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◇「周知」

「困る」*玲央

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【side*玲央】


 目が覚めると、優月がまだスヤスヤ寝てる。

 ……寝顔――――……天使、みたい。とか。
 ――――……あほか、オレ。さすがに、恥ずい。

 一人で内心狼狽えながら、静かに体を起こして、ベッドを降りようとして気づく。そういや、いつも、一緒に起こしてと言われるっけ。

 ベッドの端に腰かけて、優月を振り返って、髪に触れる。

 さら、と髪を梳きながら、頬に少しだけ触れる。


「……ん……」

 くすぐったそうに、ぴく、と動く。


 ――――……可愛すぎないか。これ。

 そのまま、すり、と頬を撫でたら。
 ふ、と、小さな声にもならない声を出して、もう一度、スヤスヤ眠る。

 ――――……起こしたくない。と結論が出た。

 時計を見ると、まだ時間、早いし。
 そのまま立ち上がって、先にシャワーを浴びた。


 ……つか、オレ、ほんとに早起きだな。すっきり目が覚めるし。
 ずっと、朝が弱いと思っていたけど――――……ただ夜が遅かっただけなのか……。
 髪をざっと乾かして、着替える。

 コーヒーをセットして、食事を作り始めて。
 そろそろ起こして、シャワーを浴びさせようかなと、思った時。

 かちゃ、とドアが開いて。
 優月が、キッチンに居るオレを見ると。ぷーー、と膨らんだまま、入ってきた。とことこやってきて、オレの前に立って。

 んーーー、と、何やら一生懸命な顔で見上げてくる。


 ……何それ。可愛すぎるんだけど。
 何か言いたげなので、言うのを待っていると。

「……起こしてって、言ってるのにー。何でオレこんなに起きれないんだろ、もーおかしい、玲央のベッドに睡眠薬か何か入ってるみたいな……もー」

 起こさないオレを責めてるのか、起きれない自分を責めてるんだか、ベッドを意味不明に責めてるんだか。

 とにかく、面白い。

 クッと笑い出してしまったら、優月は、ますます、むー、とした顔でオレを見る。

「玲央、起きたら、オレの事も起こしてってば」
「ん」

 オレは、すぽ、と優月を抱き締めた。

「おはよ」
「……う。ん。おはよ……」

 途端に勢いをなくして、オレの腕の中にすっぽりハマってる優月。
 ……可愛い。


「今日は、ちゃんと起こそうと思ったんだけどさ」
「――――……」

「寝顔が安らかだし、すげー可愛すぎて、起こせなかったというか……」
「……何言ってんの、玲央……」

 優月がまた、むー、と見上げてくる。

「……寝る前相当無理してるし、寝てていいんだよ、優月」
「寝る前無理……」

 目をパチパチさせてから、またかああっと赤くなって。

「お前が起きれないのは、絶対それだと思うんだよな。だから、いいよ、
オレ今起こしに行こうと思ってたとこだし。これ位のタイミングで起きてくれたら、全然いいよ」
「――――……」


「そのかわり、朝ゆっくり起きる代わりに、夜オレに付き合ってくれれば」
「――――……っっっっ」

 何を想像したんだかもっと赤くなる。


 ――――……あー。
 かわい。


「……だからとりあえず今は、シャワー浴びておいで」
「…………」

「出る頃作り終わるようにするから。いってこいよ」

 よしよし、と頭を撫でて、そう言うと。ありがと、と言った後。
 でもやっぱり納得いかないのか。

「……後でまた話して」

 なんだかまた、ぷー、と膨れつつ。てくてく歩いていく。


 姿が見えなくなってから、何かもう、可愛くて笑ってしまう。

 きっと、オレが起きて色々やってんのに、自分が寝てんのが嫌なんだろうなぁ。まあ、優月はそうなんだろうなと分かるんだけど。


 あんな可愛く寝てんの、無理無理起こすのもなあ……。
 

 あーほんと。起こしても起こさなくても。

 可愛くて、困る。
 
 
 









(2022/6/7)

◇ ◇ ◇ ◇

可愛くて困る、って方いらしたら、挙手('ω')ノ♡
私は玲央と優月、書いてると幸せなので
読んでる方も、ちょっとでも幸せになってくれるといいなあと
思っております(≧▽≦)♡

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