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◇「恋人」
「ダメだこれ」*優月
しおりを挟む3限と4限は2時間連続で同じ語学の授業。
クラスで別れるので、全員知ってる。
少しだけ遅れてしまったので、こっそり中に入って、端に腰かけた。
さっきまで食堂で一緒だった友達も何人かいる。
近くに居たら絶対さっきの、聞かれると思うんだけど、もう授業始まってて、ほんと良かった。
しばらく授業に集中していたんだけれど。
ふ、と、気づく。
なんか、唇、甘い。
チョコの味――――……。
さっきの……。
思った瞬間。
さっき、玲央としていたキスが、一気に脳裏によみがえってしまった。
脳裏、どころじゃなくて。
……なんか、唇に、感覚までよみがえるような感覚。
「……っ」
なんか、ぞく、と震えが走る。
う、わぁ……。ちょっと、待って……。
机の上の教科書を見るふりをしつつ、肘をついて、思い切り頬を隠した。
顔、あっつい……。
何で。玲央は。
あんななのかなー……。
恥ずかしすぎる………。
キスしながらチョコ食べるなんて。
もうオレ、チョコ食べるたんびに玲央のキスを、思い出してしまいそう。
玲央のキスって。
どーして、あんなに、あんなに…………やらしい……?
…………かああああああ。
やらしい、とか、頭の中で言ったら、もう余計にめちゃくちゃ恥ずかしくなってしまって、もはや耳まで熱すぎて、頬に触れてた手で、耳まで触れる。
耳も顔も、めちゃくちゃ熱いし。
「じゃあ、このページを読んで貰いましょう」
そんな声に、ものすごく、焦る。
――――……先生、絶対今は当てないで―ー。
心の中で叫んでると、別の人が当てられて。心底ほっとする。
はー。よかった……。
こんな顔で、立ち上がりたくない。
教科書持つから、顔隠せないし。
――――……早く熱いの、引いて……。
うーんうーん。
もう……。
もう。玲央ってば。
もう。もう。……ほんとに……。
……もうしか、出てこない……。
――――……はー。
大好きだけど……。
オレ、やばいなー。もう。
――――……いくら、あんまり見えないとこっていったって。
学校で、あんなにキスされて。
授業中に、そのキス、思い出して、それしか考えられなくなるとか。
すごくヤバい気がする……。
……するん、だけど。
優しい触れ方と、めちゃくちゃ、熱いキスと。
――――……玲央の、瞳とか。笑った顔、が。
なんか、囁かれる、言葉とかも。
思い出すだけで、胸が、熱くなる。
もう、好きでも、しょうがないよね……。
あれを向けられて、玲央を、拒否できる人なんて、居ないよね……。
顔、熱っつ……。
落ち着いて、オレ。
玲央、ここに居ないんだから、こんなに真っ赤になんなくても良いよね……。うう。
もう。
……オレほんと、先週から、授業がヤバい……。
やっぱり、ちょっと、学校では、控えてもらおう。
これ、むりだ。オレ……。
キャパを、めちゃくちゃオーバーしてる。
なんか、熱が引く事、考えないと。
最近これ、よくしてる気がする。
大体無駄に終わるんだけど…… でも今は、玲央が居ないから、何か思い出せれば熱も引くかも……。
えっと……。
……えっと、今日は……4限も英語で……。
で、絵を描きに行って。久先生と会って。今日は蒼くん 個展が最終日だから来れなくて……。その後、玲央が迎えに来てくれて……。
ドライブ連れて行ってくれるって……楽しみすぎるなあ。
どこ行くんだろう。
ていうか、ただ帰り道だけでも十分なんだけど、玲央のあの言い方だと、きっとどこか、違うとこも走ってくれそうな気がするし、ああ、たのし……。
そこではっと気づく。
――――……熱は引いてきたけど。
考えてるのは、結局、玲央の事ばかり。
だめだ、これ。オレ。
はあああぁ、と小さく、長く、ため息を付いた……。
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