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◇希生さんちへ
「居心地」*優月
しおりを挟む希生さんが、何だかとても豪華な感じのドアを開けてくれて、中に入ると、広い玄関。うわぁ、と高い天井を見上げる。光がよく入るようになってて、すごく明るい。
んーと……? 何足、置けるかなあ、この玄関……なんて思いながら靴を脱いで、スリッパをはいた。
少し進んだところに、蒼くんの個展で希生さんが買った、空の写真。
「あ」
思わず笑顔になってしまうと、希生さんと蒼くんがオレを見るので、オレもまた見つめ返した。
「すごい。こんな広くて綺麗なところに飾られて――――すごく素敵、ですね」
白い壁に青空の写真。
本当に、素敵だな。そう思いながら言うと、蒼くんが笑った。
「オレもさっきそう思った」
「ん……」
うんうん、と頷く。
なんかこれを見れただけでも来れて良かった、なんて思ってしまった。
あっ、あと、玲央の鯉も……。あっあと、めちゃくちゃでっかい鯉たちも……。とかなんか色々思っていると、こっちだよ、と希生さんに言われる。
「あ、はい」
返事をした時、玲央がオレの隣に並んだ。
「なんとなくここに飾られてるかなーと思ってた」
言いながら写真を見上げてる玲央を、オレも見つめる。
……微笑んでる玲央の顔が、綺麗に見えて。
すごく好き。
なんて思いながら。
「玲央」
「ん?」
「……オレ、なんかね?」
「うん」
「もう来て良かったなーって思ってる」
「……そうなのか?」
クスッと笑って、オレを見つめる。
――――……白くて明るい空間で、蒼くんの青空の写真と並んで、玲央がオレの視界に入ってて。
いつでも玲央は、素敵だけど。
なんかますます、素敵で、尊いものを見てる気分。
なんだかすごく気恥ずかしくて、どう言ったらいいか良く分からないけど。
多分、今オレを見てくれているこの視線は、オレが好きって思ってるのも、なんとなく分かってくれてるような気がして、ふ、と笑って見つめ合う。
「玲央と一緒に育った鯉も見れたし、すっごく幸せ」
そう言うと、玲央も、そう? とクスクス笑う。
「一緒に育った訳じゃないけどな」
可笑しそうに笑いながら、玲央の手がオレの頭をポンポンと優しく撫でる。
「あ、優月、手洗うとこ、こっち」
「あ、うん」
玲央について洗面所へ。
……ホテルみたい。
広々としてて明るい。鏡、めちゃくちゃ大きくて綺麗。手を洗って、ふかふかすぎなタオルで手を拭く。
「なんかこのお家」
「うん?」
玲央も手を洗いながら、鏡越しにオレを見る。
「全部明るくて、すごく綺麗」
「……まあ、そうだな」
くす、と笑われて、あれ、見たまんますぎたかなと思っていたら。
「居心地よくて好きだったから……優月も気に入ると嬉しいな。……ってまあ、ここはじーちゃんちであって、オレんちじゃないけど」
手を拭きながら、オレを見て笑う玲央に、あ、と突然納得。
玲央のマンションの部屋。
なんか似てるかも。
広くて明るくて。すごく、居心地がいい。自然とそういうのを選んだのかな?
似てるって、そう言ったら何て言うのかなあ……と思って、ふふ、と笑いながら。
まだ玄関と洗面所しか見てないから、言うのは後にしよ。
「優月、部屋にいこ」
「うん」
背中に優しく触れてくれる玲央の手を愛しく思いながら、並んで歩き出した。
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