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◇「周知」

「和むとか」*玲央

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 ほんと和む……。

 優月に会うまで、和むとか、人に求めた事も無かったので、
 それについて考えだすと、正直、意味が分からない。でも。

 頬に触れると、少し笑んで、オレを見上げる。
 
 そうされると、ふわ、と心が和らぐ。
 この感じを、離したくないと、勝手に思うんだから、もう意味なんか考えても、どうしようもないというか。


「……玲央」

 電話がかかってくる前の形で、またぎゅ、と抱き付いてきた。


「――――……優月?」

 ……自分からくっついてくるのは珍しいかも。
 そんな風に思うと同時に、愛しくていっぱいになる気がする。
 

 ――――……すげー可愛いんだけど。
 なんでこれ、こんなに可愛いんだ。
 

 腕の中の優月をすっぽり抱き締めて、髪の毛にすり、と頬を寄せてると。


「……いく、ホテル」
「――――……」


 なんか、今オレ。……ものすごく可愛い、無邪気な物を、ひたすら無心に可愛がってる気分だったからか。一瞬、ホテルに「?」しか浮かばず。

 答えずにいたら、すり、とすり寄られた。 

「……玲央とくっつきたい」
「――――……」

 さっき、行ってみたいと言った優月には、探検みたいな興味しか無かったから、連れて行くのもどうかなと少し思ったのだけれど。

 くっつきたい、とか言われると。
 一気に、気分が煽られる。


「――――……」
「――――……」


「……? 玲央?」

 オレが何も答えないものだから、きょとん、とした表情で、オレを見上げるのも。
 絶対的に、良くない。


 なんか、ほんと、すげー可愛いし。
 ――――……マジでほんとに、襲いたいし。

 と、いうような、体の反応してしまいそう。何とか平静を保つけど。
 ――――……ヤバいな、優月。


 無邪気すぎる感じで煽ってくるって。
 
 ……違うか。
 何でオレは、この感じに、煽られるんだっつー、話か。

 
「あ、でも――――……これから行ったら帰るの遅くなっちゃうね」
「……明日何限から?」
「明日は2限から」

「じゃあ、泊まってって、朝早く帰ろ」
「あ、そんな技が……」
「技って」

 ふ、と笑ってしまう。


「玲央はいっぱい、行った事あるの?」
「――――……」


 普通こういうのって、嫉妬からかなーと思うんだけど。
 ……どーいう意味で聞いてんだろ。


「ん?」
 と聞いてみると。

「詳しいの?」

 という質問が続く。


 ――――……ああ、やっぱ、そっちの意味か。
 何となく、優月が言う事が少しわかってきたような。

 何だか可笑しくて、クスクス笑う。


「――――……それさ、優月」
「ん?」

「詳しいって言ったら」
「うん」

「……嫌じゃねえの?」
「――――……」

 瞬間首を傾げて、すぐ意味が分かったみたいで、あ、と口を開ける。


「――――……嫌……かも?」
「普通は、かもじゃねえんだけどな」

 抱き締めて、優月の後頭部、わしゃわしゃと、撫でてしまう。


「……行った事はある、て事にしとく」
「――――……うん」


 優月は、頷いて、それから、ふ、と笑ってオレを見た。


「オレと会う前の玲央だし――――……別に、良いよ」
「良いの?」

「……てか、嬉しくは無いよ? でもさ、過去の玲央、全部込みで、今の玲央だし……それに、セフレでもいいよって、言っちゃう位、だからね、オレ」

「――――……」


「……それ位、玲央と居たかったの、オレだから」


 何だかなあ。ほんと。


「……優月?」

 ちゅ、とキスする。


「――――……お前と居たいの、オレの方がずっと強いと思うけど」



 愛しすぎて。そう言ったら。
 また嬉しそうな笑顔で、オレを見る。
 


 
 駄目だ。ほんと可愛い。




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