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◇同居までのetc

「勉強すべき?」*優月

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「ていうかさ、蒼くんは、ドキドキしたこと無いの?」
「んー? ああ、さっきのか……死ぬほどドキドキだろ……」

 んー、と蒼くんはしばらく考える。

「遠い昔はあったかなー。記憶がない」
「そうなんだ。……なんかあれだもんね、蒼くんは、人をドキドキさせて楽しんでそうだもんね」

 うんうん、なんか分かる。

「……お前、オレにドキドキしたことある?」
「無い。嫌な意味で、ひやひやドキドキみたいなのはあるけど」

 自分で言いながら笑ってしまうと、蒼くんも苦笑い。

「じゃあ何でんなこと言うわけ?」
「えーだって……蒼くんをカッコいいって言ってる友達とかは山ほど見てきたし。雑誌とかさ、そう言うのも全部、もうカッコいいみたいな書き方してるし。世間の評価は、絶対そうだもんね」
「……優月は何でしないんだろうな?」
「そんなの決まってるし」
「何?」
 蒼くんは面白そうに笑ってオレを見てる。

「自分のお兄さんにドキドキする人、居ないでしょ?」
 言うと、蒼くんもそうだな、と笑う。

「オレもさ、言われたんだよ、こないだ」
「うん?」
「里村にさ」
「あ、里村さん」

 蒼くんのお友達だ。玲央と蒼くんと里村さんで、ご飯行ったっけ。
 とりあえず二十歳まで、玲央とオレが付き合ってたら、祝ってくれるって言ってた人……。

「何て言われたの?」
「玲央に優月を渡していいのかって」
「え??」
「優月を、オレのもとで可愛がってたいんじゃねえの?って」

 しばらく考えてから。えええ?? と声を上げてしまう。

「蒼くんはオレを可愛がってるっていうか、からかって遊んでるんだよね?」

 クスクス笑いながら、オレが言うと、蒼くんも、まあ、間違いじゃないけど、と笑う。あ、間違いじゃないんだなと可笑しくなりながら、蒼くんの言葉を待っていると。

「優月が男がありなんだなと思っても、どう考えても無しって言っといた」
「うんうん。だよね」

 蒼くんとオレが、とか、全然考えられない。笑っちゃう。

「でも思うんだけどさ。蒼くんだけじゃなくて、普通はオレには、そういう気分わかないんじゃないかなあって思うよ?」

 蒼くんはなんだか微笑んだまま、オレを見つめ返してくる。

「玲央がどうしてオレを誘ったのかも、いまだに謎だし。多分これ、永遠のテーマだよ」
 クスクス笑いながら言うと、蒼くんも、ふ、と苦笑い。

「まあ、あれだよな……それが、相性っつーか…… 会って、近くで見て、玲央はそう感じたんだろ。んで、今こうなってるなら、その直感は合ってるっつーことだから」
「――――……」

「良いんじゃねえの?」
「……相性、かぁ……」

「まあオレと優月は、兄弟としての相性が良かったってことだろ」
「……そだね。お兄ちゃん、ずーっとお世話になってます」

 そう言うと、蒼くんは、まあそうだな、と言って否定せずに頷いて笑ってる。

 相性かあ、とつぶやきながら、ふむふむと頷いて少し考える。一口お茶を飲んでから、蒼くん、と呼んだ。

「……いっこ、聞いて良い?」
「どーぞ?」

「蒼くんはさ、きっと、そういう経験、多いでしょ?」
「……何基準だよ?」

「……だってモテるだろうし」
「まあいいや。多いとして、何?」

「……蒼くんは慣れててさ、で、相手の人は全然慣れてなかったら……それって、嫌って思うもの?」
「……玲央は嫌がってないだろ?」
「……玲央は優しいからそんなの全然嫌とか見せないけど……」
「じゃあ何が問題?」

「えーだからね……オレはもっと勉強すべきなのかなと思って」
「べん……」

 蒼くんは、オレの言葉を繰り返して、勉強って言おうとしたと思うんだけど、何やら途中で吹き出して、そのまま、ずーっと笑ってる。…………。いつも通りだけど。





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