上 下
518 / 830
◇同居までのetc

「なんでもいい」*優月

しおりを挟む


 何て言えば恥ずかしくないかを、とりあえず、めちゃくちゃ考えてみた。

「……その……」
「うん?」

 玲央はまだとっても楽しそうなまま。
 うぅ。恥ずかしすぎる……。

「……玲央と、するのが初めてのこと、いっぱいあるから」
「――――……」

「それは、全部、好き……」
「――――……」

 これで、終わりにしてくれるといいんだけど……。
 そう思っていたら、玲央は少し黙ってたけど、その内、ふっと瞳を緩めた。


「――――……可愛いけど」
「……??」

「あとで、ベッドで、全部言って」
「…………」

 ベッドで……。
 …………っ。


「む……」
「む?」

「む、り……」

 顔が、熱い。
 かろうじて言ったその言葉に、玲央は、クッと笑い出した。


「何が好きか、言ってくれたら、ぜーんぶ、してやるよ?」
「…………っっ」

 ぷるぷるぷるぷる。
 めちゃくちゃ首を横に振る。

「何で? 好きなこと、全部してやるって、言ってるのに」

 そう言いながら、玲央の手が頬から項に滑って、そこで、すり、と撫でてくる。

「……っ」

 ……もう本当、こういう時の玲央の瞳や表情は、ほんと、なんか、男っぽい……というか。……色っぽくなっちゃうというか……わざとやってるならすごすぎるけど……しようとしてないのに、これならほんとに……。
 絶対勝てないんだよね……。

「……言うのとか……無理」
「――――……ふーん?」

 クスクス笑われて。玲央をまっすぐ見つめる。


「……ほんとに、玲央が……好きなようにしてくれて、いいから」
「――――……」

 目の前の瞳が、余計に面白そうに、キラキラしてくる。
 ……それを見て、何か言い方、間違ったかも……と思ったら。

「きっと優月は、いっこずつ言うのが恥ずかしいから、そう言ったんだろうなあって、分かってはいるんだよな、オレ」

 あ、そうそう、そういうことです。
 大丈夫だった、ちゃんと伝わってる。良かった。


 そう思った時。
 項に触れていた玲央の手に、ぐい、と引き寄せられて。


「っん……」

 急に唇が塞がれて、急に、舌が入ってきて、急に、玲央の舌が絡んできた。


「……っ……っ……ん、っ……?」

 とっさに藻掻こうとした手は、玲央の右手に軽くつかまれて、玲央の左手は、ずっと後頭部を押さえてて。


「――――……んン……ぅ」

 ……息が。
 全然ちゃんと、できない。
 
 しばらくして、ゆっくり、唇が離れて。
 はぁ、と、息を吐く。なんかもうこのまま、玲央に、よっかかってしまいたいくらい。なんか、ぼんやりしてる。視界がぼやけてるのは、涙かな……。

「……ちゃんと分かってんだけど――――……好きなようにとか、言われると……」

 ぼんやりしてる、オレの目を玲央が親指でこすってくれて。少しはっきりした瞳に、玲央の苦笑いが映る。


「好きにしていいのって思うと――――……もーいますぐベッドに連れ込みたくなるな……」

 そのままスリスリと頬を撫でる玲央の瞳は。
 もうなんか、何をしても、絶対敵わないくらい、色っぽくて、キラキラだし……。


「もうちょっと気を付けて話しな? 優月……じゃないと」

 もう何を言われても、何をされても、もう、全部恥ずかしいのに。


「オレにぜんぶまるごと、食べられちゃうから」

 とか言われて。
 もう、恥ずかしさと、胸がきゅんとするのとで。

 なんか……ちょっと、心臓の音がすごすぎて、死にそう。

「……玲央。オレ」
「ん?」

 ちゅー、と頬にキスしてた玲央は、オレを至近距離から見下ろして、にっこり笑いながら、相槌を打ってくれる。
 
「何? 優月」
「――――……玲央ならいいよ? なんでも」

 そう言ったら、玲央は、じー、とオレを見て、そのまま、むぎゅ、と抱き締める。


「……だから、それなんだけど……はー……なんだかな……」


 オレを抱き締めたままで。

 玲央がなんだか、ちょっと困ったように呟いてる。




しおりを挟む
感想 778

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

そんなの聞いていませんが

みけねこ
BL
お二人の門出を祝う気満々だったのに、婚約破棄とはどういうことですか?

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

処理中です...