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◇「周知」

「待つ」*玲央

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 空気やシーツの感触が、いつもと違くて、目が覚める。
 優月はまだ腕の中に埋まったまま。

 朝から、和みながら、ベッドの上の時計を見ると、5時。

 もう頭はすっきりしていた。
 二度寝しない方が良さそうだな。

 優月の頭に頬を寄せて、目を閉じる。


 誰かを抱き締めて寝たり、そのまま抱き締めたまま起きたり。
 

 別にしたくないというよりは、するかしないかを考える事も無く。
 ――――……したこと、なかったな……。


 腕、絡められて、ドキッとして、動けなくなる日が、
 オレに来るとか。

 すげーびっくり。
 
 オレの周りの奴らには、死んでも言わねー……。



「――――……ん……」

 もぞ、と動いた優月が、足を、絡めてくる。

 少し優月の方が冷たいから、暖かいのかな……
 くす、と笑ってしまうと。

 それに気づいたみたいで、ぱ、と顔を上げた。


「あ。玲央……」

 目が合った瞬間、ほわ、と笑う。

 ――――……可愛すぎ……。

 少し下の方に潜り込んでいた優月を、引き上げて、抱き締める。


「おはよ」
「うん。おはよー……」

 スリ、と頬に触れてくる。

 ――――……すり寄ってくんの、すげー可愛いんだけど。
 やらなくなったら嫌なので、言わない。


「まだ早いけど」
「ん。……何時?」
「5時過ぎ」
「わー早いね……」
「朝食6時だから」
「あと1時間かー……」

 優月は、ふ、と笑って。腕を背中に回してくる。


「……もうちょっとこのままでもいい?」
「ん」

 可愛くて、より抱き締めてしまう。


 思う度に、可愛いって言ってたら、さすがに優月でも、その内うざがられそうな気がする位で。

 マジで不思議すぎる……。


「あのさ、玲央」
「ん?」

「オレ、人に腕枕っぽいのしたことないんだけど……」
「ん」

 ……あったら、困るけど。

「疲れない?」
「ん……?」

「ずっと、抱き締めて、寝てくれるのってさ」
「――――……」

「身動きできないでしょ? だるくなったら、外してね?」
「――――……分かった」
「うん」

 優月はクスクス笑ってる。

「でも無理」
「……ん? 無理?」

 優月がオレを見上げてくる。

「抱いてたいから」

 腕の中にぎゅー、と抱き締めると、優月が笑う。

「オレ、玲央がよければ、手つないで寝るとかでもいいよ?」
「――――……ああ、それもいいな」
「うん。疲れそうならそうしよ?」
「ん」

 くす、と笑って、頷く。

「ずーっとオレと寝てくれる気で、言ってる?」
「え。……あ」
 ふ、とオレを見上げて、じー、と見つめてくる。

「昨日オレ言ったろ、朝と夜、一緒に居れたら、昼間離れてても、耐えるって」
「うん」
「優月が、心の準備出来たら、いつでも言って」
「――――……」

 ふ、と優月が笑む。

「オレ、嫌なんじゃないよ? 玲央」
「ん、引っ越しがハードル高いのは分かるから。いいよ、心の準備出来るまで、今みたいに過ごすから。良い?」

「うん。もちろん」
 嬉しそうに笑って、優月がオレを見上げる。


 ――――……ふと思うのは。
 なんか自分が「待つ」側になるとか。

 今まで思った事も無くて。
 ――――……実際、そんな事、今まで無かったなーと。

 でも、こんな風に待ちたい位、
 優月が好きなんだな、と思うと。



 ……悪くないなーと。
 思って。



「お前の事、すげー好き」

 そう言ったら。
 優月は、瞳を大きくしてオレを見つめて。

 ふわふわと、微笑む。


「オレも」

 オレの首に優月の腕が絡んで、むぎゅ、と抱き付かれる。


 可愛くて、よしよしと撫でながら頬にキスすると、くすぐったそうに笑うから、余計可愛い。


 ――――……こんな風に過ごしてるの。
 あいつらが知ったら、ぶっ飛びそう。


 今夜の集まりをふと浮かべて、そんな風に思った。


 まあ自分でも謎すぎるから、あいつらの反応の意味もまあ。
 分かるんだけど。
 


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