上 下
59 / 235
第2章

◇織田の話*拓哉

しおりを挟む


 玄関を開けて、入ってきた織田が、避けてごめんねと、謝ってるのを見ていたら、抱き締めてしまいたくなったけど。
 OKの返事を聞くまでダメだと思って。ぐっとこらえる。

 ほんとこれで、ダメだったら。
 オレどうするんだろう。なんて思いながら「電話するって言ってなかった?」と聞いたら。

「……高瀬に会いたくなって。……顔見て話したかったから」

 なんか、言葉が出なくなる。

「……何でそんな可愛いかな……」

 答えが出るまではと思うのに、つい、そう言ってしまうと、織田はすぐ顔を赤くする。

 嫌でも期待してしまう反応だけど――――……。
 ちゃんと聞かないと。

 そう思って織田の話を促した。


 入社式から好きだった。でも、男同士だから恋人になりたいとは思っていなかった、自然と忘れるまで、好きでいる位いいかと思ってた。

 あの夜、酔った勢いもあって、急にあんな事になってしまって。

 でも落ち着いたら、オレが織田を好きだと言ったのが、何でか分からなかったし、 付き合ってから、別れることになった時の事まで考えて悩んでた。


 全部、話してくれた後。
 一緒に居たいから、付き合って下さい、と、織田が言った。


 ほとんど分かってた事だったけど。
 改めて言われると。

 1週間、きっとすごく悩んだんだろうなと改めて思った。
 それでも、付き合おうと出してくれた結論が、すごく嬉しくて。


 オレが、付き合って、伝えてたのに。
 ――――……改めて、付き合ってほしいと、織田から言うんだな。


 そういう所も好きだなと、思ってしまう。


「織田、オレな」
「うん……?」

「お前の事、好きでたまらないから、好きって言ったんだよ」
「え」


「何で好きか分かんないとか、織田は言ってたけど。ちょっと好きとかじゃなくて。ほんとに、お前の事が好きだから、言った」
「――――……」


「オレがお前を可愛いって思ったの、いつが最初か分かる?」
「…………わかんない。ていうか、可愛いと思ってくれてたっていうのが、そもそも……」

 ぷるぷる首を振ってる織田に、ふ、と笑ってしまう。


「……可愛いっていうのは入社式ん時に、思ってた」 
「――――……」


 織田にとっては、その言葉は相当意外だったみたいで。
 大きな瞳が、ただまっすぐオレを見つめたまま。


 しばし、言葉を発しようとはしなかった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

「短冊に秘めた願い事」

悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。 落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。  ……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。   残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。 なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。 あれ? デート中じゃないの?  高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡ 本編は4ページで完結。 その後、おまけの番外編があります♡

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

あなたのことが好きなのに

宇土為名
BL
高校2年生の江藤匡孝は通っている高校の国語教師・市倉に毎日のように好きだと言うが、市倉には相手にされない。だが匡孝が市倉に好きだと言うのにはある秘めた理由があった。 すべてのことが始まったあの春に、あの日に会わなかったなら──

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】 【続編も8/17完結しました。】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785 ↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。

処理中です...