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◇「周知」

「探検…」*玲央

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 車をラブホの駐車場にとめて、降りた所で、優月がキョロキョロしながら。

「ドキドキしてきた」

 と言う。
 まあ。独特な雰囲気があるのは分かるけれど。

 
「どの部屋が良い?」

「どの部屋って? 何が違うの?」
「んー、写真のぱっと見で好きなとこでいいよ」

「ええー……」

 あんまり聞かないような情けない声を出して、優月が少しの間、部屋の説明を見ていて。悩んで優月が選んだのは、派手じゃない、白が基調の部屋だった。


「ピンクのとか無理……」

 苦笑いの優月と一緒に部屋に入ると。

「うわー……綺麗」

 豪華なラブホ、とあったけど。
 選んだ部屋がシンプルだったからか、ラブホ感はまるでなくて、高級ホテルとかモデルルームみたいな。

「あれだね、玲央の最初のマンションに似てる」
「――――……確かに」

 ラブホに似てると言われたと思って、ぷ、と笑ってしまう。
 確かに、そんな使い方してたなあとか…… そんな事は優月には言わねーけど。


「おしゃれだねえ……」

 周り中キョロキョろしてから、優月がオレを振り返った。


「なんか、テレビとかで見た事ある、なんかギラギラしたイメージ、ないんだね」
「お前がそういう部屋を選んだからだと思うよ。あっちのピンクのとか選んでれば、きっとそういう部屋だったと思うけど」
「あ、そうか……」

「まあ、良いんじゃねえの。落ち着くし」
「――――……そうだね」

「ここ、朝食、豪華で有名なんだって。頼んどく?」
「え、そうなの?」
「食べてから帰って、そのまま着替えて学校行けばいいよな? 学校の荷物は? 全部そろってる?」
「うん。明日は大丈夫」
「ん。頼んじまうから、待ってて。あ、優月」
「うん?」
「風呂にお湯入れといて」
「うん、分かったー」

 優月がバスルームこっちかなーと言いながら歩いていく横で、受付に電話を掛ける。

「わー、なんかすごーい」

 電話で話しながら、優月の楽しそうな声がして、笑ってしまう。食事の受け取り方などを聞いてから電話を切って、バスルームを覗きに行くと。優月がお湯をためながらバスタブを覗き込んでいた。


「玲央、なんか、ジャグジーがついてる」
「あぁ、そーなんだ」

「ゆっくり入ろうね」

 めちゃくちゃウキウキ、そんな事を言っている。



 ――――……やっぱり、探検になってるな。

 

 なんかほんと、優月って。
 そういう欲、沸き起こる事って、ないのかな。

 触れて引き出さないと、自分から、そういう事したいとか。
 欲でムラついて、したくてたまんない、とか。


「あ、ここ窓から海が見えそう。ちょっと見てくるね。ベランダあるのかな」

 ウキウキ言いながら、バスルームを出て、窓の方に急いでいってしまった。



 ――――……うん、ねえかな、あれは。


 ここがあんまりにラブホっぽくないからか、ラブホである事すら、忘れてそう。もうちょっとギラついてる部屋にすればよかったか?なんて思いながらも。



「玲央、すごい、海と月が綺麗だから、来て来て」


 カーテンを大きく開けて、楽しそうに振り返ってくる優月に。
 堪えきれなくて、クスクス笑ってしまう。



 こんな所で、楽しそうな無邪気な奴を見て、

 なんか和むし可愛いしと、思ってる自分も。




 なんか笑える。





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