「短冊に秘めた願い事」

悠里

文字の大きさ
上 下
12 / 17
番外編

「おとまり」6

しおりを挟む


「お邪魔しまーす」

 魁星にくっついて、家に一緒に入って、靴を脱ぐ。

「今皆出てるから、居ないよ」
「いつ帰ってくるの?」

「夕方。五時過ぎ位って言ってた」

 通りかかったリビングの時計を見て、あと一時間位はあるんだな。
 ……どきどきどき。


 一時間も、魁星と、二人きり。
 めちゃくちゃドキドキする。

 すると、魁星はリビングの奥のキッチンに向かった。


「おやつ、何食べたい?」
「んー……何がある?」

「一通り色々あるけど。スナックとか、チョコとか。アイスもあるし」
「じゃ、アイスが食べたいな」

「ん。どれがいい? 選びな」
「うん」

 一緒に冷凍庫の前にしゃがんで、アイスを覗き込む。

「バニラがいいな」
「ん。オレもこれ。スプーンも持って? オレ麦茶入れる」
「うん」

 言われるまま、引き出しからスプーンをふたつ。
 アイスと一緒に持って待っていると、魁星が麦茶を入れたコップを持つ。


「部屋で食べる?」
「うん」

 魁星の部屋に入ると、クーラーをつけて、窓を閉めた。


「待ってたのに全然来ないし、スマホも出ないし。絶対寝てると思ったんだよな」

 クスクス笑いながら、魁星がローテーブルに座った。オレも、その向かい側に座ろうとしたら。

「朔、こっち」

 腕を引かれて、隣に座らされる。

「――――……」

 あんまりに近い事を認識した瞬間、かあっと顔が赤くなる。
 それを見た魁星が、またちょっと驚いた顔をしてから、クスクス笑う。


「お前って……今まで、オレの横、どうやって居たの?」
「……?」
「赤くなったりしたことなかったじゃん」
「……」

「どうやって我慢してたの?」

 クスクス笑いながら、そんな答えにくい質問をしながら、魁星はアイスの蓋を開けた。

「ほら。食べな」
 開けたそっちをオレに渡して、もう一個、自分のも開けてる。

「ありがと……」

 言いながら、一口、ぱく。
 ――――……顔が赤くなってると、口の中まで熱くなんのかな。

 アイスが冷たくて、気持ち良い。

「オレら、今までもずっと隣に居たよな?」
「うん、居たけど」

「まあ今のこの状態で、二人なのに隣には座らなかったとは思うけど」

 魁星が面白そうにオレを見る。


「この位の距離感、今までもあったと思うんだけど」
「……友達が居て、魁星が隣に居たことは、あったけどさ」
「うん」
「ふたりきり、だし……でも一番違うのは……」
「ん?」

「――――……魁星が、違う」

 オレが、一生懸命出した言葉に、魁星は、ぷ、と笑った。


「何、オレが違うって」
「だって……魁星が、オレのこと、好きとか、言って」
「うん」
「それで近くに居てくれてる、って……思うから」
「――――……」

「だからさ、同じ感じで、側に居ても、全然違くて……」
「……そんで、ドキドキして真っ赤になっちゃうのか?」
「そう」

「ふーん……」

 ふーん、て……。
 魁星の方を見ると。

 すぐ近くの魁星は、なんだかすごく優しく笑ってて。
 また、ドキッとしてしまう。

「――――……」


 何も言えなくなってると。
 魁星は、オレの頭に触れて、よしよし、と撫でた。


「朔」
「……」



「マジで、可愛い」


 むぎゅー、と抱き締められる。



「――――……っ」




 ドキドキで、死ぬかも……。  






しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-

悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」 「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」  告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。  4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。  その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。

雪は静かに降りつもる

レエ
BL
満は小学生の時、同じクラスの純に恋した。あまり接点がなかったうえに、純の転校で会えなくなったが、高校で戻ってきてくれた。純は同じ小学校の誰かを探しているようだった。

【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。 「たまに会う」から「気になる」 「気になる」から「好き?」から……。  成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。  楽しんで頂けますように♡

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした

月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。 人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。 高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。 一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。 はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。 次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。 ――僕は、敦貴が好きなんだ。 自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。 エブリスタ様にも掲載しています(完結済) エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。 『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

処理中です...