503 / 822
◇同居までのetc
「言い過ぎ?」*玲央
しおりを挟む優月が並べてくれたグラタンをフォークで刺すと、中にマカロニ。
「シチューにわざわざマカロニ入れたんだ?」
「うん。だってグラタンだし……好きじゃなかったりする?」
「いや? 好き」
よかった、と優月が笑う。
「そういえば、玲央って、嫌いなものある?」
「――――……」
嫌いなもの……。
「そんなに思い当たらないかな……。食べたことないものはあるかもしれないけど」
オレがそう言うと、優月はクスクス笑って「ピスタチオとか?」と聞いてきたので、頷きながら、ふと。
「そういえば、ピスタチオって、何なの?」
「何って?」
「果物とか?」
「……ナッツ、だったと思う」
「ああ、そうなんだ……ああ、言われてみればナッツっぽいかも」
「うん。多分そう」
「……ナッツの形でも見たことないな」
「……オレも、ナッツの形では無いかも……オレが食べるのはアイスが一番多いかなあ……そういえばもともとどんな形なんだろ」
「もしかしたら、昨日のアイスの袋に書いてあったのかもな」
「……見てないね」
二人で、顔を見合わせて、ふ、と笑ってしまう。
「嫌いなもの無いなら、ごはん作るのはらくちん」
「優月は?」
「オレも、そこまで絶対食べれないってものはないかな」
「そっか」
「うん」
優月は頷いてから、ふとオレを見上げてくる。
「玲央が大好きな食べ物って?」
「大好き?」
「うん。一番……ていうか、いくつか好きなの」
そう言って、なんだかとてもわくわくした顔でオレを見つめてくる。
「……大好きか。えーと……」
「うんうん」
「……刺身とか寿司とか……餃子。ラーメン。カレー……」
よく食べるものを思い浮かべながら挙げていると、不意に優月がクスクス笑った。
「よかった」
「ん?」
「お刺身とかお寿司が先に来たから、すっごい高級なお店のかなって、ちょっと思ったの」
「――――……」
「そしたらその後、餃子とかラーメンとか、カレーとかになったから。なんだかちょっと嬉しくなっちゃった」
なんだかすごく楽しそうに笑って、そんなことを言ってる。
食べ物の好き嫌いの話をしてる、ただもう世間話並みの、普通の会話なのに。……何でこんなに可愛いのだろうか。
不思議すぎる。
「カレー今度一緒に作ろ」
「うん!」
「色んなスパイス買ってこよっか」
そう言うと、優月が、ん?とオレを見つめる。
「んん? もしかして、ルー使わない?」
「んー、使ってもいいけど。使わなくてもうまいよ」
「へー……」
なんだかすごくキラキラした顔でオレを見てくる。
「作る作る。オレ、一から作るの初めて」
「――――……」
「楽しみー。いつ作ろっか」
なんだか本当に、楽しそう。
――――……あぁ、可愛い。何なの、これ。
可愛いを言い過ぎな自覚があるし、こんな、カレーの話を普通にしてて、急に可愛い言われても困るかなと思うので、咄嗟にちょっと堪えるが。
手は勝手に動いて。
「――――……?」
よしよしされた優月がきょとん、としてオレを見上げてくる。
「……?」
ふふ、と笑んで、でも少し不思議そう。
何で撫でたのかな? と思っているんだろうなと思うと。
抑えようと思ったけど、つい、笑ってしまって、口元、握った手でちよっと隠していると。
優月がますますきょとん、として、オレを見てる。
「――――……あーもう」
後頭部に手をまわして、そっと自分に引き寄せる。
「……可愛い」
耐え切れずに結局そう言って、優月の頬にキスすると。
きょとんとしていたけれど、すぐに、嬉しそうに笑った顔を見て。
やっぱり言った方がいいのかも、と思った。
181
お気に入りに追加
5,157
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる