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第1章
◇夏って*圭 1
しおりを挟む高瀬に、抱き締められてしまった。
高瀬んちのトイレで、座って、頭を抱える。
ちょっと病んでたのか、縋っていい?とか言われて、
なんだろう、縋るって、と思ったけど、何でもいいやと思ったから、良いよと言ったら。
ぎゅ、と抱き締められてしまった。
このまま居て良い?と言われたけど、答えられなくて強張ってたら、高瀬が離れようとしたから、焦って、抱き付いた。
良く分かんないけど、高瀬が困ってて縋りたいなら、いくらでも、と思った。
そん時は、何をそんなに悩んでるんだろうと思って、必死だったから、全然意識しないで、いられた。
と言っても、強張ってはいたけど。
でもその後、もう大丈夫と言われて、普通に話し始めた瞬間。
抱き締められていたという事実、抱き付いてしまったという自分の行為に、顔が一気に熱くなった。
映画見る前にトイレ行ってくるとか、なんだかんだ言いながら、逃げてきた所。
なななななんで、オレ、さっき、高瀬に抱き締められたの???
縋り、たかった、から?
他意は、無いか。そうだよね。
ていうか、他意って、何だ。
オレが好きだからって、高瀬にまで変な期待、押し付けちゃだめだよな。
うん。そうだ、高瀬は、何か悩んでて、ちょっと誰でもいいから、人のぬくもりに触れたかっただけだ。
しばらく抱き締められた後、ちょっと復活してるように見えたし。
――――……っっっ
収まれ、心臓ー!!!
ドッドッドッドッ。
…………もう、何これ。
抱き締められてた時よりも、後になって、あの事態に気付いてからの方が、恥ずかしすぎて。
もー高瀬―、勘弁してよーー!
オレ、高瀬大好きなんだからーー……!
しばらくしてからトイレから出て、それから歯磨きついでに顔を洗って、やっと収まった――――……。
◇ ◇ ◇ ◇
午前は映画を見て、その後、高瀬と一緒にランチして。
そしたら、祭りのポスターを発見。
祭り気分になって楽しもうと思って、浴衣を思いついた。
高瀬にも着てもらって、2人で楽しくお祭り満喫しようって思って。
何やらめちゃくちゃ相性の良い店員さんと楽しく、浴衣をあれこれ選ぶ。
結果。
このまま雑誌とかに載せる写真撮影をしたい位、めっちゃカッコいい、浴衣姿の高瀬が出来上がってしまった。
まあ、オレは、悪くは無いかな、程度。うん。ていうか、自分的に見慣れてるし。
高瀬は、初めて着たらしいけど、もう完璧。
絶対、全国で今年の夏、浴衣を着る男の中の、一番カッコいいランキングで、ダントツの1位だよね!なんて、心の中で思いながら、浮かれて高瀬と歩いてると。
ふと、高瀬の視線が落ちるのに、何回か、気づく。
……無理、させてるかな。
無理無理、楽しくとか、やめた方が良かったかな。
オレばっかり、高瀬がカッコイイとかって、もりあがって、楽しくて、ウキウキしちゃってたけど。
だからオレ、ちょっと恥ずかしいけど、ほんとに思ってる事を言ってみる事にした。
「オレさ、高瀬の事さ、今まで知り合った奴の中で、一番――――……大事だからさ……1人で辛いなら、オレで良かったら、なんでも聞くから。秘密厳守するし。どんな事でも、ちゃんと聞くから」
そう、言った。
途中、不思議そうな顔で、オレを見ていた高瀬は。
なんとも言えない顔で、少し笑って。
「ずっと、オレと、居てくれる?」
とか、聞いてきた。
え、そんなの、もちろん! そう思って。
「高瀬が良いなら、ずっと居るよ?」
そう言ったら。
「じゃあずっとだけど」と言われて。
「うん。いいよ」と、即答した。
そんな、良く分からない会話をしてる内に。
高瀬の表情が、ちょっと和らいできて。
「じゃあ、考えといて。オレとずっと居れるか」
「……? うん。居れるよ?」
「……ちゃんと考えといて」
「――――……??」
どうしてそんなに何度も確認するんだろう。
オレは、高瀬が、オレと居たいって思ってくれる限りは、ずっとちゃんと、友達で居るよ。
オレが、好きすぎて、もしかして、ちょっと、辛くても。
高瀬と友達で居られなくなるの、嫌だもん。
だから、高瀬が辛い時はずっと居るし、
ずっと、友達で、高瀬と居るんだからね。
そんな風に思いながら、まっすぐに、高瀬を見つめると。
やっと、何だか普通に、ふわ、と笑ってくれた。
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