんが結婚すんの??」
「してもいいって」

「なにそれ……」

 ぷ、と笑いながら、オレは、絵奈ちゃんの顔を思い出す。

「恋愛相談した帰りだし、もう思いっきり冗談だろうけど」
「ん」

「なんか、可愛いね、絵奈ちゃん」

 面白いなあ、なんて笑ってると。


「――――……オレ、そん時なんて思ったと思う?」

 オレの髪の毛をふわふわと撫でながら、顔をのぞき込んでくる。

「え…… えーと…… ?」

 あんまり近く来られると、頭が働かなくなる。

「何て言ったの?」
「んー。……絵奈でも渡したくないって、思ってさ。そんな事しなくても一緒に居るからって、マジで答えちゃったんだよな……」

「――――……」

 そんな事しなくても一緒に居るって。
 高瀬の言葉がほんと、嬉しい。


「妹のアホな提案に、冗談だって分かってんのに、何マジで答えてんだか」

 そんな風に苦笑いを浮かべる高瀬を、ただ見つめてしまう。


 大きな手が、髪の毛をいじるのをやめて、頬に触れてくる。



「……織田、ずっとオレの、な?」
「――――……」

 そんな風に言われて。ゆっくり、キスされて。


 胸、が、痛くて。
 じわ、と目頭が熱くなる。


「え」

 優しいキスを少し離して、薄く目を開いて、オレを見た高瀬がそんな声を出して固まる。

「……織田?」
「――――……」

「――――……織田? 泣いてる?」
「……っ泣いてないけど」

「……」



「……高瀬と……」
「――――……」

「……高瀬と会えて、よかったなー……て、思ってる……」


 心から、そう思って。
 なんかオレ、高瀬と会うために生きてきたのかな、なんて思って。


「――――……やっぱ泣いてる」

 クスクス笑って。
 高瀬が、オレの目尻を、ぐい、と拭う。



「――――……あーもー……可愛いな……」


 むぎゅ、と抱き締められて、ちゅと頬にキスされて、今度は、すこし、笑ってしまう。

 しばらく抱き締められたままでいたのだけれど。


「もう平気?」
「うん。てか、オレそこまで泣いてないよ」

 クスクス笑ってそう答えると。高瀬も笑う。


「……これだと飯食えないか」
「ん……」


「織田、食べていいよ」

 ふ、と笑われて、そんな風に言われて、抱き締められていた腕を解かれる。
 抱き締められてる間に、薄く滲んだ涙は完全に引いたので、気を取り直して、ご飯を食べる事にする。
 

 ……ああ、オレ。
 なんでこんな事で泣いちゃうんだろ。

 オレが過去付き合ってた女の子に、こんなことで泣く子、居なかった……。
 ……超恥ずかしい。

 ……やばいな、ほんと。


 これは高瀬と別れる事になったりしたら
 ほんとに、死んじゃうんじゃないだろうか……。


 そんな事を、食事を進めながら思っていると。


「……焼き鳥好きだよなー、お前」
「え。あ、うん。好き」


「じゃ明日の夜は、焼き鳥美味しいとこ、行こうか」
「うん、行く行く」


 わーい、焼き鳥美味しいとこ―!
 現金だけどすっかりテンションあがる自分。


 ――――……とりあえず、高瀬と居られる事を楽しもう。
 うん、それがいいな。



「明日明後日、オレと居れるんだよな?」

 すっかり明日が楽しみでウキウキしていると、高瀬がそう聞いてきた。

「うん。あ、だけど、日曜は家に帰ろうかな。スーツとか色々……」
「ん、分かった。荷物取りに行った方がいいよな」
「荷物とりに……?」
「その後オレんち来て、月曜一緒に会社いこ」
「え。いいの?」

「――――……うん。織田んち、一緒に行ってもいい?」
「いいけど。でも高瀬が来る前に一回片付けとこうと思ったんだけど……」

 苦笑いしてると、高瀬は「嫌なら入んないよ」と笑う。

「ここみたいに、すっごい綺麗じゃないけど……ごちゃごちゃしてるけどいいなら」
「ごちゃごちゃって?」
「こんな風に、統一されてないっていうか…… 好きなものがいっぱいごちゃごちゃある」
「織田の好きなものがあるなら、らしくていいじゃんか。 入って良ければ入るし、嫌ならどっかで待ってるよ」
「……入っていいよ」

 言うと、高瀬は楽しそうに、ふ、と笑って。

「なんか楽しみかも」
「……期待しないで」

 言ったオレに、ますます笑ってる。


「じゃあ……土日最後は織田んち寄るとして……それ以外は、任せてくれる?」
「―――……うん!」


 楽しそうに言う高瀬に、嬉しくなってそう返事をした。






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