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◇希生さんちへ
「好き」*優月
しおりを挟むオレ、こんな感じじゃ無かったのに。
……玲央とするうちに、どんどん……。
うーんうーんうーん。
……別にそれが嫌な訳じゃない。
玲央が好きだし。玲央としたいってことは、健全だと思うし。
でもでも、玲央が全然意識してない時に、オレの方がそんなことばっかり意識しちゃってるのは、なんかどうなのって思うんだよう。
「入っていいか?」
「うん。どうぞ……」
すすす、とずれて、広いお風呂なのだけど、結構な端まで寄る。
玲央が中に入って、自然とふー、と息をついた。
「広いと気持ちいいな」
「ん……」
こくこくこくと、頷く。……カッコよすぎて困る。……カッコよいっていうか。……好きすぎて。困るというのかな。
世にカッコいい人はたくさんたくさんいると思うけれど。
……玲央のこと、大好きすぎて。
……わーん、もう。好き……。
ドキドキしちゃうんだよね、もう。ほんと、のぼせる……。
「あんまり沈みすぎてると、のぼせるぞ」
「ん」
こくこくこく。
埋まったまま、頷いていると、オレを見ていた玲央が、少し首を傾げてから、ふ、と笑った。
「おいで」
「え」
くいっと引かれて、引き寄せられてしまう。
ぎゅ、と抱き締められて、わぁぁ、と焦る。
「優月」
「――――……っ??」
「よくわかんねーけど」
「……っ」
「変なこと、しないから」
クスクス笑う玲央に、よしよし、と頭を撫でられる。
「警戒しなくていいよ」
強張ったまま玲央の腕の中に居たオレは、あやすみたいによしよしされて、見つめられる。
「――――……」
うう。
……なんかもう、ほんとにもう、玲央。
「好き」
「――――……ん?」
くす、と玲央が笑う。
「……違うの」
「ん? 何が?」
顔を覗き込んでくる玲央の顔が優しくて。
……うう。
「あの……してほしくないんじゃなくて」
「ん」
不思議そうな顔。
「……してほしいなって、思っちゃってるの。こんなとこなのに」
ぷしゅうーーーと湯気が出そうな。ていうかもうほんとに出てる気すらする。お湯に埋まりすぎててのぼせてるし、恥ずかしすぎること言ってるし。
「分かってる、希生さんちだから無いって……でも、玲央が好きで」
うう。何言ってんだろ、オレ。無いんだから言っちゃだめだし。わー、恥ずかしいー。
ぎゅうう、と玲央にしがみついて、顔を見られないように隠れてると。
少しの間玲央から返事が無くて。
「……?」
玲央? と思った瞬間。
はー、とため息をついた玲央。えっと、固まるオレ。
「――――……っ」
わーわー、ため息つかれたー。
「ご、ごめん。へんなこと、いって」
離れようとした瞬間。
むぎゅ、と抱き締められた。
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