629 / 830
◇同居までのetc
「朝いち」*玲央
しおりを挟む翌朝。
「……」
腕の中の優月が、少し動いたので目が覚めた。
「ゆづき……?」
もぞもぞと動いてる優月を抱き締めなおすと、「ん……?」と優月の声。
今日は一緒に目覚めた感じ。
「おはよー、れお……」
あくび交じりにそう言ってから、腕の中からオレを見上げてきた。
「……玲央が寝に来たのって……何時だったの?」
「……三時過ぎてたかな。時計見なかった」
「……眠いよね? 寝てていいよ、オレ、先に学校行くから」
そう言って、起き上がろうとするのを引きとめて、抱き締める。
「いい。一緒に行くって言ったろ。オレんちに戻って、ガッコの用意も取りに行くし」
「そこまで遠くないし……今から行けば全然歩きでも行けるよ」
「いいから。一緒に行く。もう目ぇ覚めた」
「……でも」
「あと五分、こうしてて。そしたら起きる」
「……うん。ありがと……」
もう諦めたのか、優月はすっぽりオレの腕の中に落ち着いて、背中に手を回してくっついてきた。
「……今日は智也たちと夕飯だよな?」
「うん……あのね、美咲とご飯行くの、玲央とこうなってから、初めてでね……」
「ああ……そっか」
「……一番最初に比べたら分かろうとしてくれてるんだけど、色々聞かれるかなあ~」
優月がクスクス笑ってる。
「最初は、すごい反対されたからさ」
「……それは何で?」
「えーと……」
「いいよ、言ってみな?」
言いにくそうな優月の、えーとに、笑ってしまいながら、オレがそう言うと。
「玲央が、色んな人とそうなってる、て知ってたから……だったかな……」
「男と、っていうんじゃなくて?」
「……まあ、オレが、男とっていうのもびっくりしたとは思うんだけど……違ったかなあ。心配してた」
「そっか。……まあでも、まだ心配だろうな」
「――――……」
まだそんなに時が経ったわけじゃないし、安心はしてないだろうなと思ってそう言ったら、優月は、ふと、腕の中から顔を上げて、オレを見上げてきた。
「大丈夫。ちゃんと、話してくるし」
「……ん」
「ていうかさ。オレのこと心配してくれるのが、まだ抜けないみたいで……昔からお世話かけてたからさ。ほんと、お姉ちゃんみたいだったんだよね」
クスクス笑ってる優月。
「……小さい頃の優月、可愛かっただろうしな。……生まれたて、死ぬほど可愛かったし……」
ふ、と笑ってしまいながらそう言うと、「またそれ……」と、優月はぷ、と笑い出す。
「幼稚園とか、よく泣いてた」
「……それは今もかな」
クスクス笑いながらそう言ったオレに、え、と目を大きくして、それからふわっと微笑んだ。
「今のはちょっと違うよ……? 今、オレずーっと、おかしいんだよね……」
「おかしい?」
「うん。そう……」
頷いて、なんだかしばらく、んー、と考えた後。
「玲央のことが、すっごく好きだから……かなあ。なんか、泣いちゃうんだよね……」
「――――……」
「オレ、ほんとにね、中学位からはずっと泣いてなんかなかったよ? なんか最近、涙腺が……」
苦笑いの優月が、可愛くてたまらなくなって、ぎゅーと抱き寄せた。
「……すっごく好きだから、とかさ」
「……?」
「さらっと言うけど」
「ん……? 軽く言ってる訳じゃ、ないよ?」
「……じゃなくて」
むぎゅ、と抱き締めたまま、頬に触れて、顔を上げさせる。
「さらっと、すっごく好きとか言われると……たまんないなーと、思って」
「……」
じっと見つめてくる優月の顔が、数秒後、かあっと赤くなる。
「……なんでそこで照れんの?」
可愛いなーと思ってしまいながら聞くと、優月は少し首を傾げてから、わかんない、と言った。
「……そんな風に言われると……さらっと言うの、恥ずかしいのかなって」
「つか、さらっと言っていいよ。ていうか、言ってくれた方が嬉しいから」
照れてるけど、頷いた優月の頬に、ちゅ、とキスしてから、起き上がった。
「先に食事、注文してくる。優月の着替えそこにあるから着替えといで」
「うん。ありがと」
無意識なのか、オレがキスした頬に、すり、と自分で触れながら、立ち上がったオレを見上げてくるのが可愛くて、頭を撫でると、ふふ、と微笑む。
まあ。朝から。とても、可愛いなと思いながら、部屋を出た。
(2023/4/21)
ちょっとお知らせ♡
一月に一週間ほど更新を休んで、紙の公募に出してみましたとお知らせしたのですが。
今日、キャラ文庫の中間発表がありまして。一次を通過していました( ノД`)
最終選考の結果は二か月後なので、静かに待ちます(´∀`*)ウフ。
56作品通過なのでここから厳しいとは思うのですが、
一次通過……嬉しかったので、ご報告させていだたきました。
ではでは♡
204
お気に入りに追加
5,335
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる