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◇「周知」

「撮影会」*優月

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 そんな話をしている内にコンビニについて、自動ドアの手前で、クロを下ろした。

「ちょっと待っててね?」

 座ったクロを撫でて、自動ドアの中に入った瞬間。

「いらっしゃいま――――……あ! 優月くんと玲央くん!」

 何だか少し声が大きい。多分品出しとかをしていたと思う、もう一人のおばちゃんも何だか急いで姿を見せて、「いらっしゃいませ」と超笑顔。

 いつも、すごく話しやすくて、まあいつも笑顔だし、だからオレ、クロの話とか色々するようになったんだけど……。
 今日はなんだかものすごーく、テンションが高い。

「……??」

  いつものおばちゃん達の、なんだかいつもとは違う雰囲気に、あれ?と思ってから、ふっと気づいた。

 ……あ、そーだ。こないだ、玲央がふざけて仲いいですよとか言って、おばちゃん達に多分叫ばせて、そのままだった!

「クロはさっきお昼食べちゃったから小さなおやつで大丈夫よ、優月くん」
「あ、はい」

「今日も二人でお買い物?」
「あ、……はい、そう、なんですけど……」

 なるべく店員さんとして普通を装おうとしながらも、めちゃくちゃ興味津々にオレ達を見てるおばちゃん達と。
 オレの横で、何だかとっても……悪戯っぽい、楽しそうな笑顔の玲央を見比べて。

 オレはもう、とりあえず黙って笑っておこう、と決めた。


「ほんとに、仲良いんだね」
「そうですね」

 玲央がけろっとして答えて、ふ、と笑う。

 ……イケメンのオーラって、わざとキラキラ出せるものなんだろうか。
 これ、無意識なら、ほんとにすごい。

 おばちゃん達はまんまとハマって、ぽーと、玲央の顔を見ている気がする。


「優月、見に行こ」
「あ、うん」

 あ、そこでオレの手を掴むとか。
 今はやめた方が……。

 でも変に離れるのもおかしいかなと思って、手を掴まれたまま、猫のおやつゾーンに到着。オレは、もう、隠れたくて、しゃがみこんだ。すると、玲央もクックッと笑いながら隣にしゃがむ。

 ちら、と恨めし気に隣を見ると、ぷ、と笑って口元に手を当ててる。

「……もー玲央ってば」
「すげー面白いな、あの人達」

 玲央はすごく小さくこそこそ言ってきて、クスクス笑い続けている。

「もう、すごいテンション高いから、これ以上あげないで」
「んー……」
「ね?」

 近くで玲央を見つめると、ふ、と笑われて、頷かれる。


「分かったよ。……おやつ、こっちでいいか?」
「あ、うん」

「買ってくるから、クロ、捕まえとけよ」

 そう言って、立ち上がると、玲央はレジに歩いて行ってしまった。
 
 立ち上がって、雑誌の並びの間からさっきクロを座らせた所を見ると、まだちゃんと、ちょこんと座っていた。 

 可愛いよー。

 玲央が、おばちゃん達と何かを話してるのを見ながら、ドアの所で立ち止まると、玲央はオレに視線を流してくる。ちょっと笑顔。

 そのまま、おばちゃん達にまた向き直って、何かまた話してる。
 オレはコンビニから出て、クロを抱っこした。

「おまたせー」

 よしよしと撫でながら、ふふ、と笑ってしまう。

 玲央って、あんな風に、店員のおばちゃん達と気安く話したりする人なんだなあ。ちょっと、意外。
 何となくだけど、レジとか無言で立ち去りそうな。用があっても一言とかで終わらせそうな、そんなイメージ。

 ちら、と店内に目を向けると、なにやら一人のおばちゃんと話しながら、こっちに向かってくる。

 ん??

 一緒に出てくる玲央とおばちゃん。


「写真撮ってもらお」
「え。あ。いいんですか?」

 玲央の声に、おばちゃんを見ながら聞くと、もう玲央のスマホを持って構えていて、もちろんと笑う。


「優月、背景こっち」

 そんな風に言われて、肩を抱かれて、向きを変えられる。


「お願いします」
「はーい」

 そこから、超ウキウキで楽しそうなおばちゃんによる、玲央とクロとオレの撮影会。結構何枚もカシャカシャ連写される。

 必要以上に玲央が近いし、おばちゃんが、いいねーと、ハートを飛ばしてる感じだし。

 玲央がノリノリすぎて、しまいには、なんだかおかしくなりすぎて、すごく笑ってしまった気がする。






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