39 / 235
第1章
◇涙の理由*拓哉
しおりを挟む「……どうして、そうなるんだ?」
とりあえず、一言、聞くと。
「――――……だって……高瀬、好きな子、居るなら……」
「……居るなら?」
「……ますみちゃんは、高瀬が片思いって言ってたけど……絶対そんな訳、無いし」
「――――……」
「……付き合う事に、なるだろ、絶対」
……絶対、の意味が分からない。
片思いの訳が無い、ていうのも、分からない。
……織田の中で、オレって、絶対ふられたりしない奴、なんだろうか……。
好きになったら、即付き合うのが確定って事か。
「――――……織田……」
「……」
「……つか…… オレが誰かと付き合ったら――――…… なんで、お前はオレんちに来なくなるんだ?」
「――……だって……今だって、邪魔してるんじゃないかと思うし……」
「――――……は?」
「……オレが、高瀬の家に、週末よく来ちゃってるから…… 女の子誘えないんじゃないかと思って……」
「――――……」
……あぁ。
……それで、オレに好きな子が居て、付き合うなら、もう来ない……て事に、なるのか。
理由はなんとなく分かったけれど、全然納得は出来ない。
「……織田」
「……?」
「オレ、お前がうち来なくなるの…… 寂しいから、無理なんだけど」
もう、そうとしか思えないから、そのまま、言葉を選ばずにそう伝えた。
すると織田がオレを見つめて。
次の瞬間。
「――――……っ」
「え」
目の前の、大きな瞳から、突然、涙が零れ落ちた。
それはあまりに突然で。
驚いて、咄嗟に動けない。
「……っ……ごめ……――――……」
そんな風に言いながら、手の甲で、顔を隠そうとしてる織田の手を。
思わず、掴んだ。
ソファから降りて、織田の目の前に座って、見つめる。
「……何で――――…… 泣くんだ?」
「……っ……オレ……酔ってるから……だと思う……っ」
「酔ってたって…… 普段泣かないだろ」
言うと、言葉に詰まった後。
俯いて、吐き出すように、続ける。
「……んで…… 寂しいとか……言うの……ってか……オレ、なんで……こんなんで泣いて――――……」
「織田……?」
「……っもう…… オレ、自分が訳わかんなくて……」
「――――……何が」
「オレ男だし……結婚、したいし……人生……大体、決めてた、のに……」
そんな事、断片的に急に言われても、きっと他の奴には、全く意味が分からないセリフ。 でも――――……オレは、痛い位、分かってしまった。
「……あ、ごめん ……っこれ、オレの勝手な話で……」
「――――……」
「――――……高瀬には、関係、ないんだけど……っ」
「――――……織田……」
関係ないはず、ないだろうに。
取り繕うように言う織田を、ただ見つめる。
「――――……男、なのに……何でこんなに……オレ……っ……」
俯いた織田の瞳から、次々に、涙がこぼれ落ちていく。
……掴んだままだった織田の手を、そっと離していた。
他の奴が聞いたって、何で泣いてるかなんて、分からない。
織田も、きっと、オレが意味を分かってるとは思わずに。むしろ意味が分からないように、ただ、吐き出してるだけ。
だけど――――……。
織田が、なんで辛いのか。なんで泣いてるのか。大体、オレは分かってる。
結婚して子供を作って、普通に幸せに生きていきたい織田にとって。
多分。
――――……オレを、好きな事が。
辛いんだろうと。想像できて。
あくまで、オレと、そうなるつもりはないし、なりたくもない。
それなのに、好きなのが、辛い。
――――……そういう事なんだろうと、
いっそ、分からなければ、辛くないのに。
その涙の意味も、嫌というほど、分かってしまって。
何と言って、慰めてやればいいか、分からない。
66
お気に入りに追加
1,428
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
あなたのことが好きなのに
宇土為名
BL
高校2年生の江藤匡孝は通っている高校の国語教師・市倉に毎日のように好きだと言うが、市倉には相手にされない。だが匡孝が市倉に好きだと言うのにはある秘めた理由があった。
すべてのことが始まったあの春に、あの日に会わなかったなら──
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる