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◇「周知」

「ツヤツヤ?」*玲央

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 授業を終えて、優月と待ち合せた掲示板の前。
 何となく掲示されている物を見上げながら待っていると、後ろから走ってくる気配がしてすぐに、少し髪の毛乱した優月が到着。

「ごめん、玲央、遅くなっちゃった」
「オレも今来た。走って来なくていいよ」

 可愛くて、フワフワしてる頭を撫でると。うん、と微笑む。
 と。背後で、きゃ、と言う、女子の声。

 何気なく振り返ると、オレと優月を見てたのか、キャッキャッと楽しそう。オレの視線に、あ、と口を手で隠してる。

 ――――……ああ、髪、撫でたからか?
 こういうの、喜ぶ女子は、どこにでも、いるよな……。
 バンドメンバーで近くても、騒ぐ子達も居る位だしな。

 ふと優月を見下ろすと。優月は何にも気づいてない。

「玲央、掲示板見てた?」
「いや、大丈夫」

「じゃあ、行く?」
「――――……ん、いこ」

 そっと、優月の肩に手を回して、歩き出す。
 ものすごく押さえた、きゃー、という声が背後から聞こえる。

 ぷ、と笑ってしまうと。
 優月が「玲央?」と見上げてきた。

「……何でもない」


 何か。こんな風に、周りが知っていって、オレと優月が一緒に居るのが当たり前になると、いーけど。

 ……今のは、まあ、ふざけたけど。

「玲央、ちょっと、近い……」

 かあっと赤くなって、優月が少し離れる。

「……あぁ、ごめん。ていうか、近い?」
「近いよー……」
「見られたくない?」
「ていうか……照れちゃうから」

 ――――……はい。可愛いし。

 はー。もう。ほんとに。
 ……照れちまうのか。

 そっと、離してやると、優月はじっとオレを見つめてくる。

「さっき昼休みが終わって教室に行った時ね」
「ん」

「オレの顔見るなり、友達皆に言われたんだけどさ」
「うん?」

「……なんか幸せオーラとか、ツヤツヤしてるとか。いっぱい言われたの」
「――――……ツヤツヤ?」

 クスクス笑ってしまう。

「多分、玲央といっぱいくっついてたから、幸せ過ぎて、ツヤツヤしちゃったのかなあと思ってたんだけど」
「――――……」

「オレ、玲央と別れる時、ツヤツヤしてた??」

 ……「ツヤツヤ」はよく分からねえけど。
 いつも良い笑顔してるし。幸せそうに笑ってるよな、優月は。

「いつも笑ってて、幸せそうだけどな」
「……そう?」

「誰と居ても、楽しそうだけど」
「――――……」

 そんな話をしながら、オレのマンションまでの道を歩いていると。
 駅とは違う方向なので、もう周りには人は居ない。

 ぷに、と頬を摘まんで、親指で唇に触れる。


「さっき、いっぱいキスしたからじゃねえの……?」

 くす、と笑ってそう囁くと。
 また例にもれず、瞬間的に、かぁっと赤くなった。

「そういう事すると、なんか、肌、ツヤツヤするのかもな」

 可愛くて、赤い頬に触れて、すり、と撫でると。


「……っちょっ、とは、思ったけど」
「ん?」

「キス……したからかなって。ツヤツヤっていうのは、なんか、それかなって」
「あ、思ったの?」

 じゃあ何で思ってた事言われて、そんなに、赤くなるんだ?

「何で玲央が言うと、そんなに、やらしくなっちゃうんだよう……」
「――――……」


 なんか困った眉毛になってて。
 可愛くて笑ってしまう。


「ごめんごめん……」

 クスクス笑いながら、オレは、優月の頭をヨシヨシ撫でる。


「オレもツヤツヤしてんのかな」

 そう言うと。


「いつもお肌綺麗だよ」
「――――……そう?」
「うん」


「――――……つか、何の会話だよ」
「お肌の話になっちゃったね……なんでだっけ」

 何だかよく分からなくなってきて突っ込むと、優月もクスクス笑い出した。










(2022/4/30)

連休ですねぇ♡
Have a lovely day✨
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