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第2章

◇2人飲み*圭

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 高瀬と2人で退社して、近くの個室居酒屋にやってきた。
 完全個室なので、閉まってしまえば、2人きり。

 でも店員さんも来るし、別に隣に座るとかじゃなくて、テーブルを挟んで向かい合わせだけど。……て、別に。隣に座りたいとかじゃないけどね。

 ビールが運ばれてきて、乾杯する。


「おいしー」
「そうだな」

 優しく笑いながら、高瀬がオレを見つめる。

「最後、倒れてたけど。午後疲れた?」
「あーうん、まあ……」

 あの時は、高瀬の事考えながら、朝から昼も強烈でって、倒れてたんだけど。先週も高瀬の事ばかりで仕事遅れてたから、午後はそれを頑張ってたし。

 ……ていうか、今って、オレの全てが、高瀬で回ってる気がする……。

「オレも明日はちょっと忙しそう」
「あ、そうなんだ。今日の打ち合わせの?」

「そう。少し予定変更が入ってさ。午前中に織田と組んだスケジュールにもう少し詰め込まないと」
「そっかー。オレに手伝えることがあったら手伝うよ」

 そう言うと、高瀬は、ありがと、と笑んだ。

「高瀬ってさ、帰った後って、夕飯て作るの?」
「んー。半々かな。早ければ作るけど、遅くなったら買って帰る」

「手際良いもんね。何でも作れるの?」
「何でもじゃねえけど……簡単な物なら作れるよ」

「むー。ほんとになんでもできるな……どーして?」
「親が仕事で居ない事も多かったから。いつも買ってくるのもなーと思って、妹に作ってたのが最初」
「妹居るの?」
「ああ。今大学生」

「へー可愛い?? 高瀬に似てる?」

 似てたら絶対めっちゃ可愛いに違いない。
 ウキウキして聞いたら、高瀬は苦笑い。

「そんなに似てるって言われたことはねえけど…… 目は似てるかなあとは思う」

 高瀬のこの瞳?
 ……この瞳を持つ女子かー。

 高瀬は凛々しいけど、女の子だからそれは無いとして。
 ……この、印象的な、見つめられると吸い込まれそうな、黒目が似てるなら、もう絶対に、可愛いに違いない。
 顔のパーツで、瞳って、結構大きいもんな。


「絶対可愛いだろうなー」
「何で確定してんの」

 クスクス笑って、高瀬がオレを見つめる。

「だって高瀬に瞳が似てて、可愛くない訳ないっていうか」
「どんな評価なんだよ」

 どんなって。
 最高ランクの評価だけど。

 ……と、それはなんか恥ずかしいから、言わないけど。


「いつか会ってみたいなあ」
「ああ。それはオレも思う」
「ん?」
「織田んちの4人の兄弟。会ってみたい」

「え、会いたい?」
「うん。会いたいよ」

「そっかー。じゃあいつか、実家行こうね」

 オレの家族と高瀬が絡むとか。
 なんか不思議すぎる光景。

 想像すると笑っちゃう。


「織田の実家に挨拶に行くかな、オレ」

 意味ありげに、高瀬が言う。

「……ん? ……って。どういう意味で?」
「そういう意味で?」

 高瀬が、ふ、と笑って、オレをまっすぐ見つめる。


「……いつか。そうなったら、いいね」

 思わずそう言ったら。
 高瀬は一度黙って。


「ほんと、そうだな」

 そう、言った。

 …………うわー。
 ……嬉しい、かも。

 高瀬って。
 一生一緒に居るとか。実家行くとか。

 ……たとえ今だけだったとしても。
 そういうの言ってくれるの。大好き。だなあ。


「……高瀬、オレ。嬉しいんだけど。そういうの」
「――――……そっか」


 オレがそう言うと。
 高瀬がくす、と笑う。 
 

 なんか見つめあうだけで。
 幸せな感覚に包まれるみたいで。

 ああもう。大好きすぎて。
 ほんと困る。

 お酒も少し進んで、食事を取りながら、楽しく話していると。
 不意に高瀬に聞かれた。
 

「なあ、織田、週末空いてる?」
「ん? 高瀬と会えるなら、空けるよ??」

「――――……」

 あ。
 超食い気味に言ってしまった。

「……と、あの、まだ週末、予定入れてないし、て、事なんだけど……」
「ふうん」

 言い訳をしていると、高瀬はぷ、と笑った。


「じゃあ、金曜、泊まりにおいで。土日は?」
「うん、あける」

 は。
 またまた超、食い気味に言ってしまった。


「織田って――――……」

 クスクス笑われて。
 ちょっと恥ずかしくなってしまう。


「ほんと可愛いよな。飲むと余計素直」


 うん。可愛くはないけど。
 確かに、飲むと、ほんとの気持ちが駄々洩れになる気はしてる……。

 ……特に最近、多い気がするなあ。
 





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