33 / 236
第1章
◇夏って*圭 1
しおりを挟む高瀬に、抱き締められてしまった。
高瀬んちのトイレで、座って、頭を抱える。
ちょっと病んでたのか、縋っていい?とか言われて、
なんだろう、縋るって、と思ったけど、何でもいいやと思ったから、良いよと言ったら。
ぎゅ、と抱き締められてしまった。
このまま居て良い?と言われたけど、答えられなくて強張ってたら、高瀬が離れようとしたから、焦って、抱き付いた。
良く分かんないけど、高瀬が困ってて縋りたいなら、いくらでも、と思った。
そん時は、何をそんなに悩んでるんだろうと思って、必死だったから、全然意識しないで、いられた。
と言っても、強張ってはいたけど。
でもその後、もう大丈夫と言われて、普通に話し始めた瞬間。
抱き締められていたという事実、抱き付いてしまったという自分の行為に、顔が一気に熱くなった。
映画見る前にトイレ行ってくるとか、なんだかんだ言いながら、逃げてきた所。
なななななんで、オレ、さっき、高瀬に抱き締められたの???
縋り、たかった、から?
他意は、無いか。そうだよね。
ていうか、他意って、何だ。
オレが好きだからって、高瀬にまで変な期待、押し付けちゃだめだよな。
うん。そうだ、高瀬は、何か悩んでて、ちょっと誰でもいいから、人のぬくもりに触れたかっただけだ。
しばらく抱き締められた後、ちょっと復活してるように見えたし。
――――……っっっ
収まれ、心臓ー!!!
ドッドッドッドッ。
…………もう、何これ。
抱き締められてた時よりも、後になって、あの事態に気付いてからの方が、恥ずかしすぎて。
もー高瀬―、勘弁してよーー!
オレ、高瀬大好きなんだからーー……!
しばらくしてからトイレから出て、それから歯磨きついでに顔を洗って、やっと収まった――――……。
◇ ◇ ◇ ◇
午前は映画を見て、その後、高瀬と一緒にランチして。
そしたら、祭りのポスターを発見。
祭り気分になって楽しもうと思って、浴衣を思いついた。
高瀬にも着てもらって、2人で楽しくお祭り満喫しようって思って。
何やらめちゃくちゃ相性の良い店員さんと楽しく、浴衣をあれこれ選ぶ。
結果。
このまま雑誌とかに載せる写真撮影をしたい位、めっちゃカッコいい、浴衣姿の高瀬が出来上がってしまった。
まあ、オレは、悪くは無いかな、程度。うん。ていうか、自分的に見慣れてるし。
高瀬は、初めて着たらしいけど、もう完璧。
絶対、全国で今年の夏、浴衣を着る男の中の、一番カッコいいランキングで、ダントツの1位だよね!なんて、心の中で思いながら、浮かれて高瀬と歩いてると。
ふと、高瀬の視線が落ちるのに、何回か、気づく。
……無理、させてるかな。
無理無理、楽しくとか、やめた方が良かったかな。
オレばっかり、高瀬がカッコイイとかって、もりあがって、楽しくて、ウキウキしちゃってたけど。
だからオレ、ちょっと恥ずかしいけど、ほんとに思ってる事を言ってみる事にした。
「オレさ、高瀬の事さ、今まで知り合った奴の中で、一番――――……大事だからさ……1人で辛いなら、オレで良かったら、なんでも聞くから。秘密厳守するし。どんな事でも、ちゃんと聞くから」
そう、言った。
途中、不思議そうな顔で、オレを見ていた高瀬は。
なんとも言えない顔で、少し笑って。
「ずっと、オレと、居てくれる?」
とか、聞いてきた。
え、そんなの、もちろん! そう思って。
「高瀬が良いなら、ずっと居るよ?」
そう言ったら。
「じゃあずっとだけど」と言われて。
「うん。いいよ」と、即答した。
そんな、良く分からない会話をしてる内に。
高瀬の表情が、ちょっと和らいできて。
「じゃあ、考えといて。オレとずっと居れるか」
「……? うん。居れるよ?」
「……ちゃんと考えといて」
「――――……??」
どうしてそんなに何度も確認するんだろう。
オレは、高瀬が、オレと居たいって思ってくれる限りは、ずっとちゃんと、友達で居るよ。
オレが、好きすぎて、もしかして、ちょっと、辛くても。
高瀬と友達で居られなくなるの、嫌だもん。
だから、高瀬が辛い時はずっと居るし、
ずっと、友達で、高瀬と居るんだからね。
そんな風に思いながら、まっすぐに、高瀬を見つめると。
やっと、何だか普通に、ふわ、と笑ってくれた。
92
お気に入りに追加
1,488
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる