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◇「周知」

「カミングアウト?」*玲央

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「優月さ、そういえば、昼にオレと別れた後どうだった?」
「どうだったって??」

「友達に、バレなかった?」
「あー……うん……? バレては、ないと思う」

 なら良かった、かな。とりあえずは。

「でもね。――――……あの、ほら、クロの所に行く理由が……優月が好きだからって、玲央、言ったでしょ」
「ん。言った」

「……あれについて、色々言ってたよ」
「何て?」

 聞くと、優月は、んー……と、少し考えてから。


「どう反応すればいいの? とか。玲央が迫力ありすぎる、とか」

 言いながら優月は、とても楽しそうにクスクス笑ってる。


「迫力あった? あん時」

 少し不思議で聞くと。


「意味聞いてないけど、立ってるだけでめちゃくちゃカッコイイからだと思うんだけど……?」

 優月って、ほんと、こういう事だけは、あんま照れずにいつも言うよな。
 何でだ? あれか、造形として、ただ淡々と言ってるみたいな感じか?

 絵のモデルにでも、言ってるつもりかな……。


「玲央との接点を聞かれた」
「ああ……まあ。無さそうだよな、オレとお前に接点」

「……うん、なんかそう思うみたいで…… 分かるけど」

 優月もクスクス笑いながら。

「猫の所で偶然会って、話して、って言ったらさ」
「うん」

「そんなんで、よく仲良くなったな?って言われたよ」
「キスされたーとか言わなかったのか?」

 言う訳ないと思いながらそう言うと。


「い、いわないよ……っ」

 ――――……信号青だから、優月のほうは見えないけど、絶対今、恥ずかしがってる。そう、こっちは恥ずかしがるんだよな。


 はは。かわい。


「あ、でもね、玲央」
「ん」


「――――……今度クラス会、行ったら」
「ん」

「……話して来ようと思って」
「何を?」


 少し沈黙。
 その後。

「玲央の事が好きな事とか、付き合ってる事、言っちゃおうかなって」
「――――……」

「クラス会、いつも、座敷とかで締め切って騒いでるし、いっそ、騒がれてもいい場所で、言っちゃおうかなって思ってるんだけど、良い?」

「――――……それって、バレて、とかじゃなくて、自分から言うって事?」
「うん。自分から、言っちゃおうかなって」
「――――……」

 言うのは全然、オレは良いし。
 もちろん、隠さなくていいって思ってるし、言っても良いよって優月にも話してるし。

 でも優月から打ち明ける、か。もしかしてそうなのかとか、そんな感じでバレてしまうならしょうがねえと思うけど。


「言えるのか?」

 バレそうにもなってないのに、わざわざ自分からカミングアウト。
 なんとなく、それは言えるのか? と思って、聞くと。


「言えるよ? めちゃくちゃ、照れちゃいそうだけど」

 とか言いながら、クスクス笑ってる。


 ――――……少し、心配。

 優月が、この感じで、照れながら、オレと付き合ってると自分から告白した時の、こいつの周りって。どんな反応、するんだろうか。


 優月に嫌な事言う奴、そんなに居そうな気はしないんだけど。
 内容が内容だしな。


「優月」
「ん」

「もし気持ち悪いとか、言われたら。どーする?」
「――――……男同士なのが?」

「そう。言う奴も居るかも」
「――――……別にどうもしないかな」

「……傷つかないか?」

 そう言うと、優月はオレを見て、ふふ、と笑った。


「大丈夫」
「――――……ほんとに?」


「なんかね、皆、オレと玲央が居るのがすごく不思議みたいで。何で仲いいの?とかずっと聞かれそうなんだよね……そのたびに、なんか誤魔化してるのも嫌だから話したい」
「――――……」


「……こういうの分からない人は、気持ち悪いって思うかも。それを思うのは自由だからさ。別に気持ち悪いって言われても……大丈夫」

「――――……」


「――――……だって、好きだから、そうなったんだもん。玲央が、オレと居てくれるなら、そんなのは気にならない、かな」

「――――……」


「玲央とオレが仲良くしてたら、いつか分かってくれるかもしれないし。分かってくれなくても、それはそれでしょうがないって思ってるし……大丈夫だよ?」

 最後、にこ、と笑って、オレを見つめてくる。
 しばらく、黙って聞いていたけど。


 なんかこういう所は。


 ――――……オレより、強いのかも。



 強すぎるんじゃなくて――――……。


 柔らかくて、強い。




 なんかこーいうとこも、すげえ好きかも。
 
 と、改めて思ってしまう。






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