「短冊に秘めた願い事」

悠里

文字の大きさ
上 下
16 / 17
番外編

「おとまり」10

しおりを挟む


 魁星と、おばさんと成哉とオレと四人で食べ始めた。
 おじさんは今日は飲み会らしい。


「……朔、自分の前に肉確保すんな」
「えっ。だって、これ、オレが食べたいしー」

「わかるー、朔ちゃん、このお肉はオレのね。そっち朔ちゃんのでいいよ」

 成哉が笑いながら言う。

「ほら、成哉もこう言ってるし」
「幼稚園児と同じこと言うな」

 魁星はクスクス笑って、オレを見る。

「そうだけどー」
「ほら、こっち焼けた」

 ぽいぽいと、魁星が肉をたれの中に入れてくれる。

「わーありがと」

「ずるいぞ、兄ちゃん、朔ちゃんばっかり!」
「朔ばっかりじゃないだろ、成哉も食え」


 おばさんは特に何も言わず、ちょっと笑いながら、缶ビール中。
 大分いい感じに赤くなってるなぁ、と思いつつ。

 魁星と成哉とオレで、肉をたらふく食べていると。
 おばさんのスマホが鳴り出した。

「あ。朔のママだよ。もしもしー? 直美ー? んー、今焼肉中だよ」

 なんとなく電話してるので、オレ達三人、あまりしゃべらず、ただ肉を食べてると。


 なんだかおばさんが、あははは、と笑い出して、オレと魁星を眺める。

 ――――……??


「ねえ、朔のママがさぁ、聞いてるんだけど」

「?」

「多分酔っぱらってるよね、これ。まあ私も酔ってるし、聞いちゃうんだけど」


「??」

 なんだかちょっぴり嫌な予感がするのは、この二人がめちゃくちゃ楽しそうだとちょっと怖い印象があるから。


「なんだよ、早く言えよ」

 魁星も同じく嫌みたいで、ちょっと急かしている。



「攻め受けってやつ、どっち?」


「――――……」
「――――……」


「まあ聞かなくても、わかるっちゃわかるんだけど……」

 ねえ、と電話で母さんと話してる、おばさんに。

 オレと魁星は、顔を見合わせた。


「……マジで、どうかと思うんだよな、この酔っ払いたち……」
「そうだよね……認めてくれるのは嬉しいけど……」

「ほんと、さすがにどうかと思う……」
「うん……」


 なんとなく、聞きなれない言葉が、ちょっと恥ずかしくて赤くなりながら、魁星と眉をひそめて言い合っていると。


「何それー?? せめってなあにー?」

 無邪気で可愛い成哉の口からとんでもない言葉がでっかく、飛び出した。


「っ母さん!!」


 魁星が、珍しくおっきい声を出して、おばさんをまっすぐ見つめる。


「マジでやめて」

 低い声で言った魁星に、さすがに、酔っぱらっててもまずいかなと思ったのか、苦笑いしつつ。「もー、照れた息子にめっちゃ怒られちゃったじゃんー」とか電話で言いながら、リビングを出て行った。


「成哉、今のは酔っ払いのアホ発言だから。忘れていいぞ」
「えーそうなのー?」

「そ。成哉の肉、焼けそうだよ、ひっくり返して」
「あ、ほんと?」

「ウインナー食べるか?」
「食べる食べる」

「何本?」
「えっとねー、えっとー……五本!」

「食いすぎ」
「じゃあ三本ー!」

「……まあいっか。食え食え」

 さっきのは忘れろとばかりに、魁星が成哉にウインナーと肉を与えているのを見ながら、ほんとに、うちの母親たちは、はーやれやれ……と、ため息をつきそうな気持ちだけど。


 攻めと受けって……。
 もー、信じられない。
 あんな風に受け入れるのもおかしいけど、こんなこと聞く親って、居るのかな??


 もーほんと……。
 オレは、未来永劫、絶対酔っぱらわないようにしよう。
 と誓った。

 ……とか言ったけど。



 ……攻めと受けかぁ……。

 …………? 

 もちろん、なんとなくは、分かるんだけど。
 予想って範囲でしか、分からないかも……。


 チューしてくれる魁星が、攻め、かなあ……???
 オレがしたら、またそれも攻め???


 あとで魁星に聞いてみよっと。





(2022/9/14)
おとまり編は次で終わりです(^^♪
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった

碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。 壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。 白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。 壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。 男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。 だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。 ノンケ(?)攻め×女装健気受け。 三万文字程度で終わる短編です。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

突然現れたアイドルを家に匿うことになりました

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 「俺を匿ってくれ」と平凡な日向の前に突然現れた人気アイドル凪沢優貴。そこから凪沢と二人で日向のマンションに暮らすことになる。凪沢は日向に好意を抱いているようで——。 凪沢優貴(20)人気アイドル。 日向影虎(20)平凡。工場作業員。 高埜(21)日向の同僚。 久遠(22)凪沢主演の映画の共演者。

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

総長の彼氏が俺にだけ優しい

桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、 関東で最強の暴走族の総長。 みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。 そんな日常を描いた話である。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

処理中です...