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第11話◇嫌いなとこ

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 雅己が可愛く見える。
 やばい。

 何をしていても、何を言ってても。
 可愛く見えてしまう。


 部活で、疲れたーと、床に倒れ込んで、はー、と息を付いてる雅己にドキドキして、目を逸らしてしまう。


 これはヤバいと、告白された子と付き合い始めた。

 めちゃくちゃ束縛の激しいというか、常に一緒に居たがる子で。せっせとお弁当を作ってきて昼休み一緒に食べたり、休み時間のたびに遊びにきたり。部活も覗きに来たりして、一緒に帰りたがる。

 普段なら、ちょっとうんざりするレベルだったけれど、でも今はむしろ、雅己と居ない口実になると思い、そこまで嫌でもなかった。


 雅己は何も聞いては来なかったけれど、彼女がオレの所にいると、教室に来てもそのまま声もかけずに帰って行くし、別のその後、何かを言うこともないし。

 ……まあ大体にして、雅己の用事なんて、そんなに大したことでもないから。
 来なくても、お互い困らない。


 ただ。
 ……とてつもなく、寂しいだけ。


 彼女は、顔可愛いし。
 ――――……一生懸命で、可愛いし。
 待っててくれて、健気だし。可愛いし。

 イイ子、なんやけど――――……。





 部活の後半。今日は、3分交代の、ミニゲームを連続。
 何ゲームかして、今休憩の番。

 雅己が、コートの端で、立てた膝に頭を垂れていて。
 珍しい。この位の走りで。


「どした? バてたか?」

 隣に座って、話しかける。

「…ああ。啓介――――…」
「…どした? 元気ないか?」


「――――……オレ、お前の嫌いなとこ、見つけた」
「…………え?」


「――――…お前って、友達より女なんだな…」
「――――まさみ…?」


「――――………も、いい」


 ぷい、とそっぽを向かれ。
 すぐに、3分休憩が終わり、自分たちの番。


 雅己は、振り返らずに、コートに入っていく。



 胸が。
 痛すぎる。

 痛いのか。
 ――――………撃ち抜かれたというか。






月日が流れて♡
+++++


「もー、啓介なんか嫌い!」


 そんな風に言われて、「嫌い」という言葉に、思い出した。



 結局あのあとすぐ、雅己に謝った。

 オレもお前と居たかった、とか。
 言うたら、許してもらえたけれど。
 
 あの子とは、あの後すぐ別れたんやったな……。
 結局、昼や休み時間は、また雅己とすごす事になって。


 きらいなとこ…か。
 可愛かったなあ、あん時。
 

 そんな風に思っていたら。
 雅己が、ひょこ、とのぞき込んできた。


「啓介?」
「ん?なんや?」


「……嫌いっていったから、黙ってんの?」
「――――…ああ、ちゃうよ」



 勘違いして、心配になってきたらしい。



「……雅己、今、オレに嫌いなとこ、ある?」
「――――……別にない」

「え。ないん?」
「……お前はあんの?」

「オレはないけど――――……雅己がないっていうとは思わんかった」

 ぎゅーと、抱き締める。


「あ、そういう、すぐくっついてくるとこは、ちょっとやだ」
「――――……またまた。好きなくせになぁ?」

 クスクス笑うオレに、雅己は、むー、と顔をしかめた。

 ちゅ、と口づけてると。
 すぐ、しかめ面が戻って。 まあいっかと、笑む。



 かわえぇ。
 よしよしと、撫でると。


「その子供にやるみたいなのはやめろ」


 と、笑ってる。




 オレ、嫌いなとこ、ほんまないなー…。
 ほんまに、昔も今も、可愛ぇな…。









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