上 下
465 / 822
◇「周知」

「宝物にしたい」*優月

しおりを挟む

 玲央と別れて授業を受けて、最後の時間が同じだった皆と一緒に坂を下って、駅前についた。時間まで、集合場所で待つことになった。

 色々話しながら、ふと、まだ写真を見てなかった事に気付いて、スマホを取り出した。

「前回のクラス会っていつだったっけ?」
「んー、4月の半ばじゃなかったっけ? 春休み会えなかったからしよーっていってさ」

 聞かれた事に答えながら、玲央とのトーク画面を開いて、写真をタップする。

「――――……」

 ……あー。
 あんまり見せたくないって、言ってたの……分かるかも。
 なんか、すごく、かわいー、玲央……。
 カッコよくて、ちょっと澄ましてる時の玲央とは、正反対みたい。

 無邪気な笑顔。
 ……もちろんカッコいいんだけど。可愛いなあ。愛しすぎる。

 玲央から来てたのは、五枚。
 めくる度に微笑んでしまう。

 どうしよ。
 オレも、これ、誰にも見せたくないかも……。

 ……写真、見せなくても、信じてくれるか、頑張ってみようかな。
 オレだけの宝物にしておきたいとか、思ってしまう。


「またスマホ見て笑ってるし。……彼女?」
「――――……」

 聞かれて、ふふ、と笑ってしまう。


「……うん、すごく、好きな人」

 大好きすぎると思っていたタイミングだったせいで、ついつい、すごく素直にそう言ってしまった。
 すると、周りに居た皆が一気に盛り上がってしまった。

「何々、マジで付き合ってんの、優月」
「どんな女ー?」

「ん、後でゆっくり……」

 ここで叫ばれたくないし。
 苦笑しながらそう言うと、皆、はー?と眉を寄せる。

「もーどんだけ気を持たせんだよ」
「すげー楽しみにしてっから」

「う、うん……あの、でも、一つだけ言っておくと――――……」

 何?と、皆がオレを見つめてる。

「……多分皆が思ってるような人じゃないと思うから……びっくりすると思うけど」
「はー? 何それー?」
「別に優月が誰と付き合ってたって、びっくりしねえけど……」

 そう言う友達の横で、「あーでも」と一人の友達がちょっと考えながらオレを見つめる。

「優月の彼女が、すっげえド派手な人だったらびっくりするかも」
「あー……確かに。めちゃくちゃ化粧ばっちりとか?」
「そうそう。 体のラインめっちゃ出てる服とかさー、胸見えそうな服とか? そんなの着てたら……」
「あー、それはすっげーびっくりするー」
「騙されてんのかと思うよなー?」

 ――――……えーと……。

 皆があれこれ、続けていくのを聞きながら、正直苦笑いしか浮かばない。

 めっちゃくちゃド派手な、目立つ、超イケメンの男の人だけど。

 今言ってるので、オレが騙されてるとか、心配されちゃうなら……。
 玲央って言ったら、何て言われちゃうんだろ。

 う、うーん。ちょっと話すのが怖くなってきた。


「……あのさ」

 目の前で楽しそうに、何だかもはや笑い話かネタみたいな感じで、オレの彼女がこうだったらびっくりする、を続けてる皆の事を見回しながら。


「……もっとびっくり、するかもしれない……」

 オレの言葉を聞いた皆が、何秒か、え、と固まる。

 ――――……まあ確かに、今皆が言ってたのよりもびっくりするかもとか。
 普通、ないもんね……。


「ちょっと待って、優月……」

 隣に居た友達に、肩を組まれる。

「……こんな事聞くのは、悪いんだけど……」
「うん?」

「なんか、買わされたり、すごいこと、させられたり……」
「……してないよ」

「……何かの書類とかサインしたり……」
「してないってば」

 周りの皆が、そのやりとりに笑ってるけど。
 もー、どんな質問なんだよー。


 ……だめだ、さっきの写真、見せよう。
 玲央が、悪い人じゃないって分かってくれるに違いない。



 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

処理中です...