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◇同居までのetc

「とけるキス」*優月

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 部屋のドアを閉めて鍵をかけて、靴を脱ぐ。

「玲央、アイス今食べちゃう? あとで?」
「んー……シャワー浴びてからにしよ」
「うん。じゃあ冷凍庫にいれてきちゃうから貸し――――……」

 アイスを受け取ろうとして出した手を掴まれて、そのまま壁に背中をつけられた。
 振り仰いだ唇に、玲央の唇が重なる。


「――――……優月……」

 熱っぽい声で名を呼ばれて、至近距離の玲央の瞳と見つめ合って、閉じることが出来ないまま。
 玲央の舌が、オレの舌先に触れた。

「……ん――――……」

 絡んでくると、耐えられなくて、ぎゅ、と瞳をつむる。


「……っふ」

 顎に掛かった手に、上向かされて固定されて、舌を吸われると、体が震える。

「……っん、ン……」

 玲央の服にしがみつくみたいに、ぎゅ、と握ったところで、玲央がゆっくり唇を離した。


「――――……とけちゃうよな」
「……ん……」

 ほんと。頭とけそう……。
 優しく囁かれて、頷いていると、玲央がちゅ、と頬にキスした。

「もう結構とけてるかな。冷凍庫いれてくる。服もってすぐ行くからシャワー浴びてて」

「――――……うん」


 頭を撫でられてから背中をそっと押されて、バスルームに押し込まれて、ぽー、としながら服を脱ごうとし始めた時。


 んん?

 とけるって。
 ……アイスのこと?


 頭じゃなくて? 


「――――……」


 勘違いに気付いた瞬間、なんだかものすごく恥ずかしくなって。
 脱ぎかけた服に口元埋まったまま、固まる。

 何考えてんだろ、オレ。
 とけるとか。
 玲央にキスされてると、とけそう、とか、よく思うから。

 咄嗟にそっちが浮かんじゃった。

「…………っ」

 そこでドアが開いて、脱衣所で固まってたオレに、遅れてやってきた玲央が、ん?と驚く。


「まだここに居たの? どした?」
「……」

 プルプル。
 首を振って、なんでもないとアピールしたけれど。


「どした?」

 くす、と笑う玲央に、口元の服を下げられて、のぞき込まれた。

「……優月?」

 優しく頬に触れられる。
 じっと見つめられて、どんなごまかしも浮かばなくて、仕方なく、言う事にしてみる。

「……たいした事じゃない、よ?」
「ん。いいよ」

「……さっき、とけちゃうって……アイスのこと、だよね……?」
「――――……オレが、とけちゃうよなって言ったやつ?」
「うん」

「ん、まあ……そうだけど?」

 そうだよね、と苦笑いしか浮かばない。


「それがどうした?」

「……ちょっと勘違い、しててさ」
「勘違い? 何を?」

 俯くのだけれど、顔を包んだ手に、まっすぐ上げさせられる。


「何だよ?」

 クスクス笑いながら、玲央に急かされる。


「……頭とけちゃうって言ったのかと思って、うん、て答えたんだけど……」
「――――……」

「……ここに来てから、勘違いだって気付いて、恥ずかしくなって」
「……ああ……頭がとけちゃうなって言ったと思ったの?」
「……うん」

 ていうか、オレは、一体なんでこんな恥ずかしい勘違いをわざわざ暴露してるんだ。早くお風呂入っちゃったとけば、良かった……。


「……優月、キスすると、いつも頭がとけるとか思ってんの?」

「――――……」


 ……恥ずかしすぎる。
 うんとは言えず、じっと玲央を見上げていると。

 クッと笑って、楽しそうに目を細める。


「かわいすぎ……」

 頬や額に何度もキスされる。
 くすぐったいけど……優しくて、大好きなキス。


「――――……玲、央……」

 じっと見つめられて、笑む瞳に吸い寄せられるみたい。


「する? キス」
「――――……うん……」


 一度触れて、少しだけ離れる。


「……とけるみたいなの、する?」


 そんな風に聞かれると、ドキドキしすぎて、頷くのも、うまくできない。


 でも頷けなくても、玲央は、優しく微笑んで。
 顔を傾けて、近づいてくる。

 

 初めてキス、された、ひたすらびっくりしてたあの時から。


 ――――……玲央のキスは、大好きだったなあと、キスされながら、思う。





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