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◇「周知」

「不思議」*優月

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「じゃあ、連絡する。 もう行くから」

「ああ。車、気をつけろよ」

 希生さんが玲央にそう言ってる。
 その隣で久先生がオレを見て。

「優月も気を付けてね。また来週」
「はい」

 先生と見つめ合うと、ふふ、と笑まれた。

 先生と希生さんに挨拶をして。
 オレと玲央は、玲央の車に乗り込んだ。

 シートベルトをする横で、玲央がエンジンをかける。
 玲央が窓を開けると、2人が玲央側の窓から少しのぞき込んでくる。


「スピード出しすぎるなよ」
「当たり前。優月乗せてんだから」
「乗せてなくても出すなよ」
「分かってるって」

 希生さんに向けて苦笑いで言って、最後に、さよなら、と久先生に軽く頭を下げてから、オレに視線を向けた。

「出すよ?」
「ん」

 玲央は前を見てるので、オレが最後に2人と別れた。
 駐車場を出て走り出すと、玲央が窓を閉める。



「――――……」

 少し無言の玲央。

 何だろ。黙っちゃった。
 ――――……って。
 
 やっぱり、めちゃくちゃ、カッコいいなあ。運転してる姿。
 長い指が、ハンドルを持つの、綺麗。

 絵に描きたい……。

 でも初めて乗せてもらってるのに、いきなり絵を描き始めたら困るよね、と思うので、さすがに言わないけど。

 なんて色々思いながら玲央を見ていたら。


「すっげー。何、今の空間……」


 玲央がクックッと笑い出して。口元を、右手で隠してる。
 ちょうど信号が赤で。

 ハンドルに少しもたれて。ちら、とオレに視線を向けてくる。


「優月の教室来たらじいちゃんが突然現れて――――…… 優月のこと知ってるし。……蒼さんのことも知ってるとか……すげー混乱……」

「混乱……してた? 玲央」
「してたよ。 つか、するだろ」

 可笑しそうに笑う。

「あんまり、混乱してそうには見えなかったよ?」

 オレがそう言うと。玲央はふ、と笑うと。

「オレ、そういうのあんまり出ねえみたいだけど。今日はほんと驚いた」

 信号が青になって、玲央が体を起こして、発進させる。


「でもまー……オレが後回しにしたかった家族に、じいちゃんは入ってなかったから」
「――――…………あ、そう、なの?」


「そう。じいちゃんは多分……大丈夫かなって、思ってた」

「――――……」



 玲央って。
 希生さんのこと。 大好きなんだなー……って思って。

 何だか、可愛くて。
 微笑んでしまう。


「希生さんは、何で玲央の事、色々知ってるの?」
「すげー聞かれるから。――――……なんか昔から、わりとなんでも知ってるかも」
「そうなんだ。話すんだね」

「……分かるだろ? あの感じで聞かれるんだよ」

 玲央が苦笑いでそんな風に言うのを聞いていると、クスクス笑ってしまう。


「男も、とかさ、色んな人と、とか話してるって……なんか、すごい」
「家族でじいちゃんだけ。――――……つか、親よりじいちゃんのがよっぽど関わって生きてきた気がするし」
「そうなんだね」

 そっか。

「それで、仲良ししなんだね」
「――――……仲良しに見えたか?」

「うん。見えた」

 答えながら。
 ずっと、玲央を見つめてしまう。

 ――――……そういえば。
 よく考えると、オレを見つめていない横顔の玲央って。貴重。

 いっつも、まっすぐオレを見るから。
 ――――……横顔。絵になるなあ……。

 ほんとカッコいい。
 

「いつもあんな感じ。喧嘩してんのかなーみたいな」
「……希生さんと話してる玲央は、なんか可愛いよね」

「――――……可愛くなくて良いっつの」

 少し黙った後。
 嫌そうにそんな風に言うけど。


 なんか、楽しそうで。


「――――……」

 クスクス笑い出した玲央に、ん?と首を傾げると。


「きおさん、とか。優月が呼んでるのが不思議すぎて」


 うん。確かに。
 ……希生さんが、玲央のおじいちゃん、なんて。


 ほんと。
 不思議すぎ。


 人の縁って――――……。 
 ぐるぐる回って。色んな所で繋がるんだなあ……。




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