上 下
785 / 822
◇希生さんちへ

「入れ替わりとか」*玲央

しおりを挟む


「こうして話してて」
「ん?」

「三年後も絶対続いてると思ってる玲央が、不思議だ」
「……ん??」
「未来のことなんか分からないって、平気で言いそうだったのにな、お前」
「――――……」

「三年後、既成事実が出来てると思って、話してるよな」
「……まあ。そう、だね。そう思って、話してた」

「それ自体、すごい変化だろ。考え方も、大分変ったよな」


 そう言いながら、ニヤ、と笑うじいちゃんを見て、なるほど、なんて、納得してしまった。

 確かに、優月と会う前のオレは。三年も先の未来なんて、不確か過ぎて、友人関係ならまだしも、誰かとのそういう関係が続くなんて。
 ……思ったこと無かったかも。


「……別れる未来とか、考えてなかったかも」

 ぼそ、と呟くと。じいちゃんは、ものすごいニヤニヤしてから。


「優月くんもそうだといいな?」
「……そうだと思う」
「自意識過剰じゃないといいけどな」
「ない。少なくとも今は、絶対ないし。……別れたいとか思わせないように頑張るし」
「……あれだな、玲央」
「?」

「今日何度も思ったんだけど」
「何を?」
「中身、誰かと入れ替わったか?」
「――――……」


 つか、稔とかとおんなじこと言ってるぞ、じーちゃん。
 いいのか、それで。

 言いたかったけれど、飲み込んだ。
 倍くらい、色々返ってきそうだから。

 
「なんかあれだな……」
「ん?」
「……正直、じいちゃんが、言うようなことじゃないと思うけど、一応言って良いか」
「珍しい。言って良いかとか聞くなんて。何?」

 少し怖いけど。と思いながら言葉を待っていると。

「……優月くん、泣かせるなよ」
「――――……」

「ああいう子、泣かせるようなことは、するなよ」
「――――……」

「……後悔するのは、お前だと思うから、言っといた」
 
 そう言ってから、じいちゃんは、ぷは、と吹き出した。


「何言ってんだ、オレ」

 クックッと笑ってるじいちゃんに、オレは、大げさに、ふー、と息をついた。


「もうそれ、何人に言われてんだかって感じが。言われてなくても、全員思ってんじゃねーかなって、気がしてきた」

 ふ、と笑みが浮かんでしまう。

「まさかじーちゃんにまで言われるとは。ていうか、じいちゃん、優月のじいちゃんでもないじゃん」
「……まあそうだな、玲央が絶対後悔するだろうから、やめとけよっていう……まあ、あれだな、アドバイスというか、忠告だな」
「なんだよそれ」

 笑いながら言うじいちゃんに、オレも、つられて笑いながら。


「泣かせたくないの、オレが一番だっつの……」
「――――……まあ、そうか」

「喜んでもよく泣くからな、優月。それはいいけど……悲しくて泣かせるようなこと、オレ、デキないと思う。したら、ほんとに、後悔すると思うから。大丈夫。……言われなくても分かってるし。……つか、じーちゃんにまで言われるとか。もうマジで、笑う……」

 
 オレとじいちゃんが笑ってると、それに気づいた優月が振り返って、先生と顔を見合わせてから、二人でこっちに向かって歩いてくる。


「何か楽しいことあったの?」

 ワクワクした感じでオレを見上げる優月に、まあな、と頷いて、ぽんぽん、と頭をなでる。


「優月が一番好きな絵、教えて」
「え。一番?」

 急に変えた話題に、でも嬉しそうに笑ってオレを見つめてくる。

「さっきこれかなって思ってたけど他のも良く見えてきて、えーと一番……トップスリーでいい?? 三位まで」

 嬉しそうに言う優月に、いいよ、と笑う。


「それ見たら帰るから」

 オレがそう言うと、じいちゃんと先生は二人笑って頷いて、部屋を出て行った。







(2024/4/13)
次、蒼くんの予定です💖

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

処理中です...