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◇同居までのetc

「優しい気分」*玲央

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「優月、夕飯は? 食べたいものある?」
「んー……お腹は空いてるんだけど」
「昼は何食べた?」
「カフェのサンドイッチ。可愛い感じで少なかったの」
「あぁ、なるほど」

 カフェで話してたのか、と思いながら。

「どこのカフェ?」
「正門の方から少し歩いたところにあって……駐車場の方のカフェじゃないよ。玲央は? 何食べた?」
「んーなんだっけ……」
「あっ食べたもの忘れちゃうのヤバいよ、玲央さん」

 クスクス笑いながら優月が悪戯っぽく言ってくる。

「えーと……ああ、思いだした。エビフライ定食」
「エビフライ、いいね。好き」
「なんか今日のは二十食限定とか書いてあって。勇紀にノせられて食べた」
「え、なにか特別なの?」
「さあ? すこし大きかったような?」
「そうなんだ」

 優月は、面白そうにクスクス笑う。

「じゃあ何か……お肉かお魚にする?」
「作る?」
「うん、早いし、作ろ?」
「ん。どっちがいい? 新鮮な魚売ってる店、行く? 少し遠回りだけど」
「美味しそう。そんなとこあるんだ! お刺身もある?」
「刺身も売ってる。手巻き寿司とかする?」
「うんうん。わぁ夕飯が豪華になった」

 そんな風に言って、何やらキラキラした笑顔で喜んでいるので、オレも、微笑んでしまう。

「手巻き寿司って豪華?」
「うん、なんか……パーティーっぽい時にうちはよくやったから。豪華なイメージ」

 そう言ってから、優月は、うーんと考える。

「でもまあ、海苔にごはんのっけて、お刺身巻くだけなんだけどね。なんか豪華って思っちゃう」
 そう言ってから、あ、そうだ、と思い出しながら。

「なんか、ひな祭りとか子供の日とかによくやってた気がする。オレ達が巻いて喜んでただけかも。豪華っていうか、楽しかったイメージかな」

 クスクス笑う優月。
 優月と一樹と樹里が、楽しそうに色んなのを巻きながら食べてる姿が、容易に想像できて、笑ってしまう。
 すごく楽しそうにしてそうで、そんな姿を見るなら、お母さんもそりゃよくやるんじゃないのかなと、良く分からないお母さん目線で、想像してしまった自分がちょっと可笑しい。

「じゃあ決まり、な」
「うん」

 嬉しそう。
 その顔についつい。

「今度、二人呼んで、手巻き寿司パーティやろ」

 と言ってしまった。でも、言ってからふと。……何だそれ。手巻き寿司パーティって。
 自分の中から勝手に出てきた言葉に、自分でちょっとびっくりしていたら。
 優月が、キラキラした顔でオレを見上げてきてる気配。

「いいの?」

 いいのって、オレが言ったんだからいいには決まってるが、つか、オレ、ほんと手巻き寿司パーティって何、と思いながらも。

 嬉しそうにオレの返事を待ってる優月を一瞬見て、また前に視線を戻しながら、「いいよ」と答えると「嬉しい」と笑う優月。


「なんかさ」
「ん?」

「玲央がね、クロとかうちの子達とかに優しい顔すると、もう死にそうに好きって思っちゃう……」

 何やらちょっと困った顔でそんな風に言うのが可愛すぎる。

 もともと猫も犬も、子供も嫌いじゃないけど。

 なんだか自分でも不思議なくらい優しい気持ちになったり、自分でも不思議なことを、ぽろっと言ってしまったりするのは、絶対優月と居るからな気がする。

 別に嘘をついてるとか無理してるとかではなくて。
 ――――……ただ、優しい気持ちになってる、て感じ。



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