上 下
808 / 822
◇ライブ準備

「むしろ元気って」*優月

しおりを挟む


 玲央は少し不思議そうにしてたけど、なんだか嬉しそうに微笑むと、キスが降ってきて、しばらく続いちゃって、そのままぎゅー、と抱き締められた。とくに聞かれなかったので、玲央が綺麗っていうのの説明はしなかった。何回か綺麗って口走ってる気もするから、なんとなく受け止めてくれたみたいな気がする。
 ほんとに。真っ直ぐで綺麗だなって。思う。

 しばらく玲央の腕の中に居て、それから、身支度整えて、外に出た。
 昼過ぎ。太陽は高くて、明るい。駅の方に向かうと人がめちゃくちゃ多くて、玲央がオレの手首をそっと掴んだまま歩いてくれてる。
 なんか、朝まで希生さんちに居て、今までホテルに居て、抱き合ってて。
 出てきてもこんなにまだ明るくて、なんだかすごく不思議な感じ。

 ホテルで玲央がお店を検索してたから、多分そこに向かってるのだと思って、ついていってたのだけど。玲央がふとオレを振り返った。

「先食べよっか。カフェみたいなとこでもいい?」
「うん。そういえばお腹空いた」

 そう言うと、玲央はクスクス笑って、「運動したもんなー」なんて言ってくる。もう絶対からかって、わざとだなーと分かっているのだけど、かぁっと赤くなるオレ。だって思い出しちゃうし。ふ、とまた目を細めて、玲央が頬に触れる。

「すぐ赤くなる」
 楽しそうに笑いながら、そんな風に言う。だって、と思うんだけど、実際、文句は出ない。だって、玲央の顔、優しいから。

 通りがかりのカフェで足を止めて、玲央がオレの顔を見る。「メニュー見てみて。ここで良さそう?」と聞かれて、入り口に置いてあるメニューを確認して、頷く。少し並んで入った店内は。

「オシャレだねー」
 白いテーブルに、白い椅子。荷物を置くカゴすら可愛い。
 ……オシャレっていうより、すごく可愛い感じ。男二人で入る感じじゃないかも。と思って周りを見ると、やっぱり女の子ばかり。
 女の子は目ざとくて、玲央をチラチラ見てる子たちがすでに居る。

「ちょっと可愛すぎた?」
 玲央がクスッと笑ってそんな風に言う。

「ここまっすぐ行ったとこに、行きたい店があるからさ」
「うん。いいよ、ここで」

 サンドイッチとコーヒーを頼んで、お冷を口にする。

「優月、疲れてないか?」

 疲れ?……疲れるようなこと。いっぱいしたもんね……。
 …………っ返事を返すよりも、顔に熱が。

「ライブ行くのに、あんま手加減しなくてごめんな」

 手加減しなくて……。たしかに手加減無しで、なんかいっぱいされたような。……でも、時間的には短かったから、まだだいじょうぶ……とか言うのもちょっと恥ずかしい。

「……玲央は、疲れて、ないの??」
 
 顔は熱いけど、でもむしろ、オレはより、動いてるの玲央だし。……って、動いてるのって恥ずかしいから言えないけど、でも、どっちかというと、疲れてるのは玲央なんじゃと思って、聞いてみると。

「全然」
 けろっとして言う玲央。

「むしろ、元気になったというか? ていうかむしろ、足りないかな」
「――――……」

 ダメだ。
 ぼぼぼぼぼ。

 むしろ元気にっていうのもなんかおかしいし、足りないって言われるのも……! なんかもう、さっきの自分とか、熱っぽくてやらしい顔してる玲央が、頭の中によみがえってきてしまって、もう、無理。
 テーブルに肘をついて、両頬を挟んで俯く。




 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

処理中です...