325 / 822
◇「周知」
「バレそう」*優月
しおりを挟む「玲央はこの写真が欲しかったのか?」
空の写真を見つめながら、希生さんがそう言うと。
「別に。それじゃなくても……いつか、良いの買うから良い」
「何か知らないが、蒼に対抗するってきつくないか?」
「……うるせーな」
……あ。玲央。なんか拗ねた。
――――……ちょっと可愛い。
「……優月、もうそろそろ行く?」
オレを振り返って、そんな風に言ってくる。
密かに玲央の事が愛しくなりまくって、ドキドキしていると。
その横で、希生さんはふ、と息を付いて。
「じゃあお前が、これが欲しいってなったら――――……譲ってもいいぞ」
「――――……」
希生さんの言葉に、玲央はちょっと驚いたみたいに希生さんを振り返って。
「……いーよ、気に入ったから買ったんだろ。オレ、それが絶対欲しいって訳じゃなかったし。飾れるようになった時に一番好きな奴、買うし……」
と玲央。
「それならいいが。まあ、声だけは掛けろってことだな」
「――――……分かったけど。覚えてたら」
そんなやりとりを黙って聞いていたら、久先生と目が合って。
ふ、と微笑み合ってしまう。
なんか……素直じゃないなー。この2人。
――――……お互いに、だと、そうなっちゃうのかなあ。
ありがとって、玲央、言えばいいのに。
そんな風に思いながら、玲央を見て、くす、と笑ってしまうと。
玲央はオレを見て。
ちょっと、膨れた。
あ、やっぱり可愛い。
――――……希生さんには、こんな感じになっちゃうのかー。
「……つか、そーいや、じーちゃん、なんで蒼さんの事、呼び捨て? 仲いい?」
玲央がそう聞くと、久先生が頷いた。
「蒼が産まれた頃から何度も会ってるし。一緒に旅行した事も何回かあるよね」
久先生の言葉に、希生さんが笑って頷く。
「子供の蒼くんとですか?」
オレが聞くと、ん、と久先生。
「高校生とかかな。うちの奥さんが亡くなって、しばらくしてから」
――――……あ、そうだ。
先生の奥さん、蒼くんのお母さんは、蒼くんが中学の頃に病気で亡くなったって。だから、オレは、会えてない。
オレが会った時の蒼くんはもう元気だったし。
――――……その事を知ったのも、ずいぶん後だったけど。
「まあしばらく会ってなかったから、個展で久しぶりに会ったけど」
そう言った後、希生さんは、ふと玲央を見上げた。
「玲央はどこで蒼と知り会ったんだ?」
「あぁ。こないだ、優月がオレのライブの二次会――――……」
「あ」
咄嗟に声が出てしまった。
皆がすぐに、ん?とオレを振り返る。
だって、その話してると、希生さんにも、きっと分かっちゃう……。
さっきそれで久先生にバレたし。
「どした? 優月」
希生さんの近くに居た玲央が、ふ、と笑みながらこっちに来る。
「あ、の……」
「ん?」
優しい瞳を見つめ返しながら、何て言えば、と困っていると。
「もうこんな時間だね」
と、久先生が言った。
多分。
……いや、絶対。助けてくれたに違いない。
「そろそろ飲みに行こうよ、希生」
「ああ。……そうだな。そうするか」
希生さんもそう言いながら、オレと玲央を見て。
「これから、どこか行くのか?」
「ああ。オレらは――――……とりあえず、ドライブ」
「ドライブ?」
「そう。な?」
優しく微笑んでくれる玲央に、オレはうんうん、と頷いた。
もう。
希生さんには、どうしても意地張るみたいなのに。
オレに向ける玲央の顔は。
……希生さんの前に居ても、めちゃくちゃ優しい。
それは、嬉しいんだけど。
……バレちゃう気がして。
――――……玲央、今日言ってたもんね、玲央の家族にバレるのは、もうしばらく後が良いって。
そうだよ、もう、今日聞いたばっかりなのに。
「あ、オレ、カーテン閉めますね」
見つめあってると変かなと思って、オレは、部屋のカーテンを閉めに歩き出した。
近くに居ると、玲央と、オレの顔でバレそう。
(2021/1/7)
番外編は、この章の一個上にまとめて置きました(*'ω'*)
209
お気に入りに追加
5,157
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話
かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。
「やっと見つけた。」
サクッと読める王道物語です。
(今のところBL未満)
よければぜひ!
【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる