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◇同居までのetc

「何してても」*玲央

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 綺麗に並べた刺身と、酢飯と海苔とをテーブルに並べて、二人で座る。

「いただきます」
 そう言って、海苔にご飯と刺身、くるくる巻いて、優月が嬉しそう。

「なんかもう子供じゃないけど……」
「ん?」
「やっぱり手巻きは嬉しい食べ物みたい」

 そんな風に言って、嬉しそうなの、ほんと可愛いなと思う。オレだとなんとも思わずに普通に過ごしてしまいそうなことを、嬉しいって幸せそうにしてんのが新鮮すぎて、可愛いし。
 なんとなく、優月がずっとこんな風に生きていけたらいいなと思う。で、その側に居られたら。多分、優月が居ない未来より、オレは幸せな気がする。

「なら良かった」
 つか、なんかオレ、今、また歌詞につながりそうなこと考えてたな、と思って、笑ってしまいながら答えると、優月がオレをじっと見つめる。

「玲央は手巻き寿司、してこなかった?」
「だな。刺身で食べるか、店で食べるか……食べたことはあるよ」
「そうなんだ」
「お好み焼き食べてないのと、同じ理由かも」

 そんな風に皆で囲むような食卓ではなかったし、と思ってると。
 優月は、ふふ、と笑う。

「ん?」
「玲央が、手巻き寿司パーティする? って聞いてくれたのが、なんか嬉しかった」

 ああ、それね。と、苦笑が浮かんでしまう。
 優月は、パーティーっぽい時に、手巻き寿司を食べたって言ってただけで。別に「手巻き寿司パーティー」をしたって言ってた訳じゃなかったのに。
 確かに。自分でも何言ってんだとは思ったんだよな。

「なんか勝手に口から出た」
「ふふ」
 うんうん、と頷いて、優月は笑う。

「ねね、玲央、お店の手巻き寿司ってさ、すごく綺麗だよね」
「そうかもな」
「双子たちとさ、誰が綺麗な手巻き寿司を作れるか大会をしてたんだけどさ」
「何それ」
「え」
 聞いた瞬間、ぷ、と笑ってしまうと、優月は「変だった?」と照れ笑いを浮かべている。

「いや、面白いからいいけど」
「面白いって言われてる……」

 優月もクスクス笑いながら、オレを見つめてくる。

「父さんと母さんにね、皆で作ってあげるの。で、どうぞってして、誰が上手に綺麗に巻けたか判定してもらうんだよね」
「誰が勝つの?」
「樹里かなあ。なんかオレと一樹はいい勝負というか……」

 むー、と優月が口をとがらせているのが、可愛いなとか思いつつ。
 話を聞きながら、海苔にご飯をのせて、綺麗にか、と考えてみる。

「なんか、お店のを思い出しながら、形とかは綺麗にするんだけど、なんでか違うんだよね。ああいう風に、綺麗にはならなくて。美味しいからいいんだけど」
「形っていうか、色を考えてみれば?」
「色?」
「優月、得意そうじゃん、色使いとか」
「そっか、色かぁ」

 んー、と刺身を見て、優月が考えてる。

「そっか。さっきお刺身置いた時と一緒かな。緑のものと、赤とか白とか巻けばいいのかな」
「かもな。店のってどんなだっけなぁ」

 あんまり綺麗とか考えずに食べてたな、と笑いながら、シソの葉とサーモンをのせて、いくらを少しのせてみる。

「こんなふうなのは? 丼とかにこんな感じでのってるよな?」
「ん?」

 オレの手元を見た優月は、見た瞬間、目を大きくしてキラキラ笑顔で嬉しそうな顔になる。

「すっごくイイ~綺麗」
「ん」
「そっか、シソとか巻いてあるかもね、お店の。ていうか、いくらが可愛い、それ」
「まあこれ、なんかこういう感じの見たことあるって感じだけど」
「んー、美味しそう」

 じっと見つめられるので、ふ、と笑ってしまいながら、少しだけ醤油をつけて、優月の口元へ。

「ん」
 ぱく、と嬉しそうに食いついて、モグモグしてるのが。
 ……ああ、も、可愛いよな。

 つか、「誰が綺麗な手巻きずしを作れるか大会」ってなんだ? とも思って笑ってしまったのだけれど。優月と双子たちが楽しそうに巻いてる姿が容易に想像できると、なんかもう、全員可愛い。

「オレ、次の大会出たら、勝つかも。お刺身も上手に並べられそうだし。今度帰る時、手巻き寿司にしてもらおうっと」

 そんな事を言いながら、残りの手巻き寿司をオレの手から、ぱく、と食べる。
 次の大会って何、と笑ってしまいながらも。

「じゃあその大会、オレも出ようかな」
 クスクス笑いながらそう言ったら、「玲央はダメ」と断られる。

「なんで?」
「えー、なんか負けちゃいそうだから」

 ふふ、と笑って、優月はオレを見つめる。

「嘘。……ていうか、うちの大会、出てくれる気あるの?」
「あるけど?」

「そっちが嬉しい」

 心底嬉しそうに笑う優月に、こっちのが嬉しいけど、と思いつつ。
 ちゅ、と頬にキスすると、また優月の瞳が、めちゃくちゃ緩む。

 つーか何してても可愛い。
 オレ、変になってる? ……ま、いっか。

 




(2023/10/17)
※次、1ページだけ、番外編「金木犀」です。


後書き。

うわ、17日もあいてました👀
お久しぶりです。近況報告でつぶやいてますが、戻ります♡
またよろしくです。
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