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第2章
◇修行中✳︎拓哉
しおりを挟む――――…… ヤバいな。オレ。
織田と、付き合う事になって。
朝、一緒に会社に来た。
仕事途中で、ふと気付いた。
――――……オレ、浮かれすぎ。
織田は分かりやすくて、すぐ赤くなるし、何かぼーとしてて。
見るからにいつもより、ぽわぽわ浮かれてる。
けど。
オレは分かりにくいから、周りにも織田にも、バレてないと思うけど。
絶対、オレのが、ヤバい。
さっき、トイレで、キスしてしまった。
人が居ない事、来てない事は確認はしたけど。
人が来るかもしれないところで、我慢できずに、キスしてしまった事なんか、人生で初めて。
――――……ヤバいよな。
気を引き締めないと、鼻歌を歌いながら仕事をしてしまいそうな。
「――――……なあ、高瀬」
「はい」
渡先輩に声を掛けられ、そちらを振り返る。
――――……多分、大丈夫。
いつも通りで、過ごせてるはず。
「さっきの打ち合わせ、平気だった?」
「とりあえず、分からない事は無かったと思います」
なるべく平静を装って、先輩の質問に答える。
「じゃこれからのスケジュール、ちゃんと組んでくけど……他の仕事の予定も考慮して、一旦組んでみる?織田とも相談してやってみて」
「分かりました。とりあえず織田とスケジュールあわせて、先輩たちに見てもらう感じでいいですか?」
「ん、それでいいよ」
話し終えてすぐ、オレは、逆隣の織田に体を向けた。
向こう側の太一先輩と話していた織田は、なんとなく気配を察したのか、ふ、とオレを振り返った。
「織田、さっきの打ち合わせの仕事、2人で相談してスケジュール組んでみてだって」
「あ、うん。今太一先輩も言ってた」
「今お前は急ぎの仕事ある?」
「うん、いっこ…… ちょっと待って」
言いながらスケジュール表を机に出してくる。
「この仕事が優先だけど…… でももうある程度は進んでるから……」
1枚の紙を真ん中に、織田がシャーペンでなぞる箇所を、オレがひょい、とのぞき込んだ瞬間。 ぴた、と織田が止まった。
「……――――……っ……」
会話が急に中断されて。不思議に思って顔を上げたら。
織田が手で口を覆って、俯いていた。
「……っごめん……」
何を考えたんだか、耳まで真っ赤。
「――――……」
んとに――――……ヤバいって、言ってんのに。
キスしたい。
触れたい。
「――――……ごめん……」
織田は謝りながら、手で顔をパタパタ仰いでる。
……ほんとだよ。
ただでさえヤバいっつーのに、何で織田、そんなに可愛いかな……。
ヤバい。
マジで、キスしたい。
「……だから、とりあえず、この仕事はあるけど……でも、大丈夫だから…… 合わせよ」
「……ん」
織田みたいに、赤くなったりはならないけど――――……。
可愛くて、しょうがない、と思うのを、止められない。
こうなると、同じチームの、席が隣同士って、かなり、きつい。
近づいたり、見つめたりする時の、
――――……織田の反応も、いちいち可愛くて。
なんだろ、オレ。
――――……こんなに触りたいと思うの、初めてじゃねーかな……。
本当、ヤバいなー……。
隣に居る織田に触れるのを、我慢するの。
……修行でもしてる気がする。
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