535 / 830
◇同居までのetc
【番外編】「ある夏の日」1/2
しおりを挟む学校が終わって待ち合わせたら、マンションとは違う駅の方に歩き出した玲央。何にも聞かずについてきて、と言われた。もちろんついてく。
そしたら駅から特急に乗った。それはちょっとびっくりはしたけど。
車内で駅弁を食べて、辿り着いた先は観光地。
バスに二十分乗って、湖に到着。もう結構暗くなりかけてるのに、人が結構居る。
「なんか、結構人居るんだね」
「ん、そだな」
くす、と笑う玲央が、オレの手を取って、歩き出す。
暗いし、誰もこっち見てないし。
ていうか、見ててもいっか、と、玲央の手を握り返して一緒に湖の側を歩き出す。遠くで沈みかけている夕陽がとっても綺麗。
なんか不思議。
さっきまで、学校に居たのに。
今はこんな、静かな湖の側を、玲央と歩いてるって。
少し人から離れたところで玲央が、湖に降りる階段の途中に腰かけた。
オレも、その隣に座ると。
「……ほんとに聞かないんだな」
玲央がクスクス笑って、オレを覗き込んでくる。繋いでた手は離したけど、かわりに、すごく密着して座ってる感じ。
「聞かないって?」
「何しにこんなとこまで連れてこられたかとか」
「ん。だって聞かないでって」
「こんな遠くにいきなり連れてこられてんのにな?」
クスクス笑って、よしよし撫でられる。
「言ったのが、玲央だから。他の人なら、多分最初に聞いてるよ」
ふふ、と笑って答えたら、玲央は、ふ、と瞳を細めた。
「そんなに信じて、変なとこ、つれてかれちゃったらどーすんの?」
色っぽく笑んで、至近距離で見つめられると。
どうしたって、ドキドキしてしまう。
「――――……だめだからな、オレ以外にはついてっちゃ」
クスクス笑う玲央の手が頬に滑ってくる。
「いかない、よ……」
ドキドキしながら答えると。
「ん。なら良し」
と玲央が笑う。そのまま引き寄せられて、キスされた。
歩いてくる間も、人、居なかったし、暗いし。
何度か離れてはキスされて。
なんだか幸せ……と、そのまま、キスを受けていたら。なんだか遠くの方で、何かの声がする。
「……? 何かの放送?」
玲央から少し離れて、ふ、と声の方に視線を向けた瞬間。
何か。聞いた事のある、音がした。
……え、これって――――……。
目の前の湖の上に、大きな花火が上がった。
「う、わ……」
続けて何個も何個も、大きな花火があがる。
やっぱり、花火が打ちあがる音だった。
「――――……花火……」
玲央を見つめると、「花火見てな」と笑われる。
目の前で次々上がる、花火が綺麗で。
どうやらさっき聞こえた声は、花火のアナウンスだったみたい。
合間合間に、少し聞こえるんだけど、何を言ってるかは聞き取れない。
「もっとずっと向こうが花火会場なんだけどこっちからも見えるって書いてあってさ」
玲央がそんな風に説明してくれる。
また花火が上がり始めた。
綺麗すぎて。
ただただ、見つめ続ける。
ふ、と玲央に視線を向けると。
ん? と優しく見つめられる。
花火の光が、いつもと違う感じで玲央を照らしてて。
綺麗だなあ、なんて、玲央を見ても、思う。
そのまま、また花火に視線を移して。ほんの十五分位。
ただ見惚れて時を過ごした。
それからまたアナウンスの声だけが聞こえた。多分終了の言葉。
それが終わると、急に静かになった。
「――――……」
「終わりだな……どうだった?」
そう聞かれて、玲央を見上げる。
「……うん。めちゃくちゃ良かった。すっごい、綺麗だった」
じーんと浸りながら、玲央を見つめると。
ふ、と優しく笑った玲央に、ちゅ、とキスされた。
「はは。かわい。その顔見たくて連れてきたから」
すりすり頬を撫でられて、またキスされる。
「………………っ」
なんか、胸の奥が、きゅーと締め付けられるみたい。
……大好きすぎて。
(2022/10/20)
後半に続きます♡
220
お気に入りに追加
5,335
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる