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第2章

◇電話の約束*圭

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 今週は、ずっと最悪だった。
 何がって。
 …………オレの態度。 高瀬への。

 もう。今までどう接してたのかすら分かんなくなって。

 返事もしないとと思うのに、考えれば考える程、分からなくなって。
 まともに、話せなくなって。何気なく、避けちゃって……。って絶対不自然だったと思うし。

 どうしよう。

 ……今日金曜で。
 高瀬とこのまま別れて帰ったら、土日、死んでしまうかもしれない……。

 どうしよう、高瀬に、今日空いてるか、聞こうかな。
 でも、1週間、話せてないのに、急に誘ったら……嫌かな。

 どうしよう。

 そわそわしながら、隣の高瀬に話しかけるタイミングを計りながら、午後の仕事をしていて。

「高…」
「なあ、織田」

 オレが、やっと声を出して、高瀬がこっちを向いてくれた、同じ瞬間。
 太一先輩に、話しかけられた。

「あ。……はい?」

 咄嗟に、太一先輩の方を振り返る。


「なあ、織田、今日暇? ちょっと話しがあるからさ、付き合ってくれない?」
「あ……今日、ですか?」

「うん。今日が良いな。約束あるなら、いいんだけど」
「あ、いえ、無いです。約束は」

 ……高瀬と、話したかった、けど。

 でも今週、仕事に身が入らなくて迷惑かけたし。
 その話かもしれないし。

 ――――……断れないな……。


「付き合います。って、食事ってことですか?」
「ん、どっかうまい飲み屋行こうぜ」
「はい」

 笑顔の先輩に、頷く。

 高瀬とは、今日は話せないか……。

 ――――……明日とか……空いてるかなあ。
 聞きたい、けど。

 なんかずっと避けてたのにここで、急に誘っても……。
 何だかすっかり臆病になってて。


「――――……織田、さっき呼んだ?」

 高瀬が言ってくれる。


「あ、の……」
「ん?」

「……あの、さ」
「うん?」

 高瀬が、ふ、と笑ってくれる。
 まともに話せてなくて。かなり避けてて。
 それなのに。

 全然変わらず、優しい、感じで。


「……夜、電話、して良い?」
「ん。――――……もちろん」


 ――――……あ、良かった。
 すごく、ホッとして。
 
 先輩とご飯食べ終わったら、あとで、電話しよう。
 電話に出てくれた高瀬なら、明日とか明後日とか、なんとか誘える気がする。そうしよ。うん。


 それまでに、考えとかないと。



 ――――……付き合いたいって言ってくれた事も。

 めちゃくちゃ嬉しいんだけど。
 ――――……ほんとにオレなんかと付き合って、いいのかなあ?とかさ。
 高瀬、女の子に超モテモテなのに。


 高瀬が、オレをそんなに好きな理由が、全然見えなくて。
 そりゃ友達としてはさ。仲良かったけど。
 それと、そういう意味の好きは、別だもんね……。

 いいのかなあ、高瀬。ほんとにオレと付き合ったりして。


 そこらへん、信じてないとかじゃなくて、
 本気で、いいのかなあ??と思ってしまう。

 あんな事してしまって、顔まともに見れない位恥ずかしいけど。
 ……あれも。
 高瀬、今は、ちょっと後悔したりしてないかなあとか。

 ……色々思っちゃうってことも。
 …………ちゃんと、話せたら、聞いてくれるかなあ……。

 って、オレ、ちゃんと高瀬の顔見て、話せるかなあ。
 ……とりあえず、電話する約束は、何とかできたし。

 電話で、色々話してから、会うっていう約束を……。

 悶々と考えていた時。


「織田、今日残業した方がいい?」
「あ、残業、ですか??」

 太一先輩を見て首を傾げると。

「もう定時過ぎてんだけど。残業してく必要ある?」
「あ、いえ、来週で平気だと思います」

 ……高瀬の事考えてたら、定時になってた。
 びっくり……。

 ……もう、来週、がんばろ……。


「じゃ行こうぜ」
「はい」


 まだ残ってる高瀬と渡先輩に、お先に、と告げて。
 オレは、太一先輩と、退社して、居酒屋に向かった。





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