上 下
450 / 822
◇「周知」

「人って」*玲央

しおりを挟む

 バスルームから出てきた優月は、ほこほこしてて、可愛い。

 細い首筋にキスしたい。とか。朝から思ってしまうけど。
 なんかまだ、顔がというか、口もとが、ぷっくりしてる。ちょっと困ってるみたいな顔。……可愛い。

 オレは先に席に座って、コーヒーを飲んでいたのだけれど。優月のその様子に、ぷ、と笑ってしまうと。

「ね、玲央。さっきの続き、話してもいい?」
「ん。いーよ」

 優月は、オレの隣に座って、じっとオレを見つめてくる。

「玲央もね、夜一緒に起きてるのに……ていうか、オレの事、拭いてくれたりしてオレより遅いのに、朝起きてるでしょ」
「……まあそーだけど」

「いつもスマホ置いたままベッドに行っちゃうから、今日から、目覚まし、セットしてもいい? オレも一緒に起きたい。ご飯の用意一緒にしたいし」

 優月は、そう言って、テーブルの上の料理をじっと見ている。

 まあ分かるんだけど。言いたいことは。
 んでもなあ。


「優月」

 ふに、と、まだ暖かい優月の頬に触れる。

「オレ、お前と食べるもの作るの、全然苦じゃないし。むしろ、楽しいくらいだし。……でもって、夜の疲れるのは、多分お前のが疲れる、と思うんだよな」

 優月が、面白い位に真っ赤になるのを見てると。
 なんだかもう、可愛くてたまらなくなる。


「シャワー浴びたての優月、隣に置いてご飯食べるのが、結構幸せなんだけど。……ダメ?」

 じっと見つめて、そう言うと。
 めちゃくちゃドキドキしてますって顔して。
 瞬きパチパチして。

「だめ、とかじゃ、ない……けど……」

 頬から項に手を滑らせて、優月を引き寄せる。
 唇を重ねて、そのまま至近距離で見つめると。


 まっすぐな大きな瞳が、可愛くて。
 ちゅ、と瞼にキスして。



「まだ優月、ああいうことに慣れてないし。いつも、落ちるみたいに寝るだろ。……その内慣れて、自然と目が覚めるようになったら、一緒に起きる。ていうんでいい?」
「……玲央、それでいいの?」

 むー、と困ったみたいな顔で聞いてくるけれど。

「それが、いい」

 はっきりそう言って、すりすり頬に触れると。


「――――……分かった。なるべく自然と起きれるように……早くなるね?」

 その言葉には、苦笑いが浮かぶ。

 優月がそうするために、オレがすべきことは。
 なるべく負担かけないように抱いて、なるべく早めに寝かせてやればいいんだろうけど。……できる自信が無い。


「いいよ。ゆっくりで。オレ、お前がすやすや寝てんのも可愛すぎるし、寝起きも可愛いし、全部ずっとそのままでいい位だから」
「――――……」

 もはやよく分からない、と言う感じの表情でオレを見て、優月がちょっと困ってる。

「とりあえず、食べようぜ?」
「あ、うん」

 くる、と前を向いて、優月が頂きますと手を合わせてる。


「美味し、スクランブルエッグ」
「だろ」

 めちゃくちゃ嬉しそうに笑う優月に、ふ、と笑んでしまう。


「朝、起きれない内は、オレに世話されててくれたらいいし」
「……ありがと」

「夜は、その分付き合えよな」

 また赤くなるのかなあと、ちょっとイタズラ心でそう言うと。
 案の定恥ずかしそうな顔をして、でも、こくこく、と頷いてる。


「……ほんと、かわいーな」

 よしよし、と撫でてやると、恥ずかしそうなまま、でも、嬉しそうに、ふわふわと、笑う。



 朝から、ずーっと可愛いぞ。
 ……何だこれ。ほんとに。



 よく考えたら、すやすや寝て、息してるだけで可愛いからな……。

 ――――……人って、こんなに可愛いんだな。







(2022/6/8)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

処理中です...