上 下
25 / 235
第1章

◇深夜*圭

しおりを挟む


 ふ、と目が覚めた。
 少しの間、記憶を探す。

 ……そか――――……今日も、高瀬んちだ……。

 入社して3か月。
 最初の1ヶ月は同期達と飲む機会が多かったけど、その後は、チームだったり、指導の先輩達とだったり、部だったり、また同期だったり。

 昨日も飲み会だった。
 ほんと会社って、飲み会多いなぁ……。
 楽しいし、好きだから良いけど。
 ――――……それ、ほとんど全部、高瀬、居るし。

 しかも途中から、飲み会の後は高瀬んちに来る事が多くて。
 ちょっと食事がてら飲むのとは違って、飲み会となるとやっぱり金曜が多いから、そのまま土曜も一緒に過ごす事がほとんど。

 高瀬と過ごすかもしれないからって、もう、土曜は予定を入れないようにしてしまった位、ここ最近は、高瀬と居る事が多い。


 ――――……いいのかな、こんなに、なんか、高瀬とずっと居て。

 高瀬からいつも、今日泊まりに来る? 明日は空いてる? と聞いてくれるし。いつもだけど良いの?と聞くと、嫌なら誘ってないよっていつも言うから、それはそれでいいのかなって思うんだけど……。

 こんなにずっと、高瀬と過ごしてて、いいのかな。
 ……彼女は居ないって言ってるから、まだ、大丈夫なのかな……。

 なんて、いつも、気になってしまうけど。


 泊りに来ると、高瀬のベッドの隣に、布団を敷いてくれる。

 ゆっくり、顔をベッドの方に向けると。

 高瀬がちょうどこっちを向いて、寝ていて。
 片手がこっちに向かって少し落ちていた。



 ――――……寝てても、カッコイイなあ。高瀬。 
 ……手。触りたい。オレが少し手を伸ばしたら、繫げる。


 ……いやいや。無理。
 起きたらどうすんだ。

 ……じゃなくて。
 ――――……手に触りたいとか。絶対おかしいでしょ……。


 はー……。
 ……高瀬が好き。

 好き過ぎて、ほんと、どうしよう。


 ――――……オレの好きの意味を、高瀬が知ったら。
 オレとは、一緒に居てくれない、よな……。


 自分で勝手に思って、ぐっと切なくなる。


 ――――……高瀬が好き。
 一目惚れした時の、何倍も、もう好きになってて。

 好きな女の子が出来るまでなんて言ってたけど、このままじゃ、女の子が入ってくる心の隙間なんて、1ミリもないしなー……。

 そもそも、同じ職場に、しかも同じチームの席が隣になっちゃうとか、オレってば、運が良いのか、悪いのかが、正直、分からない。
 
 高瀬と一緒なのは、もう、すごく嬉しいから……運がいいと言えると思うんだけど。……諦めるには、側に居ない方がいいから、そこから言うと、もう、運が悪いとしか、言いようがない。



 毎日毎日、大好きって思ってしまう。

 ――――……たまに思うんだけど。落ち着けって。

 かっこいいし、仕事出来るし、優しいし。
 ……でも男なんだから、好き好きばっかり思ってないで、ちょっと落ち着けよ、オレ。て、自分に言い聞かせているんだけど。

 ――――……全然、落ち着いてくれない。


 好きって思おうとしてるんじゃなくて。

 優しい言葉が来るたびに。
 優しい視線が向けられるたびに。

 ……なんなら、姿が目に入るだけで。
 
 胸が、どきん、として。
 勝手に、思い知る感じ、だし。


 なのに、こんなに、週末一緒に居ちゃうと。
 想いは募るばかりで。

 もう、忘れられる気がしなくて。
 ちょっと最近、困ってる。


 困りながらも好きで、一緒に居ると、浮かれてる。
 でも、離れると、恋しすぎて、でもこんなのダメだと分かってるから、また困るし。


「――――……」


 高瀬、好き。
 ――――……でも困る。



 キレイな顔。
 ――――……ほんと、何でこんなにカッコいいかな。


 高瀬の部屋。
 黒が基調で、統一されてて、キレイ。オシャレ。

 水周りとかもいつでもキレイ。
 まとめて掃除するの?と聞いたら、ふと気づいた時に、ささっと掃除するらしい。

 全部、適度に整ってて。
 スーツ着てる時の、ちゃんとした高瀬のイメージ、そのまんまの部屋。

 居心地よくて、
 部屋に居るだけでも、高瀬の事が好きって、思う。


 ――――……ダメだ。

 好きしか出てこない。
 嫌いなとこ、ないのかな、って、考えるんだけど、全然出てこない。



 もうほんとに。
 ――――……困る位。好きで。


 ほんと、どうしようかな……。




 そんな事を思いながら、高瀬の寝顔を見ていたら。
 またいつしか、眠りに、ついていた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

「短冊に秘めた願い事」

悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。 落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。  ……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。   残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。 なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。 あれ? デート中じゃないの?  高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡ 本編は4ページで完結。 その後、おまけの番外編があります♡

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

あなたのことが好きなのに

宇土為名
BL
高校2年生の江藤匡孝は通っている高校の国語教師・市倉に毎日のように好きだと言うが、市倉には相手にされない。だが匡孝が市倉に好きだと言うのにはある秘めた理由があった。 すべてのことが始まったあの春に、あの日に会わなかったなら──

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...