上 下
9 / 236
第1章

◇中身も好き*圭

しおりを挟む


「織田」

 高瀬に、後ろから、こそ、と話しかけられる。

「ん?」
「……どーする? 一緒に帰る? 残る?」
「あ……高瀬、帰るの?」
「ん、帰ろうかな」

 時計を見ると、20時過ぎ。もう2時間位は居たのか。

「オレも一緒に帰る」
「OK、いこ」

 皆に別れを告げて、2人で、桜の下を歩き出す。


「……楽しそうだったけど。 良かったのか?」
「うん。楽しかったけど。今日はもういいや」


 ――――……高瀬と、このキレイな桜並木、歩きたかったし。


「土日、ゆっくり休んで来いよな?」
「友達と遊ぶとか、飲みの予定があるんだけど……日曜は早く寝る!」

「ん。来週、また頑張ろうな」
「うん。またよろしく」

 頷いて、隣を歩いてる高瀬を、見上げる。

 見上げる、という位置にある、超カッコイイ顔が、すぐ、こっちを見て、優しく笑む。


「――――……」


 ……高瀬って。
 ……普通じゃない位、カッコいいんだから、そうやって、優しく笑うの、絶対やめた方がいいと思うけど。


「高瀬、女子に囲まれてたね」
「――――……別に女子だけじゃないけど」

 高瀬は、クスクス笑って、そう返してくる。


「高瀬ってさ、それだけカッコイイとさあ」
「は?」

「どんだけモテる??」
「……どんだけって――――……難しいなその質問」

「……毎日告白されちゃうとか」
「無いよ。なんだよそれ」

 高瀬に笑って見つめられて。
 一瞬、退く。


「……まあそれは冗談だけど……モテるだろうなーって思って」
「――――……つか、織田こそ、モテるだろ?」

「オレ? うーん。学生ん時は、彼女居ない時期、無かったかもしれないけど……高瀬がモテるのとはレベルが違う気がする……」
「――――……オレがモテるかどうかなんて、まだ分かんなくねえ?」
「いや、分かるでしょ……」

 今日この花見だけだって、モテてるの分かるし。ていうか、何なら、新人研修、女の先輩だと、すっげー高瀬に近い気がするし?

 ……ていうか、オレも。
 ――――……すべての常識飛び越えて、一目惚れしちゃったしなあ……。

 ……オレにモテても困ると思うけど。
 ……はー。


「……どした?」

 急に黙ったオレは、少し背をかがめた高瀬に、顔をのぞき込まれる。
 また、優しい瞳。


「な……っんでもない」
「――――……」


 動揺しながらそう言うと。
 高瀬が一瞬黙って。それからまた、ふ、と笑う。

「……顔、赤いけど、織田」
「……ライトアップのせい」

「じゃ、オレも赤い?」
「……赤いかも」

「……顔見てねーけど?」


 クスクス笑いながらも、優しい声で言う高瀬に。
 めちゃくちゃときめきつつ。

 綺麗な桜を、見上げた。


 ――――……高瀬が、見た目だけの男、だったらなあ……。

 究極カッコいいと思うけど、実際関わったら、ちょっと嫌な奴だった、とか。冷たかった、とか。合わなかった、とか。
 そう言う事があったら、オレ、こんな感情すぐ放棄できたのになあ……。


 今となっては、中身の方が好きかもしれない。


「――――……」



 高瀬と歩いてると。
 余計。

 桜。 綺麗に見える。って。
 ――――……ほんとやばいなあ。オレ。


 ……高瀬が優しすぎるから、だめなんだと思うぞ。

 隣で、楽しそうに笑ってる、高瀬を。

 ちょっと、恨めし気に見てしまうけど。
 それも少ししか続かず。



 2人で歩くの、楽しすぎて。


 ずっとこの道が続けばいいのになー、なんて。
 思った。









しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

【キスの意味なんて、知らない】

悠里
BL
大学生 同居中。 一緒に居ると穏やかで、幸せ。 友達だけど、何故か触れるだけのキスを何度もする。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...