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第2章

◇これから*圭

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 昨日は、意識を失うみたいに眠りについて。
 目が覚めた時には、もう明るくて。朝日がカーテンから漏れていた。

 起き上がって、見回すけれど、高瀬の姿はなかった。

「――――…はー…」

 昨日のこと。前の時よりも、はっきりと覚えてて。
 ――――……超恥ずかしい。

「…………」

 でも。
 ――――……高瀬がオレにすごく優しくて。
 めちゃくちゃ、愛されてるみたいに、抱かれたのも、すごく思い出されて。


 恥ずかしかったけど――――……
 好きだと思って、してくれてるのも、ちゃんと、感じられて。

 なんてそんな事考えてたら、かああっと顔に熱が集まってきて。

 その時。
 ドアが静かに開いて、高瀬がそっと顔をのぞかせた。

「……あ、起きた?」

 オレと目が合うと、ふ、と笑んで、部屋に入って近づいてくる。

 黒の長袖のTシャツにジーンズ。
 似合うなあ。カッコいい。

 てか、何着ててもカッコいいけど……。
 ……なんていってる場合じゃない……。

 ぎし、と音を立てて、ベッドに腰かけて。よしよし、とオレの頭を撫でてくる。

「おはよ、織田――――……体、大丈夫?」
「……だ、いじょうぶ」

 クスクス笑いながら。高瀬に見つめられる。

「――――……混乱してる?」
「……今回はもう、大丈夫」

 そう言うと、高瀬は、ふ、と微笑んだ。


 ……うー。
 どーして、こんなにカッコいいんだろうか。

 高瀬に、ドキドキしなくなる日、くるかなあ…。
 来ないかもなー……。

 手を取られて、引き寄せられて、ぎゅと抱き締められる。


「――――……織田」
「……うん?」

「オレ、ほんとにお前が好きだから。……ずっと一緒にいような?」

 頬に触れて、すり、と撫でてくる。

「……っ」

 言ってくれた言葉を理解した瞬間、また頬がカッと熱くなって。

 こんな風に、照れるというか、赤くなるというか、こんな事、ここ数年……
というか、思いだせる限り、ほとんど無かった現象で、もうどうして良いか分からない……。

「……は。 お前、ほんと、すぐ赤くなるな?」

 ……だから、オレ、高瀬の前以外で、赤くなることなんて、
 ほんと… 無いんだって…。

 って、きっと言っても信じてもらえそうにないので、言わない。

 ――――…だってオレ、高瀬の前で、赤面してばっかり。
 顔に血が上っちゃうのを、抑える方法って……あるんだろうか。
 勝手にのぼっちゃうんだから、もう、どうにもできないのかな……。

 今度、赤面の防止方法を、調べてみよう……。
 なんて、考えていると。

 クスクス笑った高瀬の顔が近づいてきて、唇を重ねられて。
 ぎゅと瞳を閉じていたら。
 

「……可愛い」

 くしゃ、と髪を撫でられて。
 また唇が重なる。

「……っ……!」

 うう。

 ……絶対もう、無理、
 赤面防止方法なんて、調べたって無駄。

 こんなふうにキスされて、こんなふうに見つめられて、
 可愛いなんて、撫でられたら、もう、死にそうに恥ずかしいから。

 ドキドキして、心臓が痛い。





「これから、よろしくな、織田」



 嬉しそうに笑う高瀬に。

 うんうん、と頷いて。






「よろしく、高瀬」



 オレも、めちゃくちゃ笑顔になってしまった。





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