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◇希生さんちへ

「感覚」

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 オレの視線に気づいたじいちゃんが、オレとまっすぐ視線を合わせた。

「……珍しい子、だよな」
「――――」

 珍しい子。
 その意味をじいちゃんが話すのを待って、黙っていると。じいちゃんはまた優月の方に視線を向ける。

「ぱっと見は柔らかくて優しすぎる感じかなと思えば、凛として折れないものがある気がするし。……でも強い訳じゃなくて、なんだか、すごく珍しい」
「――――」

「正直、蒼も玲央も、大分ひねくれてるというか、素直じゃないとこがあるだろ。強いだけの奴は無理だし、優しすぎても物足りないんだろうし、結構難しいと思う部分があるのに――――優月くんには、二人そろって、甘すぎるとか」

 はは、と可笑しそうに笑って、じいちゃんがオレを見てくる。

「……いい子だと思うよ。まっすぐで、気持ちいい。どこにでもいそうな気がするのに、一緒に居ると、なんだか特別な気がしてくる。……本当に、珍しい子だなーと思う」

 オレは、瞬きを何度かして、優月を見たままのじいちゃんに少し目を向ける。

 じいちゃんの、人を見る目は、すごいらしい。
 たくさんの人と事業をしてきてる、じいちゃんが信じる人達は、皆色んな面ですごいらしくて、そういうことを、他の人がじいちゃんに言ってるのを、子供の頃から何度も聞いてきてる。オレは仕事の場で一緒にいたことは無いから、実感したことはないから「すごい」としか分からないけど。
 でもたまに学校とかに遊びにきて、そこで会うオレの友達のこと、ほんの短い時間のやりとりでも、どんな奴かとか、どういうことを言いそう、とか、すぐ当てる。

 そういうじいちゃんが、優月のことを今日見ていて、今言ってること。
 今言われたことも、何の反論もない。


「良い子では、あるけどな」

 ……あるけどな?
 何だか少し気になる言い方で言葉をいったん締めて、オレを見つめる。


 あるけどなって、なんだよ。と、心に浮かぶ言葉。
 多分オレ、少し、む、としたんだと思う。するとオレを見て、じいちゃんが、ニヤリと笑った。


「お前はあの子の、どこに、そういう意味で、惚れたんだ?」
「――――」

「良い子なのと、恋人にするっていうのは、別の話だろ」

 そんな風に言われて、何度か瞬きをする。

 ……まあ確かに。
 言われたことの意味は分かる。

 優月は良い奴。でも、別に、他にも良い奴は居るかも。もし良い奴がいたとしても、それを皆、恋人にしたいと思う訳じゃない。

 そういう意味で、どこに惚れたか??

 少しの間、黙って考えているオレに、じいちゃんの、面白そうな視線が飛んできているのを感じる。



「……もう、感覚かも」
「感覚?」

「理屈じゃ言えない」

 オレは、そこで、じいちゃんを見据えた。


「優月の側に居たい。触れてたいって思う。この先、優月が生きてくその隣に、ずっと居たいって――――……そんな感覚」


 そう言いきったら、じいちゃんは、ほー、と変な声を出して、顎に手をかけて、しばし無言で、何やら小さく頷いている。


「それじゃダメ?」

 そう聞くと、じいちゃんは、顎に触れたまま、いや、と微笑した。 


 


◇ ◇ ◇ ◇


(2024/4/8)


なんか今日この短時間、すっごく色んなのひょいひょい書けたような。
そろそろお昼食べて午後のお仕事いってきまーす♡(後で消します(笑))
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