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第2章

◇大混乱*圭

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 食事を終えて、一緒に並んで、食器を洗う。
 それすら、めちゃくちゃドキドキする。

 泡立てて食器を洗って、洗い桶に入れてるオレの手が、高瀬の手に触れてしまった。

「あ…ごめ、ん」

 ドキドキが半端なくて、もう、手が震えそうな気がしてくる。

「――――……大丈夫だよ」

 高瀬の、優しい声につられて顔を見て。
 優しい視線に、どきん、と胸が弾む。

 もう、なんか、息が出来なくなりそうなんだけど、どうしたらいいんだ。

 本気で手がプルプル震えだしそうで、スポンジをぎゅーと握りながら食器を洗う。
 すぐに洗い終わってしまったので、布巾を洗って、テーブルを拭きに移動。

 高瀬と離れられて、少しほっとして。落ち着けーと自分に唱えながら、念入りにテーブルを拭く。その間に、高瀬が食器を流し終わった。台所に戻って、布巾を洗って、干す。

 ……洗い終わっちゃった。
 うう。話さないと。一体、どこから……。


「――――……あのさ、織田」
「え?」

 不意に呼ばれたと思ったら。
 後ろから、ぎゅ、と、抱き締められてしまった。


「――――……っ」

 ちょちょちょ、ちょ……む、むりっ!
 思いながらも動けず、固まっていると。


「ごめん、なんか……すごい、戸惑ってる?」
「――――……」

「全然、目、合わせないし」
「――――……」


「……嫌だった? 昨日の」
「……っ」

 プルプルプル。
 思い切り、首を振る。

 嫌だったなんて、ある訳ない。
 嫌な訳ない。

 大好きすぎて、すごい、嬉しい、けど。

 戸惑いと、何でだろっていうのと、恥ずかしいのと、
 なんかもう、どうしたらいいか分からないだけで。



「……嫌じゃ、なかった?」
「うん。 ごめん、いっぱいいっぱいな、だけで――――……」

 高瀬の腕の中で、ゆっくり振り返って、高瀬を見上げた。

「――――……」

 見上げた瞬間、かあっと血がのぼる。
 だ、めだ、これ。

「…………っ」

 でも、まっすぐすぎる視線から、外せなくて。


「また真っ赤――――……」

 言った高瀬に、ぎゅ、と抱き締められた。
 優しい感じで。


「可愛いなー、織田……」
「…………っ???」

 だめだ、オレ、恥ずかしすぎて、憤死しそうなんだけど……っ。


「た、高瀬……?」
「オレ、織田が好きだよ。すげえ、好き。今まで会った中で、ダントツ、好き」
「――――……っ」

 それは、オレも――――……。

 オレも、そう、なんだけど。


 強張っていたら。
 ふ、と優しいキスを唇にされて。


 ますます、赤くなってしまう。


「織田、ちょっと――――…… 平気??」

 昨日、あんなことまでしたのに、キスごときで、死にそうになってるオレを心配して、高瀬がのぞき込んでくる。




「高瀬、あの、ね……あの……っ……」
「うん」

「――――……っ……ごめん、あの……高瀬」
「うん」

「……っオレ、……帰って、いい?」
「――――……」

「……まともに……話せない、から。一回、1人で……」
「――――……1人で考えたい?」

「……うん……」
「まあ……いいけど。 じゃあ、オレの話を聞いてからにして?」

 そう言われて。オレは、高瀬をゆっくり、見上げた。


「昨夜、織田とキスしてさ、そのまま最後までしちゃってさ。……大事な事、言うのが、後になったんだけど」
「――――……」

 大好きすぎる、まっすぐな瞳が、じっと、オレを見つめた。


「……オレ、織田の事が、本当にすごく好きだから――――…… 
 オレと、付き合ってほしい」

「――――……」

 オレも、好き。
 ――――……すごく、好き。

「あ、の……」
「いいよ、今答えなくて。1人になって、昨日の事とか、ゆっくり考えて、――――……オレのこの答えも、考えてきて?」 

 言いかけた返事を止められて、高瀬にそう言われた。

「オレも、ちゃんと考えておくから」
「……」

 うん、と頷く。


「でも、落ち着いて考えるってだけで。 オレは、織田と付き合いたいのは変わらない。 織田の事が、大好きだから」

「うん。……オレも――――……高瀬、好き」

 一生懸命、なんとか、それだけは伝えると。

 高瀬は、ふ、と笑って。
 オレの頭をくしゃくしゃ、撫でてくれた。



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